Recent Search

    pesenka_pero

    @pesenka_pero

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 26

    pesenka_pero

    SPUR MEこちらの「密室( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19509352 )」その後のノスクラ進捗です。私はとにかくこいつらをイチャイチャさせたい。
    密室その後 目が覚めると、私はそろそろ見慣れてしまったヴリンスホテルの一室のベッドに仰向けで横たわっていた。他の地のグループホテルのことは知らないが、ここ新横浜は吸血鬼が多いため、吸血鬼用に完全遮光仕様の部屋も数室用意されている。灯りの消えた室内は暗いが、今が夜なのか昼なのかよくわからない。

     私の上腕近くにはいつものように重みがあった。今更確認するまでもない。ノースディンが私の腕を枕にして眠っている。ああ、またやってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいになって、私は彼に向き直るとその体を抱きしめた。普段よりもひんやりしていた。私のせいだ。


     私はクラージィ。人間だった頃は悪魔祓いとして教会に仕え、黒い杭のクラージィと呼ばれていたが、二百年の時を経てこの新横浜に吸血鬼として目覚め、私を吸血鬼化した氷笑卿ノースディンと再会し、「昏き夢」という新たな二つ名を与えられた。ある日突然発動した私の能力に由来するのだが、その時の私は意識がもうろうとしていたため、何をしでかしたのか正確には思い出せない。
    1820

    pesenka_pero

    PROGRESS手記後のノスクラ第二話ドラちゃんパート。ドラちゃんにかいがいしくお世話されるクラさんが私の性癖だ。
    猫カフェナンパに続くはずのノスクラ二話。 クラージィさんと会ったのは一度きりだった。私がまだ年若い美少年で、教育と称してノースディンに預けられていた頃だ。私ひとりで留守番をしていた時にノースディンの屋敷を訪ねてきた。私がいない時の訪問者は追い返せ、そもそも出るな、居留守を使え、とノースディンから強く言われていたが、まさか吸血鬼の時間である夜に正面の門から入ってきた馬鹿正直な人間が、我々を粛清しに来た悪魔祓いだったとは当時のいたいけな私には見抜けなかった。ノースディンの知人だろうと思って迎え入れ、手作りのクッキーと紅茶でもてなした。

     彼は何やら複雑な表情で私のクッキーを口にして、おいしいな、と呟いた。褒めてもらえて私は嬉しかった。ノースディンとの暮らしで溜まっていた不平不満と苛立ちをぶちまけてもちゃんと聞いてくれた。ノースディンの友達にしては優しくていい人だ。私は彼に好感を抱いた。また来たら、何をお出ししようかな。シンプルなクッキーもいいけど、飾りつけにも力を入れたケーキとか、ディナー一式もいいな。私とノースディンは吸血鬼なので、食べられる固形物の量はどうしても限られる。たくさん作るからたくさん食べてほしいな。料理の腕を磨きながら、私はずっと彼を待っていた。
    2743

    pesenka_pero

    PROGRESSノス誕で一作目を加筆修正しまくってたら間が空きました。改めまして、正統派吸血鬼ものお耽美を目指したいノスクラです。現時点でひとつ前の投稿よりもけっこう加筆していますのでよかったら。
    タイトル未定 私の身に何が起こったのだろうか。二百年も前の故郷で野犬に襲われて野垂れ死んだはずだったのに、言葉すら通じない異国の地で突然目が覚めた。夜なのに明るすぎる町を心細い思いでさまよい歩いていたら、紆余曲折を経て親切な人、いや高等吸血鬼のドラルクが保護してくれた。更にいろいろあって、今は柔らかいベッドに横たえられ、口髭を蓄えた見目のよい男に覆い被され、唇を彼の唇に塞がれ、口中を舌でまさぐられている。

     こんなことは絶対にいけない。押しのけるべきなのはもちろんわかっていた。しかし体に力が入らなくて、私はどうしても抗うことができなかった。それどころか自分から舌を差し出して、彼の舌を舐め返している。唾液なので特に味はしないはずなのだが、何故か甘くて美味だと感じられて、快くてなんだかぼんやりとする。彼は押さえ込むように私の頭を抱えていた。圧迫感はあるのにそれが逆に安心できて、私もつい彼の首に腕を回してしまった。彼はいやがることもなく、私をますます強く抱きしめて深い接吻を続けた。
    5602

    pesenka_pero

    PROGRESSもういい加減にノスクラしたいのに、ドちゃんだけでなくロナくんまでクラさんをよしよしし始めてしまったお話の続き6。つ、次こそはノスパートですので!
    窓の外は星の海 ドラルクはツインで新横浜ヴリンスホテルの部屋を取っていたので、二枚あるカードキーの一枚を共有する形で交互に彼の様子を伺いに行く生活が始まった。宿泊しているクラージィ本人にもカードキーを与えられているが、外出している気配はまったくない。俺が訪ねる時はだいたい日が落ちる前だが、ドラルクが黒い布で目張りした窓の中で、彼はほぼずっと眠っている。ルーマニア語は日本からすればマイナーな言語なので、おそらくドラルクがじじい経由で取り寄せただろう語学書で日本語の勉強をしていることもある。俺が顔を出すと、眠たげな顔で笑いかけてくれる。

    「イラッシャイマセ、ロナルドサン。」

    「こんにちは、でいいですよ。」

     昼間には外出できないドラルクに託されたスープジャーのホットミルクを差し出して、彼の日本語勉強に、俺のできる限りではあるが少しだけ手伝う。正直俺よりもひらがなを綺麗に書けるようになってきたな。真面目な人なのだろう。そのうちシンヨコ案内してあげたいとは思うのだが、案内できるとこあったっけ? 横アリのコンサートとか? いや、いきなりそんなとこ連れてったら確実に卒倒するな。ジョンと一緒にわるとあんでるさんに並ぶか。この人、いや吸血鬼は、ごはんも食べられるタイプだから。現代のおいしいものをたくさん食べさせてあげたい。
    1729

    pesenka_pero

    PROGRESSシンヨコにドンブラコされたクラさんをドラちゃんがかいがいしくお世話する話その5。にっぴきパートを挟みますが、多分次こそノスクラが始まる予定です。
    窓の外は星の海「……またいねえ。」

     深夜の事務所でロナルドウォー戦記を執筆中、ついうたた寝してしまった俺は、コーヒーと夜食を頼もうとして居住スペースに顔を出したら、ドラルクはいなかったし棺も空だった。もう夜が明けるのにどこ行ってんだ。冷蔵庫を開けてみると、あとはレンジでチンするだけの作り置きの惣菜と水出しのコーヒー、冷凍庫には冷凍のごはんがしっかりと用意されていて逆に腹が立つ。それはそれとして、空腹だったし味がいいのはわかりきっているので、作り置きの料理はレンチンしておいしく食べた。

     いやここロナルド吸血鬼退治事務所ですからね? 押しかけ居候のおっさんなんざいてもいなくてもどうでもいいんですけどね? とはいえ、専用の籠ベッドではなくドラルク不在の棺の蓋に腹ばいになって、アルマジロのジョンが寂しがって泣いているのだ。ここ最近、毎晩のように見ている光景だ。俺はさておき、ジョンを置いてまでどこで何やってんだあのクソ砂。落ち込んだジョンの甲羅をおそるおそる撫でてはみるが、ジョンは顔を伏せてしまってこちらを向いてもくれない。悲しいことに、俺ではジョンを慰めきれない。
    8555

    pesenka_pero

    PROGRESSそろそろノスクラが始まりそうな、クラさんをドラちゃんがかいがいしくお世話する話その4。
    窓の外は星の海 しかし首筋がじくじくと疼き出して、目が覚めてしまう。とっさに手のひらで押さえると、怯み上がるほどに冷たく冷え切っていた。塞がってはいるようだが、傷口とおぼしきふたつの盛り上がりがある。これは、どう考えても吸血鬼の咬み痕だろう。一族の誰かがあなたを吸血鬼に転化させたのでしょう、と彼は言った。

     寒い。首が痛い。心臓が冷たい。どうしてなんだ。ついさっき彼があれほど丁重に温めて、いたわってくれたのに。あの優しくて世話好きな吸血鬼にも溶かすことができない、氷の棘が私の胸に埋まっている。

     彼の一族の誰か。それは誰だ? 私は思い出さねばならない。若く美しい女性や、愛らしい見た目で年若く汚れなき少年少女ならまだ理解できなくもないが、さほど若くもなく容姿も凡庸な成人男性の私を、何故吸血鬼化させてまで生き永らえさせようとしたのか。だが200年近くに渡る時の流れに隔てられ、加えて常にまとわりつくまどろみのせいで、どうにもはっきりとは思い出せない。もういい、これ以上何も考えずに眠りたい。何故私は目を覚まさざるを得なかったのだ。誰が私の永遠の眠りを妨げたのか。その者は、居場所を失った私を迎えてくれるのか。
    1567