「あちゃー……」
窓の向こう。
横殴りの真っ白に埋め尽くされて何も見えない世界に声が漏れた。
ごうごうと吹雪く風で察しは付いていたが、これでは今日一日外出は無理だろう。蓄えはあるが、今日の予定は見直さないといけなくなった。
「どうだ?」
「ダメダメ。外に出たら一瞬で雪だるまになっちまう」
起きたばかりで大あくびをかく伴侶に首を振る。
地域柄、こんな気候だから雪だろうが何だろうが外に出ることは勿論ある。
しかしそれは危険度が低い時の話で、よほど優先されなければ今日みたいな吹雪に出歩く方がとがめられた。例え外敵といえど里に着く前に凍死する。
よって外に出られない日は内職をするのが常であり、装備のメンテナンスや生活雑貨の作成などやることはそれなりにある。暇を持て余す相棒の世話も。
そういえば風よけの外套が一部ほつれかけていたなと考えていると、まだ眠たそうにぼんやりしていた伴侶に呼ばれた。
「どした?」
ベッドに座り寝ぐせまみれの頭を撫でる。
すると不意にベッドへ着いた手を取られ、バランスを崩して消太を押し倒すような恰好になった。
「……こーら、驚いただろ」
「まだあいつらも寝てるし……俺達も、もう少し寝てもいいんじゃないか?」
気だるそうに言いつつ不埒な手が腰回りをまさぐっている。知り尽くしたキモチイイところをわざと掠めて、往復する度に可愛がられたい奥が疼いた。
——数時間前まであんなにしておいてほんと元気だなこいつ。
「寝るって、どっち?」
朝から盛るえっちな雄猫ちゃんにはちょっとだけ意地悪を。
自身の髪で世界を区切りながらかさついた唇を指でなぞる。
出て来た舌先が指先を舐め、浮かべる意地の悪い笑みに胸が高鳴った。