Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    menimenimeniko

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 11

    menimenimeniko

    ☆quiet follow

    類司🎈︎🌟同棲設定
    食べ物の好みについて捏造してます

    アイス食べた直後の︎🌟にキスする話 愛しい恋人と暮らす家の中で「キスをしたい」と考える事は、実はあまりない。殆どの場合は考えを巡らせる間もなくキスをするからだ。キスをしたいという感情の脳波が出るや否や、僕の体は即座に動く。人体における反射という動作は、光や周りの環境、命の危険を感じた時に起こるというが、僕の場合、こと司くんにおいては例外だと思う。帰宅した僕を出迎えて笑いかけてくれる時、今日の夕飯は自信作だと誇らしげな時、ドライヤーをかけられながら心地良さげに目を閉じている時、ベッドで期待と熱を孕んだ目で見つめてくる時、快楽でその瞳に涙の膜が張る時⋯⋯これ以上は伏せるが、日常で幾度となく訪れるキスへの衝動を抑えることはあまりしていない。けれども、家の中とはいえ司くんがキスを拒む状況ではさすがに我慢せざるを得ない。食事中はその一つだ。衛生面に問題があるし、自分の口の匂いが気になるのだと言っていた。司くんだったら僕は気にならないのに。
    僕も司くんもシャワーを終え、明日はふたりとも休みで⋯⋯そんな状況だから、一秒でも多く司くんを堪能したかったのに。そんな僕の乙女心をよそに、彼はテレビのニュース番組を見ながら、ソファで僕の隣に座りポッキンアイスを食べている。横から彼のお腹に手を回して抱きついてみるも、テレビからは視線を離さず片手で頭をゆっくり撫でられている状態だ。犬か何かだと思われているのだろうか。

    「最近そのアイスよく食べてるね。」
    「こうも暑いとなぁ⋯⋯。カロリーを考えると頻繁に食べるのは控えた方がいいかもしれんがな。」

    僕たちは二人共、あまり頻繁にアイスを食べない。もともと僕は作業の片手間につまめるような間食が好きなのでそこまで食べないし、彼も彼で、アイス自体は好きなようだが、僕が食べないのにわざわざ常備しておくほどの愛好家ではないようだ。たまに新しい商品が発売された時に冷凍庫で見かける事はあったけれど。そんな僕達の家にアイスがまとめ買いされる程、今年の猛暑は凄まじかったという事だ。

    「それ何の味?」
    「りんごだ。類も食べたらどうだ?りんご味はまだあったぞ。」

    どうにかこちらに興味を向けてくれないかなぁと話しかけるが、露骨に素っ気ない対応ではないものの、司くんの興味はテレビ画面のようだ。確かに世の中で何が起こっているかは知る必要があるだろう。確かにお風呂上がりに食べるアイスは格別だろう。けれど、視線も口も両方僕以外のものに奪われているのが面白くない。どちらか片方だけでも、いや、欲を言えば両方僕が奪っていたい。デートの口実として、インターネットではなく家電量販店に出向いて一緒に選んだ55インチの4K有機ELテレビが、今だけは恨めしい。けれど、僕だってせっかくの休前日のくつろぎの時間を邪魔したい訳ではない。日頃の疲れをリフレッシュする為にも、やりたい事をやって欲しい。そのやりたい事の中に僕との時間を少し入れてくれればそれでいい。
    司くんの肩におでこを乗せたまま彼の横顔を見ると、アイスはもう10分の1程までに量が減っていた。容器を少しへこませて、中身を口の方へ寄せながら少しづつ食べている。息継ぎのため微かな水音と共に口が離れ、一瞬だけ見えた細い糸に、おもわず喉が鳴る。しばらくテレビ画面を見つめたあと、ほとんど溶けた残りのアイスを少し容器を傾けて口に流し込む。上下する喉仏には、風呂上がりの汗が少しだけ滲んでいた。「最近イチャイチャできてないし、久しぶりにゆっくり司くんに触れたいな」なんてぼんやりと漂っていた下心が、着実に形を成していく。
    ふと、司くんがこちらを向いた。手元のアイスの容器はいつの間にか空になっていた。

    「類も食べたらどうだ。この手のアイスはあまり食べてこなかったが、なかなか美味しかったぞ。」

    アイスで少しだけ濡れた唇が目の前にあって美味しそうだと思った。身体にまわしていた手を肩において顔を寄せると、すぐに濡れた感触が唇に伝わる。
    少しだけ角度を変えながら柔らかい感触を味わう。昔はキスする度にガチガチになっていた司くんも、今となっては慣れたものだ。すぐに唇を薄く開けて僕を招き入れてくれる。舌を差し込むと、甘酸っぱいりんご味がした。ヒンヤリとした舌は冷たい白玉のようで、弾力があり気持ちいい。

    「⋯⋯⋯⋯ん⋯⋯」

    ゆっくりと上の歯茎を撫でると、司くんがすこしだけ喉を鳴らして身じろぎする。手に伝わる布地の感触は、肩から下げていくにつれ直ぐに終わり、ふにゃりとした皮膚の柔らかさに変わる。鍛えられた二の腕にはしなやかな筋肉が付いており、緩く掴むとハリのある弾力を感じた。半袖の時期は、司くんの体温を直に感じられるから好きだ。
    ちゅ、と水音を立てて唇を離す。キスの名残で少し尖った司くんの唇はゆっくりと元の形に戻っていった。

    「食事中のキスはやめろと言っただろう。」

    眉がすこし寄っているけれど、じっとこちらを見つめる表情に嫌悪感は見当たらない。アイスを食べた直後なのに、その頬は熱を持つかのようにほんのりと薄桃色になっている。こっちも美味しそうだな。

    「おや、食べ終わっていたじゃないか。」
    「もう少し時間を置いてだな⋯⋯!」
    「でも、食べてすぐだったから冷たくて気持ちよかったよ。司くんはどうだった?」
    「む、確かにいつもより類の口があたたかく感じたが⋯⋯」
    「でしょう?気持ちよくなかった?」

    司くんは、目を伏せ指先を唇に当てたまましばらく何かを考えていたが、「な、なんにせよ⋯⋯食べている最中はダメだからな!」と言いながらアイスの容器を捨てにソファを立ってしまった。

    夏が終わり、随分と涼しくなった後も、我が家の冷凍庫には数本のアイスがストックされている。買ってきたアイスを冷凍庫にせっせとしまう彼の後姿を見てしまったら、今度はどんな味がするんだろうと弾む気持ちを抑えろという方が無理な話だ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator