俺であること きっと仕方の無いことなのだと思います。
「では、行きますね」
今日は返事がない顔を覗き込んで髪を撫でる。もうどのくらい経ったのだろうか、起きている時は普通なのだが一度深く眠ってしまうと、どんな刺激でも目を覚まさない。
現実に存在したい気持ちと、逃げなければ自分を守れないという本能がせめぎ合って今のHiMERU 本人を形作っている。いつ眠りにつくかわからないため、復帰はおろか退院も叶わず、
『困っちゃったな、迷惑をかけちゃうね』なんていつも言っている。
「今日からこのユニットに所属して、活動してもらいます、HiMERU として」
そう言われて俺は俺を消した。HiMERU なら何を考え、どう行動するかを心がけた。
こんなユニットは、いつかあの人が復帰した時に華々しい居場所を確保するための踏み台に過ぎないのですから。
なのに、やることといったら他のユニットやそのファンを傷つけることばかりで、
「HiMERUの流儀に反するのです」
「へぇ、キラキラした場所で客に媚を売るのがお前の流儀なのかぁ」
「違います、こんなすべてに害をなすような真似、人々を楽しませて、癒すのがアイドルなのではないのですか」
「それは大した理想だな」
人の話をはなで笑って、暴れまわる天城にストレスは募るばかりで、でも、その怨嗟を一身に受け消えようとしている。
「立派なアイドルになってくれよ、願わくば、おまえは『おまえ』として」
そんな言葉を残して消えようとするリーダーなんて、
「そんなの、格好悪いのです」
確かに俺を認めてくれたのは嬉しかった、と思うのです。突然の事だったので感情の理解が追い付きませんでした。
ですが、たしかに俺の存在を知っているメンバーと活動するのは俺自身にとってはとても居心地がいい。
「天城、またあんな変なアドリブ入れて。俺だから拾えたのですよ」
「結果盛り上がったからいいじゃねぇか」
「まったく手がかかるのです」
いつの間にか、俺でいる時間が長くなっている気もしなくはない、もし『彼』が復帰するときには師匠になるのではないかという不安もある。
捜していた、ささくれだった気持ちをなだめてくれる存在はきっとこの人なのでしょうね。
暖かで優しい感情を貴方が教えてくれたのですよ、きっと。