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    pesenka_pero

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    こちらの「密室( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19509352 )」その後のノスクラ進捗です。私はとにかくこいつらをイチャイチャさせたい。

    密室その後 目が覚めると、私はそろそろ見慣れてしまったヴリンスホテルの一室のベッドに仰向けで横たわっていた。他の地のグループホテルのことは知らないが、ここ新横浜は吸血鬼が多いため、吸血鬼用に完全遮光仕様の部屋も数室用意されている。灯りの消えた室内は暗いが、今が夜なのか昼なのかよくわからない。

     私の上腕近くにはいつものように重みがあった。今更確認するまでもない。ノースディンが私の腕を枕にして眠っている。ああ、またやってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいになって、私は彼に向き直るとその体を抱きしめた。普段よりもひんやりしていた。私のせいだ。


     私はクラージィ。人間だった頃は悪魔祓いとして教会に仕え、黒い杭のクラージィと呼ばれていたが、二百年の時を経てこの新横浜に吸血鬼として目覚め、私を吸血鬼化した氷笑卿ノースディンと再会し、「昏き夢」という新たな二つ名を与えられた。ある日突然発動した私の能力に由来するのだが、その時の私は意識がもうろうとしていたため、何をしでかしたのか正確には思い出せない。

     場所はやはりこのヴリンスホテルだった。二百年も眠り続けていたせいかいつも眠くて、時間も場所も問わずいきなり眠ってしまうこともある私が、深夜の公園でノースディンと話をしている最中にまた意識を失ったから、日が昇る前に新横浜ヴリンスホテルに避難させてくれたのだ。

     そこで私は私の至らなさゆえにノースディンの不興を買ってしまい、それでも彼は声を荒げるでもなく淡々とチェックアウトの方法について説明し、夜が明けたあとも私が館内で食事できるよう一万円札を二枚置いて立ち去ろうとした。彼をこのまま見送ろうものならもう二度と会えなくなる気がして、いても立ってもいられなくて、なりふりかまわず彼の手にすがりついて引き留めた。その先の記憶がない。気が付くと、二台あるベッドのひとつの中で眠るノースディンの腕に抱かれていた。驚きすぎて声も出なかった。一体何が起こったんだ?

     あとからノースディンに聞いた話によると、彼とふたりでいた時に私の能力がいきなり発現し、彼を強引に眠らせそうになったそうだ。個性は個性として尊重したいものの、吸血行為には全く関係ないのでは?と正直首を傾げずにいられない風変わりな能力の吸血鬼ばかりの新横浜だ。この町で吸血鬼として生まれ変わった私にもいずれ何かが発現するのかも知れないと、よく言えば興味津々、悪く言えば戦々恐々としていたのだが、私の能力はただの眠りなのか。内心ではほっとしてしまった私がいた。眠らせるだけなら他者を害するわけでもない。平和なものでよかった。

     能力発現後の記憶がないのは、対象相手を眠らせると同時に自分まで眠くなってしまうからだろう、とノースディンが説明した。共倒れして終わりにできるのならそれ以上争うこともないのでますます平和だ。私はもう、吸血鬼も人も、誰のことも傷つけたくない。

     しかし、相手を眠らせて自分も眠るだけの能力とはいえ攻撃は攻撃だ。無意識ではあったが何故私はノースディンを攻撃してしまったのだ? 私は床に下り、新横浜に来てから知った日本の土下座で平謝りしようとした。また変なことを覚えてしまったな。ノースディンは呆れた顔で言いつつも気を悪くした素振りもなく、私の腕を取って立ち上がらせると同じベッドの上にまた座らせた。

    「まだ吸血鬼化したばかりなのに、古き血の吸血鬼の一員である私をねじ伏せそうになるとは。お前は将来有望だ。いずれ新横浜くらいひとりで制圧できるだろう。私には見る目があったのだな。」

     どうやら私はノースディンのお眼鏡にかなったらしい。眠らせるだけの能力なのにどうしてそう高く評価されるのかわからなかったし、新横浜を制圧できるともそもそもしたいともまるで思えないのだが、妙に得意げなノースディンを見ると、なんだか嬉しくなってきた。私が彼の期待に添う限り、彼は私を見限らない。

     ノースディンは冗談めかして言った。

    「シンヨコのおポンチ吸血鬼どもに当てられて、ナタデココを操る能力とかに目覚めてしまったらどうしようかとばかり。」

     嬉しそうにしているノースディンに、ナタデココとはなんだ?と訊ねると、そういえば何なんだろう? 今度調べてご馳走しようか、美味いデザートを出すカフェくらい新横浜にもあるはずだ、と返ってきた。つまり食べものらしい。楽しみだ。
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    SPUR MEこちらの「密室( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19509352 )」その後のノスクラ進捗です。私はとにかくこいつらをイチャイチャさせたい。
    密室その後 目が覚めると、私はそろそろ見慣れてしまったヴリンスホテルの一室のベッドに仰向けで横たわっていた。他の地のグループホテルのことは知らないが、ここ新横浜は吸血鬼が多いため、吸血鬼用に完全遮光仕様の部屋も数室用意されている。灯りの消えた室内は暗いが、今が夜なのか昼なのかよくわからない。

     私の上腕近くにはいつものように重みがあった。今更確認するまでもない。ノースディンが私の腕を枕にして眠っている。ああ、またやってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいになって、私は彼に向き直るとその体を抱きしめた。普段よりもひんやりしていた。私のせいだ。


     私はクラージィ。人間だった頃は悪魔祓いとして教会に仕え、黒い杭のクラージィと呼ばれていたが、二百年の時を経てこの新横浜に吸血鬼として目覚め、私を吸血鬼化した氷笑卿ノースディンと再会し、「昏き夢」という新たな二つ名を与えられた。ある日突然発動した私の能力に由来するのだが、その時の私は意識がもうろうとしていたため、何をしでかしたのか正確には思い出せない。
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