drag dreamtale#5「ブラックデビル5箱」
「はい。お会計は10Gになります」
奪い取った小銭入れから金を出し、タバコを買った。
知らない男のモンスターの店員は番号で言えとでも言いたげな顔をしつつ、金を受け取ろうとした。
しかし、チラリと見えたのか知らないが、俺のどろどろに溶けた手を見て、こう言った。
「う、うわああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「バ、バケモノ!バケモノ!祟りだあああああああああああ!!!!!!!!」
「どうか命だけはお許しを!お許しを!」
知らない男のモンスターの店員が泣きながら許しを乞う。バカみたいだ
「五月蝿ぇんだよ!!!黙れ!!!!!」
「ひぃっ!どうかお許しを!!」
感情が暴走してしまう。自分でもいけないのは分かってる。けど、けど、
「だまれだまれだまれ!!!!!!!!!!!俺の手が溶けてる事何がおかしいんだよ!!!!!言ってみろ!!!!!!!!!」
ドゴッ!
鈍い音がした。
気付かないうちに知らない男のモンスターの店員を殴っていた。
「ゔぅ、ゔゔ…………だ……….」
知らない男のモンスターの店員はうめきながら倒れていた。
そんなに強く殴ったか?
まあ、他の店員はサボっているようでいないし、なぜか客もいなかったし。なんで店長もサボってんだよ………..こいつマジメすぎな。
ならいいか。
「なんで手だけで騒ぎ立てんだよ。ハァ…………まあ、知らない誰かもいなかっただけ、ラッキーか。」
小銭をトレーに置いて、タバコを取り、店を後にした。
改めて俺の手を見た。
このどろどろに溶けた手。
本当に自分でも化け物だと勘違いしてしまう。
いや、俺はやっぱりバケモノなんだ!
嫌われ、忌まれる存在なのか!
勘違いなんかじゃなかったんだ!
弟とは全く反対の存在だ。
…………弟?俺には、弟がいたんだっけか。
いつも弟、ドリームは暖かくて優しい存在だった。
やっぱり俺はドリームと正反対である必要があるんだ。
明るくなんてなれない。
俺は輝けない。輝かない。
俺とドリームなんて天と地くらい差があるだろう。仕方ない。
俺はやがて廃れていく存在。
だからこそ、より一層、ドリームは輝く。
仕方ないんだ。
俺はドリームを嫌いになり、その内ドリームも俺を嫌いになる。完璧だ。
俺以外の全てが輝いて、俺はみんなに嫌われればいい。
だから、死ぬ必要などない。永久に俺は生き続けるのだ。
さようなら、明るい俺。
もう明るくする必要などない。