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    肴飯のポイ箱

    @sakana2015414

    pkmnでkbdnとか、kbnとdndがわちゃわちゃしてるような話を書いてます。時々ホラーなものをあげるのでそこだけ注意です。

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    肴飯のポイ箱

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    ワンドロお題「春」
    ※イズオーバー後
    ※dndの父親について捏造しています。

    #kbdn
    #キバダン

    薄桃色の手紙 ホワイトヒルを濃く覆う雪雲が消え、日差しも暖かくなり始めた頃のこと。
    「手伝って貰ってすまないな」
    「別に良いって。ダンデの読んでる本にも興味あったし」
    「別に、変わったものは読んでいないぞ?」
    「そういうことじゃねぇのよ」
     壁の一面の天井まで続く大きな本棚にはポケモンに関する小難しい本から、トレーニングに関する最新雑誌まで。途中から入り切らなくなったものは本棚の周りへと積み上げられて所々雪崩が起きている。一言で言えば雑多な部屋の中でそんな掛け合いをしながらキバナとダンでは本の整理に勤しんでいた。
    「専門書は残して…雑誌類は処分で良いんだろ?」
    「ああ。気になる記事は大体全部スクラップブックにしているからな」
    「オレさまの記事とか?」
    「あるぜ。スキャンダルの以外は」
     スパッと返ってきた回答に対して、流石にここで「見てみたい」なんて言えなかった。ダンデをちょっと揶揄うつもりで聞いたことがとんでもない藪蛇だったので、キバナは急にキリッとした顔になって静かに作業をし始める。


    時折パラパラとページを捲る音と、本を重ねる音。そして2人分のささやかな足音だけが響く時間が続く。沢山あった本達も殆ど仕分けられ、伽藍とした棚が何処となく寂しさを感じさせる。
    「お、これまた懐かしい本があるな」
    静かに作業をしていたキバナであったが、本棚の端の方にひっそりと並べてあった本を見て、たまらずといった声が出る。それは、『ガラルのひとびと』と表紙に柔らかなフォントで書かれた子ども向けの図鑑だった。
    「オレさまも子どもの頃よく読んでたな」
    「それ、父さんから旅に出る前に貰ったんだ。『ガラルを旅するなら、もっとガラルを知りなさい』って。」
    「良いお父さんだったんだな」
    「ああ…チャンピオンになった後も父さんの病室でよく一緒に読んでいたんだぜ。旅の話をこの本のことと交えながら話すと凄い喜んでくれたんだ」
    「良い思い出だな…オレさまも、この本で見たドラゴンタイプのページを擦り切れるくらい読んでたなぁ…何ページだった…おわっ!」

    懐かしさから2人揃って表紙の絵を眺めていたが、キバナがページをパラパラとしてみると、薄紅色の紙吹雪のような物が本の隙間からこぼれ落ちてきた。
    「なんだこれ…花…びら?」
     踏まないように恐々としゃがみ、指先で摘んだそれは薄紅色の小さな花びら達だった。
    「…あ!そこに挟んでたんだったか」
    「んっ?コレってもしかして…」
    「ああ、君と一緒に退屈な式典を抜け出して登ったあのサクラの花びらだ」
    「マジか!あの時のオリーブさんめっちゃくちゃにブチギレて怖かったよなぁ。じゃあ、これ10年くらい前のやつじゃん。よく残ってたな」
    「まあ、その頃から本棚に入れっぱなしにしてしまったからな…」
    「……じゃ、尚更ちゃんと持っていかなきゃな。」
    「うん…そうだな」
     キバナは床に散らばった花びらを丁寧に集めてもう一度本の間に挟む。
    「お義父さんの所に顔出す時、式典の話もしてみようぜ」
    「君が調子に乗ってもっと上まで登ろうとしてアオガラスにつつかれた話か」
    「そしてお前がそのアオガラスに驚いてケツから盛大に来賓の上に落っこった話だよ」
    「それは内緒にしてくれ」
     キバナから手渡された本を胸の前に抱えながらダンデは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
    「それ、あっちに持っていく荷物の所に置いてきなよ。本は後ガムテープで封して終わりだし、先にキッチンの食器出してて。すぐに手伝いに行くから」
    「ありがとう。じゃ、任せた」

    本棚のあった部屋と同じ様に伽藍とした室内。部屋の真ん中に積まれた段ボールの横。愛用のリュックの上に先ほどの本をそっと置いてから、ダンデはもう一度部屋を見渡した。
     明日、ダンデは引っ越す。キバナと新しい暮らしを始めるための場所へと。
    「(父さんに話したい事、話せなかった事が沢山あるな…)」
     もう記憶が朧げになるくらい久しく足を運んでいなかった父の眠る場所。長方形の無機質な石になってしまった父を見たくなくてずっと避けていた。でも今なら、キバナと一緒ならきっと。
     花屋で1番大きな花束を作ってもらって、父が好きだったクラボのジャムを挟んだスコーン。それとポットに温かな紅茶も用意しよう。何せキバナと過ごした10年分だ。時間がいくらあっても足りないのだ。後、父が見たがっていたこのサクラの花びらも父の上に降らせてみよう。きっと最初は驚くけれど、最後はクシャッと目を細めて笑ってくれるはずだ。そんな事を考えて、いつの間にかダンデの顔には笑みが浮かんでいた。

    「さて、後一息だな」

     そう気合を入れ、腕まくりをしてキッチンへと向かう後ろ姿を、風に揺れるカーテンだけが優しく揺れながら見守っていた。ずっとずっと見守っていた。

     

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    肴飯のポイ箱

    DONEREVELЯY2411「COUNT DOWN vol.2」の書き手クイズ企画に提出した作品となります。
    お題「催眠 付き合ってないキダ」
    開催中はドキドキとしながら過ごしておりました!すごく楽しい企画でした☺️✨ありがとうございました!
    夜空、星二つ ガラルにしては気持ちの良い、からりとした青空が朝から広がっている日だった。ブラックナイトに関する諸問題で暫く奔走を余儀なくされていたキバナは、ようやく業務もひと段落し始めた。屋外での作業は晴れの少ないガラルでは何よりも優先したい事柄だ。そんなこともあって、キバナは温かな陽気の中、ナックルジムの中庭で膝と頬を土で汚しながらせっせと植物の剪定に明け暮れていた。元が城ということもあり、一般の人々が立ち入らない場所には未だに当時の面影を残す部分が多い場所だ。キバナが居る中庭もその一つで、ナックルのジムリーダーが代々手入れをしていくことがいつの頃から習わしとなっていると聞いていた。初めてその役割を聞いた時には正直乗り気では無かったキバナだったが、元々好奇心旺盛な方だと自覚していることもあって、やり始めてみればなんだかんだと楽しみを見つけ出し、気付けば少しずつこだわりも持つようにもなってきた。
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    肴飯のポイ箱

    DONE12月オンイベ展示作品その②(新しいお話)
    みんなが寝静まった夜。こっそりひっそり楽しく過ごす不思議な生き物のキバナとダンデのお話
    「🎄ホリデー編🌟」
    ※ポ世界のクリスマス概念が曖昧な為、あえてクリスマスから正月までをホリデーと設定してお話をかいています。細かく考えず緩くお楽しみください🌟👻👻🎄
    それは賑やかな すっかり夜の帳が下り、静まり返ったとある家のキッチン。小綺麗に整頓されたそんな場所を小さな林檎程の大きさの何かが二つ、白い布を頭から被ってチョロチョロと薄暗いキッチンの中を動き回っている。
    「キバナ、息が真っ白だ!寒いなぁ」
    「今日も月が大きいなぁ。でも、流石に今日はみんな寝てるだろ」
     月明かりに照らされたキッチンを、キバナと呼ばれた大きい方がそれよりも少し小さなダンデの手を引きながらずんずん進んでいく。
     少し前にお菓子を貰ったキッチンは、同じように整えられていた。水切り籠にはジュラルドンとリザードンが描かれたカップが逆さまになって雫を落としていた。今日は、それ以外にもカラフルなカップや皿がたくさん並んでおり、いつもは食器棚の一番上で偉そうにしている白地に金の模様が入った大きな皿も、ピカピカに洗われて月の光を反射している。
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    肴飯のポイ箱

    DONEオンイベ開催、アンド素敵企画ありがとうございます!
    この作品は、12.3歳ごろの2人がナックルシティの片隅にあるとある喫茶店を舞台にわちゃわちゃとしていくお話となっています。
    ※両片想いほのぼのです。
    ※ガラル市民がたっくさん出ます。
    ※視点がコロコロ変わるお話です。
    少しでも楽しんでいただければと思います☺️
    とあるナックルの片隅で◆ライラック色の髪をした少年の回想

    「あ、チャンピオンだ!」
    「チャンピオン!」
    「何かイベントでもあったっけ?」
     困った。
    俺は、大きな街の真ん中で冷や汗を掻きながら、どうしてこんなことになったのかをひたすらに考えていた。
     今日は午前中にシュートでのチャリティイベントに参加した。午後はスポンサーの会社が行うガーデンパーティへの参加が予定されていたが、そちらが主催者側の事情でのキャンセルとなったので、突発的に午後は丸々オフとなった。予定されていた休みより、こういうイレギュラーな休みって得な感じがして俺は好きだ。せっかくだから前々から欲しいと思っていた物を買おうと意気込み、勢いのままユニフォームで飛び出した。自分なりに人目が少ない道を探しながら、地図アプリと睨めっこ。しかし、俺の努力も虚しくうっかり路地から大きな通りへと出てしまった。途端に集まるキラキラとした眼差しの人、人、人。応援してくれる人達の期待の眼差しを裏切ることはできず、突発的に始まってしまったファンサービス。握手に写真、サイン。もみくちゃにこそされないけれど、このままだと行きたい場所に行けないまま休みが終わってしまう。顔には出せないが内心焦りつつも人混みは消えるどころが増えていく。どうしたものかと困っていると、人混みの奥から良く通る声が聞こえて来た。
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