乾いていて、少しめくれた皮のひっかかりがあり、温かい唇だった。
一瞬だけだがコルヴォの頬の耳近くに触れたその感触は、彼の中にぶら下がりなにかを形成しようとしていた。1匹のアシナガ蜂が軒先にゆっくりと巣を作っていくようにだ。
今朝、彼らが仕事で街の屋根を飛んでいた時の事だった。コルヴォの能力であるブリンクはダウドの飛べる距離よりも少し短い。ちょうど彼らが話し合っていた仕事の内容に気を取られ、その事を忘れていたコルヴォはアパートの柵から落ちかけた。彼は能力で屋上のフェンスの内側に降り立ったダウドを追いかけたが、コルヴォのつま先はフェンスの錆びた金属の縁をわずかにかする程度だったのだ。
咄嗟にテザリングを使いダウドが引き上げてくれたおかげでコルヴォの体が4階から地面に叩きつけられる事は避けられたが、魔力のロープで引かれ飛び上がるように勢いのついた体はダウドの方へ倒れ込んだ。
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