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    StarlightSzk

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    【大人の魅力(創真&聖人)】秘境は夢か幻か
    2021/4/3ダンキラ版ワンドロライ【温泉/例のタオル/幻】
    実物に触れたことのないコーチが精一杯の想像を広げたら、ただのシュールな一幕になってしまった。あと私が聖人さんをどういう目で見てるかバレるやつ。すみませんでした。

    そう、その日俺は聖人に誘われて彼が兼ねてから行きたいと行っていた秘境へとやってきたんだ。ここはとても眺めがいい露天風呂があるんだよと笑う彼に髪はちゃんと束ねてからねと促すと、わかってるよと言いながら服を脱いで腰にタオルを巻いた。
     ちょっと待って、とそのまま今にも風呂へ向けて歩んでいきそうな背へと声をかける。
    「聖人。温泉なんだからタオルは巻いちゃいけないんじゃない?」
     俺がそう問いかけると、いつものようにはてという顔をされる。俺まで一緒に小首をかしげてしまった。そうじゃない。
    「これから湯舟に浸かるのに、共同浴場でタオルはマナー違反だよ」
     もしかしたら聖人はゴールドハイムの湯舟にもタオルを巻いて入っているのかもしれない。そうだとしたらいくら寮長権限と言っても止めさせなくては……なんて思いながら服を全部脱いだ俺の横で、聖人はまだタオルを取らない。
    「……聖人?」
    「ふっふっふ……創真がそこまで言うなら仕方ない」
     くるり、振り向きざまにその手がタオルの結び目へと伸びた瞬間――
    「な……っ?!」
     辺りを強い光が包み込み、そこで俺の意識は途切れた。
     
    「は……っ! あぁ……」
     見慣れた天井はまだ暗い。思わず眉根を寄せてしまいながら、まだばくばくと脈打つ心臓を鎮めたくて長く息を吐き出した。
     これは夢か幻か。いや今俺は寝ているんだから間違いようもなく夢だったんだろう。そう思っていたのに、スマホの画面をつけて浮かび上がった新着トークの内容に目が釘付けになった。
    『やあ創真、来週末に付き合ってほしい場所があるんだけど』
     トークの中に、その場所がどことは記されていない。ただ、これを見るだけで自然とまた心拍数があがるのを感じた。
     もし同じシチュエーションに遭遇した時には、もしかしたらタオルのことは言わないほうがいいのかもしれない――そんなことさえ思わせるほどに、強い光に包まれた記憶は鮮明に残っていた。
     
    ***
    「おや創真、寮の備品のタオルを持ってきてどうしたんだい?」
    「聖人、最近発光するタイプのキラートリックを開発したりはしてないよね?」
    「ふっふっふっ……どうかな」
     あれは夢か幻か。
     聖人へタオルを手渡しながらの会話に、秘境の温泉の脱衣所は一瞬、言いしれぬ緊張感に包まれた――が。
    「湯舟にタオルを持ち込むなら、やっぱりこうして頭に乗せないと。まさかダンキラをしに行くわけじゃあるまいし」
     折り畳んで、ぽんと頭に乗せられたタオル。
     それを見て暫くは、恐らく思考が止まっていた。しかしやがて感情がそこに追いつくと、自然に笑いがこみあげてくる。
    「……あはは! そうだよね!」
    「そうだよ。さあ、行こうか」
    「って、聖人はどうして今俺の腰にタオルを巻いたの?」
    「それはもちろん、風呂の前にダンキラでひと汗かくだろう?」
     そう言った聖人の顔はただただきょとんとしたもので、そろそろ何が常識なのかわからなくなってきた。
    「やっぱり踊るつもりだったの? 駄目だよ、ここは危ない。踊るにはコンディションがよくないよ」
    「そうかもしれないけれど、このコンディションかつこのウェアで出せる効果だってあるかもしれないじゃないか」
    「それは……っ」
     さあさあ。そう促されて向かう先は、やはり夢か幻なのか。それを見極めるには己の目とダンキラへの愛で語るのみと覚悟を決める。
    「わかったよ、どこまでも行こうか♡」
    「そうこなくっちゃ!」
     
     かくして俺達が向かった先では俺と同じように困惑顔をしたゴールドハイムの面々に出会うことになるのだが――それはもうすこしだけ、先の話。
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    StarlightSzk

    DONE【晶蛍】ほしあかりのワルツ
    22.3.10 9章配信2周年「#星空の下のふたり」
    「おやすみ」
    「おやすみなさい」
     瞼を閉じても、そこにもう闇はない。
     
     晶が『エトワール・キャッスル』などと呼んだ僕たちの拠点。そこには最低限の屋根しかない。故に三人が並んで寝転ぶと誰か一人はその恩恵に預かれない。雨が降った場合は別としても、星の輝きが降り注ぐなんて素敵じゃないかと晶が言ったために屋根が拡張されることはなかった。何よりあのとき僕たちは拠点を作り続けてくたくただった。だからこれ以上屋根が広がることもなかった。それだけの話だ。
     ともあれ、その屋根がない位置で寝る係が今日は僕だった。
     寝返りは最低限しか打てないが、方向を間違うと晶と鉢合わせる。晶は左にいるから右を向いて眠るんだと身体を硬くしていたものの、人間たるもの眠気とともに力が抜ける。そのうちに仰向けになり、そうしてついに左へと寝返りを打ってしまってから、ハッと気がついた。目を開ければあの主張がうるさい――見た目は整った顔が間近に広がってしまう。それはなんだか心臓が落ち着かなくなりそうで嫌だった。嫌でも数日前に言われたあれこれを思い出してしまうから。ああ、けれども彼だって寝返りを打っているかもしれない。その場合それは彼の愛しのマイ・エンジェルに向けられていることだろう。ノエルも大変なことだ。先程も「君を危険から守るために抱きしめて眠るよ!」なんて言い出して足蹴にされていたというのに。
    2023

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