傷まで愛して・2 正式に審神者としての就任が認められた翌朝、食材保管庫と冷蔵庫には様々な食材が届いていた。
初期の本丸の運営に困らないよう、何をどうすればいいのかは教えられている。炊事、洗濯、掃除、馬の世話や庭の管理、畑作りの知識まで。ある程度刀剣男士が増えてくれば仕事の割り振りをすることになるけれど、最初は自ら働かなくてはならない。
審神者が刀剣男士と共に戦うようになった初期の頃の本丸は電力がなかったらしく、暖房も冷房もない中、井戸で水を汲み薪で火を起こして羽釜で調理するという二十三世紀生まれの審神者には過酷すぎる環境に根を上げた者も多かったようで、冷蔵庫もIHも空調も入って随分と環境が改善されたのだとは聞いていた。
朝の身支度を済ませて、ふたり分の朝食を準備する。
一部の例外はあれど、刀剣男士は和食を好むものが多いらしいので、ご飯と味噌汁、焼き魚と卵焼き、青菜のおひたしというメニューにした。
誰かに食べさせるために作るのは初めてだから、どきどきする。口に合えば良いのだけど。
「……おはよう、いい匂いだね……」
「ひえっ」
他のおかずを膳にならべ終えて炊きたてのご飯をよそっていたら、後ろから包み込むように抱き込まれ、いい声で耳元に囁かれて変な声を上げてしまった。
「おっ、おはよう……、あの、距離が……」
甘えるように肩に擦り寄られる。それだけじゃなく、すんすんと嗅がれてもいるような……
「ここが、僕たちの本丸だ、って正式に認められて嬉しいよ……君との、新居だね」
言われていることに間違いはないけれど、そう言われると大分語弊がある気がする。
「あっ、怪我は大丈夫? ちゃんと直った?」
動揺して肝心なことを聞き忘れていた。
「うん、君の霊力が馴染んで……前よりも調子がいいくらいだよ。ありがとう」
肩越しに頬にちゅっとキスをされる。
「ぴゃあ!」