初めての「どうして逃げるんだ?」
「そりゃあすごい勢いで突っ込んでくる奴を見たら逃げるだろ!」
「大人しく捕まるくらい可愛げがあってもいいだろう!」
森を駆け抜け、木を滑り、体力の続く限り逃げる。ガイアは数十分前の自分に罵倒の言葉を贈りながら必死に足を動かす。
事の発端はエンジェルズシェアで出すドリンクの材料を取りに奔狼領に出かけ、必要分取り終えて一息ついた所でガイアが提案したことだった。
「なあ、追いかけっこしようぜ」
機動力に絶対的自信があるが故なのか、はたまたじゃれたいだけなのか分からないが、ディルックは断るつもりで口を開いたはずだった。
「いや、僕は」
「俺を捕まえられたら……そうだな…煮るなり焼くなり好きにしていいぜ」
1014