Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    nbsk_pk

    @nbsk_pk

    @nbsk_pk

    文字を書きます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 87

    nbsk_pk

    ☆quiet follow

    越乃さんの素敵最高イラストを見てくれ

     その大男の拳が振りかぶられた時でさえ、私の頭の中にはただ冷たい未来予測しか動いてはいなかったのだ。

     エンカクを護衛にと指名すると、ケルシーは目に見えてうんざりとした表情を作る。もう何度目かわからない結論のわかり切ったやりとりすべてにNOを返し、早々にその他の手はずを整えていく。彼女の心配ももっともだろう、どちらかといえば心配よりも面倒事を引き起こすなという警告のほうが近いのかもしれないけれど。私がエンカクを連れて行くのは非常に限られた会合だけであり、つまりは何もかも更地にするようなトラブルが確定している場合である。

     よって、向こうの連れてきた黒服のサヴラの拳がエンカクの顔面にめり込んだ時、私はまばたきひとつせずに会談相手の顔を見ていた。相手の表情は喜悦に満ちていた。彼は人体が損壊する音を聞くのが三度の飯より大好物という異常者で、頑丈なサルカズを対象とできることに非常にご満悦だった。背後に控えた六名全員がそのために雇われているプロフェッショナルである。嫌気がさすような酷い職場だ。無言で身動ぎひとつしないエンカクの顔面からぽたりと赤いしずくが落ちる。拭われもしないそれはシャツの襟もとから順番に赤のまだら模様を描き、彼の分厚い胸板がひとつぶひとつぶを丁寧に受け止めた。
    「それでは、こちらの条件を受け入れる気はないと」
    「見ての通り。まあ、その結論を無事に持ち帰れるおつもりで? こっちも甘く見られたモンだなァ!?」
     お、自分が優位に立ったと判断した瞬間に本性をあらわにするなんて映画でも最近はロクに見ないような陳腐な展開だぞ。ぞろぞろと手に刃物やアーツロッドを持ってこちらを取り囲もうとする彼らに目を向けるまでもなく、私はかたわらの今の今まで動かずにいてくれた彼にひとつ頷きをかえす。
    「頼む」
     ようやく出た許可に、彼は無言で上着のボタンを外した。窮屈な上着から腕を抜き、シャツの袖口の私の見立てたカフスを無造作に床に落とす。それでもなお無手にすぎないサルカズを、取り囲んだ彼らは嘲笑いながら見ていた。耳元に隠した通信機からは別動隊からの報告が順次上がってくる。さて目の前の男がそれを知るのは果たして何分先か、それとも永久に来ないのか。口元にまで垂れた鼻血をぬぐったエンカクの舌先がゆっくりと好戦的に動き、そして部屋の中を一陣の炎が吹き荒れた。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍☺💯💯💯💯💯💯💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nbsk_pk

    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

    recommended works

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
    1015