或る科学者の苦悩 殺し合いという彼にとっての『実験』が無い休日。コースティックはシップ内のラボで新薬の研究をしていた。ゲーム参加時のコスチュームではなく、ガスマスクも外し私服に白衣を着た姿は狂気を和らげ、彼を知らぬ者が見れば熱心な科学者そのものだろう。
そんな彼の元を、同じレジェンドである若い男が訪ねた。ゴーグルのみ装着し、トレードマークの一つであるマスクを外した彼が無邪気に笑う。最近のコースティックの悩みの種であるオクタンが挨拶の言葉を掛けてくる前に、博士が先に口を開いた。
「お前が求めているのは『父親』の愛だ。お前は私からそれを得ようとしているに過ぎない」
オクタビオ・シルバという若者に告白されたのは数日前のことだ。私は彼の想いに対し「馬鹿らしい」と鼻で笑い拒絶した。それでもこうやって訪ねて来るのだから、納得していないのだろう。
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