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    岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…

    #岳博

    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
     気のせくままにいつもよりも短い時間でたどり着いたドクターの私室に、手慣れた動作でキーを打ち込む。そして出来るだけ音をたてぬようそっと開いた扉の奥に、かの人物はすやすやと眠っていたのであった。
     机の上に乱雑に置かれた顔覆いと、椅子に掛けられたコートと白衣。共寝の際にはしわになるからハンガーを使わせてくれとこちらの身体を押しのけてまで懇願してくるというのに、やはりこの様子を見るにあれはただの照れ隠しであったのだろう。その微笑ましさに頬が緩んでしまいそうになったが、声を立てては起こしてしまうかもしれないと重岳は意識してきりりと表情を引き締めた。それでも尻尾が少しばかり揺れてしまったのはまだまだ修行が足りぬ証である。
     そっと近づき覗き込んだ寝顔は安らかなものであった。その面に消しきれぬ疲労は張り付いていたが、それでもなおようやく肩の荷を下ろせた安堵であろう、緩んだ眉間を眺めているだけで重岳の疲労すらも抜けていく心地がしたのであるが、しかしこの太平の光景の中にひとつ無視できぬものがある。ドクターの腕の中にある重岳を模したもちもちロングぬいぐるみのことである。


     このぬいぐるみが何であるのかを正確に語るのは難しいため、かいつまんで説明するが、とあるアーツの引き起こした事故によって付近にいたオペレーターたちによく似た小さな謎の生き物たちが発生してしまうという事件が少し前にあったのだ。あるものは兎のような、またあるものは猫のような、そして偶然にも巻き込まれた重岳のそっくりな生き物というのが、このドクターの腕の中にすっぽりと納まっている丸い龍のような生き物だったのである。妹たちの近くにもまたもう少しだけ尾の短い丸い生き物が跳ねており、それはもうとても愛らしかったのだが、突然現れたその謎の生物たちはロドス艦内を縦横無尽に逃げ回ったためロドスじゅうが大騒ぎになってしまったのだ。手の空いた足の速いオペレーターたち(例えば重岳のような!)とドクターの見事な指揮によって騒ぎは一両日のうちに収まったのであるが、その数日後にドクターがおそるおそる言い出した内容に、重岳は目を見開くこととなった。それがこの、ドクターの腕に抱かれている大きなぬいぐるみなのである。
     いわく、ドクターは騒ぎの中で見た重岳に似た不思議な生き物にたいそう感銘を受けたらしい。そして手芸を得意とする者たちを集め、何とか再現できないかと写真を渡して頼み込んだとのことだった。例の謎の生き物自体は翌日にはきれいさっぱり消え去ってしまっていたのだが、ただでさえ多忙を極める恋人はそれらと触れ合う暇すらなかったらしく、悔しい思いを抱いたのだと恥ずかしげに告白してくれた。正直なところを言えば、抱いて寝るのであれば重岳の尾でいいのでは、こちらは柔らかさこそ劣るものの手触りも滑らかでドクターのことを最適な力加減で包み込むことができるので、と思わなくもなかった。なかったのだがそれを告げに来たドクターのはにかんだ様子があまりにも愛らしかったので、重岳はその切々と訴えられた内容について快諾してしまうほかなかったのである。


     だがしかし、と重岳は考える。不在の間は仕方がない。刺繍で描かれたきりりとしたまなざしは、なるほどつがいの安眠を預けるに値するだけの決意に満ちている。互いに少なくはない荷を抱える身、常にそばで眠ることができないのはこの関係にひとつ名前が追加された時から承知の上ではあった。だが今現在、ここにはドクターと重岳の両人が揃っている。そして少なくとも今すぐにこの場を離れる必要は特段存在しない。ならば、その細腕が、体温の低い肌が抱きしめ顔をうずめるべきは手芸部渾身の布と綿の傑作ではなく、重岳その人であるべきではないだろうか?
     もしもドクターが起きていたのならば、君も任務続きで疲れているんだね、こちらでスケジュールを見直しておこうとほんのり憐みのまなざしで茶の用意などをし始めたのかもしれない。だが幸運なことに――または不幸なことに――ドクターはいまだすやすやと心地よい眠りの国へと旅立ったままであったので、恋に浮かれる長命種を止められる者は誰もいなかったのである。
     起こさぬように、慎重に。そっと持ち上げた腕の軽さにヒヤリとする心地を押し殺しながら、抱かれていたぬいぐるみの位置を静かにずらす。しかしやはり眠っていてなお違和感には気づいたのだろう、何かを探してさまよい始めた指先にしゅるりと差し出すのは、もちろん重岳自身の立派な尻尾である。先端の剣でか細い痩躯に傷などつけぬよう、いつも通りに細心の注意を払ってするするとドクターの体に巻き付ければ、うろうろとさまよっていた白い指先も黒い鱗にたどりつき、やがて安堵を得たかのようにきゅっと握りしめてくれた。ああ、その弱々しくも確かな感触よ! ようやく、おのれの番のそばに戻ってきたのだという実感を得られた重岳は、ほぅっと深くため息をついた。久方ぶりにゆるゆると全身の力が抜ける実感があり、なるほど自身もずいぶん疲れていたのだと重岳はようやく自分の状態を自覚した。そして見下ろしたドクターの安らいだ寝顔を見て、ゆるりと満足そうに微笑んだのであった。




     その後、目覚めたドクターが『ぬいぐるみが本物になった!』とびっくりして二度寝しかけたのはまた別の話であるし、その夢だと勘違いしたドクターにどうやって現実であるかを知らしめたのかの真相については、フェイスガードの下に赤くなったままの顔を隠すドクターと素知らぬ顔をしてその供をする重岳しか知らないまた別のお話なのである。
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    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
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    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
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     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
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    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
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