「可愛い親子だね」
そんな言葉を悟空の耳が捕らえて、瞬時に握っていた手に力が籠った。
自分の息子達よりずっと幼く孫娘よりも年下に見える容姿の孫悟空だが、その中身は妻であるチチとふたりの子を成し、先に述べた孫もいる身である。そして宿す力も容姿から想像するものよりははるかに強く、ともすれば女性の骨をも握り砕いてしまいそうな感情の沸騰も、相手がチチであるということから半ば本能的に抑えられたのは行幸だった。
「悟空さ、どうしたべ?」
「……なんでもねぇ」
「なんでもねぇって感じのお顔じゃねぇべなぁ。拗ねちゃっただべか」
繋いだ手の位置よりもずっと高い場所に、チチの視線がある。
パオズ山の家を度々不在にはしていたけど、彼女の元に帰っていくと自分よりも下に彼女の目線があったのに慣れている分、今の状況はやはり「違う」のだと痛感させられる。
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