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    comeco

    @happyota2

    字書き。
    銃三が主。たまにさまさぶ、帝独、D4

    @happyota2

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    comeco

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    じゅうさぶ
    さぶちゃん3人でてきます。
    記憶あやふや。捏造系。妄想しかないです。
    詰めようと思ったけど飽きました。供養。

    #銃三
    cannonIii
    #じゅさぶ
    undergoingSurgery

    それでもいつもの朝は来る いち兄とじろ兄と一緒に寝るの大好き
     あったかい
     やっと家族で一緒にいられる……
     
     ピピピピ ピピピピ
     
     目覚ましの音。
     三人で川の字で寝ていた頃、ここに引っ越したばかりの頃の夢を見ていた。二人の兄に挟まれてあったかいお布団で寝ていた……ん?あったかいけど狭い。二郎が間違えて僕の部屋で寝ちゃったのか?と思い隣を見るとなんか小さな男の子っぽいのがいる。反対側は一瞬いち兄っぽいけどなんか違う男の人。
    (え?え?なに?)
     二人も部屋に侵入してきたのに寝てて気づかないにもほどがあるだろと自分の眠りの深さに頭を抱える。「一回寝ると何があっても起きないよな、三郎は」と二人の兄が言っていたことがありその時は全力で否定したけどあながち間違ってなかったのかもと今自覚させられた。
    「なあに?さむいよ、じろにい。」
     男の子の発した言葉。驚いて男の子の顔を覗き込む。目元に二つの黒子、口元にもひとつ。目は閉じてるけど僕の小さい頃の写真と同じ髪型……
    (いやいやまさか。)
     そう思ったもののもう一人の方も顔を覗きこめばやはり体は大きいけど同じ特徴を持つ顔。
    (うそだ。夢だ。こんな非現実的なこと起こるわけない。)
     泣きそうなくらい混乱しつつも自分に言い聞かせもう一度寝ようとしたところに
     
     ガチャ
     
     なんの遠慮もなくドアが開き
    「おい三郎!早く飯食えよ!片づけらんね、え……」
     と二郎が怒鳴りながら入って来たがベッドの上の事態に言葉が止まった。
    「なにこれ。」
     と聞かれ「わかんない」と答えると「まあいいや、おい!全員起きろ‼︎メシだ‼︎」と二郎が二人を叩き起こした。そして
    「あにきー‼︎なんか大変なこと起きたぞー‼︎」
     と大声で階下に降りて行く。あまり大変そうに聞こえないし、二郎は基本何も考えてないからこんな状況も怖いとも思わないんだと思う。
     二郎の大声で二人が目を覚ます。小さい方は明らかに僕の子供の頃だと思うけど、大きい方は想像したくないけど未来から落っこちて来たんだろうな。小さい僕は泣きそうになっている。
    「ここどこ……」
     多分施設にいた頃の僕だからここがどこだかわからないらしい。対してデカい方は「うわ、なつかし」って言ってるから間違いなく未来の人。
    「あ、中学の時の僕か。」
     と言われ撫でられた。なんで僕が僕に撫でられなきゃなんないんだ。
    「ねえ、ここどこ、お兄ちゃん。」
     小さい僕は小さな声で話しかけて来る。
    「えっと、ここは僕の部屋。お泊まりした、のかも。」
     泣かさないように優しく言ったつもりだったのに
    「お兄ちゃんこわい……おこってる?」
     と涙が溜まっていく。怒ってはいないけどイライラしてるのが伝わってしまったらしい。
    「さーていち兄に挨拶してこよー。」
     デカい僕はなんか少しチャラい。こんなんなるの、僕。
    「いちにいいるの?」
     小さい僕は首をかしげる。いち兄だけどこの子にとってのいち兄じゃない気もするけどとりあえず
    「ご飯片付けられちゃうから行こう。」
     と二人をダイニングへ案内する。
     
    「うわ、さぶちゃんだ。」
     いち兄の第一声は小さい僕への感嘆の声だった。
    「だあれ?」
     意外と人見知りをしない小さな僕。
    「俺か。俺は山田一郎だ。」
    「いちにいと一緒のお名前ですね。」
     とニコッと微笑む。え、小さい僕可愛くない?
    「んーまあ、そうだな。」
    「なあ、三郎。」
     二郎が呼ぶと三人が二郎を見てしまい「あ、そっか。えーと……」と一瞬言い淀んだが解決法は見つからなかったんだろう。そのまま
    「時間、大丈夫か?」
     と時計を指差す。
    「でえと、行くって言ってなかったか?」
    「デートじゃない!プラネタリウムに行くだけ。」
    「あーはいはい。」
    「プラネタリウム僕も行きたい。」
     小さな僕がぽそっと呟く。でも状況的に今日は無理だ。スマホを取り出し『今日は行けなくなりました』とメッセージを送る。しかし既読もつかない。待ち合わせの時間まであと十分。しかもこっちの方だから家まで迎えに来るとか言ってた気がする。運転中ならスマホは見れない。来る前に気付けば連絡が来るだろう。もし来ちゃったら説明して帰ってもらおう。
     
    「それでそっちの大きい三郎は幾つなんだ?」
    「僕は今二十です。飛び級して院にいます。」
    「そうか。流石だな、三郎。」
    「は?飛び級?なに?院て?」
    「馬鹿二郎。」
    「?」
    「二十じゃ俺より年上なんだな。」
    「そうですね。」
    「そうか。そんで、さぶちゃんは……九歳くらいか。」
    「……当たりです。すごい。」
     小さい僕は目をキラキラさせている。その様子を見て兄二人は可愛いが止まらない。いや可愛いけど。それよりこんな団欒してるけど僕はここに向かっていたはずの人物から連絡が来なくてヤキモキしている。
    (もう連絡来てもいい頃だとおもうんだけど……事故とかじゃないよね……)
     そう思ってスマホを眺めていたら『もう着いてしまいました。』と通知と同時に出るポップアップを見て『今行きます』と速攻で返信して
    「僕、ちょっと出てきます。」
     と僕二人を兄達に任せて外に出る。ビルの入り口に横付けされた車の中で煙草に火を点けようとしているから外から窓をコンコンと叩く。その音に気付き窓を開けてくれた。
    「ごめんなさい。急に行けなくなっちゃって。」
    「急にお兄さんのお手伝いが入りましたか。」
    「違うんです。ちょっとよくわからない事が起きてしまって……」
    「そうですか。」
     納得してくれたと思ったのに何故か車から降りてきた。
    「問題が解決すれば行けるんですよね。」
    「いや、あの、それはムリ」
    「あなたが挙動不審すぎて何が起きたのか事の真相を突き止めたくなりました。」
    「無理無理!今うちほんとに大変なんだって‼︎」
    「私は有能な警察官なのでちゃんと解決して差し上げますよ。」
     スタスタとうちの入口の方に行って玄関まで開けちゃうもんだから
    「ちょっと!マジでやばいんだって‼︎」
     と大声を出してしまいその声を聞いて中からみんな出てきてしまった。
    (僕のバカ……)
    「三郎、どうした‼︎」
     いち兄は心配して出てきてくれたみたいだけどあとは単なる野次馬だ。
    「あれ、入間さんじゃん。」
    「お、銃兎だ。若いなあ。」
    「だあれ?」
     思い思いの言葉を呑気に口走っているし、入間さんも「おやおや、何事ですかこれは」と興味津々だ。
    「……見ての通り大変なことになってます。」
    「三郎くん、ですかね。あのお二方は。」
    「ああ、はい。起きたら居ました。」
     入間さんは口元に手を当てしばし考えていたが
    「まあ、さして問題なさそうなので出かけましょう。」
     と言い出した。僕が驚いていると
    「だってお兄さん達いるんでしょう。この方たちはお家で待っててもらえばなにも問題ない。」
     何も?どこが?言いたいことは山ほどある。しかし入間さんの言うことも一理ある。
    「こいつもプラネタリウム行きたいって。」
     二郎が小さな僕を抱っこしながら言ってきた。どうも小さな僕は二郎がお気に入りらしくずっと離れない。どうせならいち兄に抱っこしてもらえばいいのに。
    「いい?」
     と小さな僕が聞いてくるけどそれは困る。困っている僕の代わりに入間さんが
    「二郎くんが連れてったらいいんじゃないですか。」
     と冷たく言い放つ。
    「じろくん連れてってくれる?」
     二郎の事を兄と認識していない小さな僕はじろくんと呼び、デレデレの二郎は「おうよ!」って言ってるけど入間さんの機嫌はなんとなく悪そうな感じを受ける。
    「じろくんだいすきぃー。」
     ギュッと二郎に抱きついているおちびさん。僕のはずなのになんでそんななんだ。
    「さぶろーかわいいなあ!」
     二郎の方もちびの頭をぐりぐり撫でている。
    「チッ!」
     入間さんの小さな舌打ちが聞こえ顔を見るとイライラ度がさっきより増している。なにをそんなにイラついているんだろう。その様子を見て今度はデカい僕が「プッ」と吹き出した。
    「なに?」
    「いや。変わんないから面白い。」
     何を言ってるのかさっぱりわからない。結局「行きますよ。」と僕は手を引かれ玄関を開けられたので「あ、じゃあ行ってきます。」と流れのままうちを後にした。
     
    「どうしたんですか入間さん。」
    「別に。なにもないですよ。」
     そう言いつつ何故かイライラしているから引っ張られる手が少し痛かった。入間さんの車に乗ってプラネタリウムに着くと上映まで少し時間があった。
     席に座り時間までわくわくしていると
    「あなたは本当にお兄さんが大好きですよね。」
     と当たり前の事を言ってきたので「そりゃ、いちに……」と言おうとしたら
    「二郎君のほうですよ。」
     と言われて愕然とした。
    「はあ?」
     思わず言葉まで崩れた。
    「一郎君のことは尊敬しているのはわかります。敬愛はいいんです。」
    「はあ。」
    「二郎君との仲の良さはそういうんじゃないじゃないですか。」
    「二郎との仲の良さ……なんてないけど。」
     入間さんは一体何を言っているんだろう。
    「小さな三郎君が二郎君にべったりだったじゃないですか。」
    「?そうですね。」
     それは僕だって意外だと思う。でも二郎は普段から子供に好かれるから子供の僕にはなにか惹かれるものがあるのかもしれない。今の僕にはその魅力がなんなのか理解不能だけど。
    「でも、それがどうかしたんですか。二郎が子供に好かれるのは程度が一緒なだけですよ、多分。」
    「そうですか。子供の好きは本能ですからね。」
     なにをそんなに気にすることがあるのかわからない。わからないけど時間になって辺りが暗くなり満天の星が瞬きはじめた。
     
    「あー楽しかった。銀河鉄道の夜はやっぱりいいよね。」
    「そうですね。話は切ないですけどね。」
    「んー、まあね。でも銀河鉄道には乗ってみたいかも。実際には宇宙で星座を見ることはできないけどロマンチックだよね。」
    「そうですね。宇宙旅行とは違う概念ですしね。」
    「入間さんとはこういう話ができるから面白いよ。今の僕の周りには子供っぽい友達しかいないから。」
    「お兄さん達とは話をしないんですか。」
    「基本二人とも本っていえばラノベか漫画だからね。アニメの話は僕はついていけないし、文学とか絵画とかそういう文化的な話はしないよ。だから入間さんと話すのは楽しい。」
    「そうですか。それは良かった。」
    「じゃ、帰ろ。」
     プラネタリウムも見たし、もう僕に用はないだろうからそう提案すると
    「え、っと何か用があるんですか。」
     と質問された。
    「ううん。ないよ。」
    「……。私たちはお付き合いをしてますよね。」
    「?うん。」
     一応付き合っている、はず。何をすることが『付き合う』なのかは謎だけど。
    「これはデートですよね。」
    「……たぶん。」
     とはいえ目的地に行ってその目的を達成すれば終わり、なのでは。
    「ポカンとしていますね。まあいいでしょう。お腹は空きませんか。」
     言われて少し空いてるような気になる。
    「うん。ちょっと。」
    「では軽くなにか食べましょう。」
    「はい。」
     入ったのは小さな喫茶店。ファストフードやファミレスではない事に少し驚いた。一人ではもちろん兄弟かぞくとも絶対に入らないところ。とても静かで入間さんの佇まいにはよく似合う。僕には場違いなのではないかとソワソワしてしまう。
    「落ち着きませんか。」
    「こういう所は初めてなので。なに頼んだらいいんですか。」
    「ここは卵サンドが美味しいんです。もちろんコーヒーも格別です。」
    「じゃあそれで。」
     オススメされた卵サンドを食べたらすごく美味しかった。正直コーヒーの味はわからなかったけど多分美味しいんだと思う。静かな空間で穏やかにしばらく話をした。僕の知らない世界の話を入間さんは話してくれたし、僕の話も相槌をうちながら聞いてくれた。
     とても有意義な時間を過ごす事ができて僕は大満足だった。
     車で家まで送ってくれて「またお誘いしますね。」と言われた。返事になるかならないかわからないけどとりあえず頭を下げてから車を降り走り去っていくのを見送った。
     
    「ただいま。」
    「「「「おかえりー。」」」」
     楽しい時を過ごして忘れていたが僕の分身(?)が居たんだった。小さい僕は相変わらず二郎の周りでうろちょろしていて楽しそうに遊んでいる。やっぱり精神年齢の一致だろと思う。
    「ちょっといい?」
     と大きな僕が僕を自室へ行こうと誘ってきた。今の僕より身長が高くいち兄と同じくらいはありそうだ。
    「なに?」
     部屋に入っても僕からはなにも話すことはない。
    「懐かしい。あ、これまだ持ってるよ。」
     僕のボドゲコレクションを見始める。
    「そういうのいいよ。なに?なんか下で喋れないことでしょ。」
    「ああ。銃兎と付き合ってるよね、今。」
     やっぱりその事か。
    「僕なんだから知ってるでしょ。」
    「まあね。でももうあんまり覚えてないんだ。その、付き合い始めの頃のこと。」
    「え?やだな。記憶力悪くなんのかよ、僕。」
    「違うよ。新たな記憶が入れば古い記憶が曖昧になるのは当然だろ。常にアップデートしてるのに古いのまで鮮明には覚えていられない。想い出を美化するパートナーにちょっと手を焼いててね。」
    「想い出を美化?」
    「そう。そこで、今の君に聞いて記憶を呼び起こそうと思ってね。」
    「わざわざ何かしらの事をしてここに来たってこと?」
    「いや。これは単なる偶然だし、戻れるのかもわからない。」
    「まあ、いいよ。非科学的な事も起こらないとは言い切れないし、実際目の前にあなたがいるから受け入れるよ。」
    「流石僕だね。その意見には賛同するよ。……で、今銃兎とどこまでしてる時?」
     どこまでしてるとはどういう質問なんだろう。そうだ。付き合うってそもそも何するのか聞けばいいんだ。
    「ねえ、付き合うって何すればいいんだ?」
     大きい僕が目を丸くする。
    「……あーそういえばそんな事悩んでた時期あった。……あったよ。うん。」
     一人で納得している。なにこいつ。いや、僕なんだけど。
    「銃兎がなんとかしてくれてない?」
    「入間さん?わかんない。」
    「そうなんだよな、わかんないんだよ。」
     え?何言ってんだこいつ。
    「銃兎の気遣いとかわかりづらいんだよ。」
     急に納得しながら頷き始めた。頷かれてもなんの解決にもならないし、入間さんがなにをしてくれてるのかもわからない。
    「だから、僕は何したらいいの。」
    「別に何もしなくても銃兎が勝手にいろいろしてくれるって。これから先何されるか気になる?」
    「何されるか?わかんないけど別に気になんない。びっくりすることとかある?」
    「多分いろいろ。でもまあなんとかなったから大丈夫。」
     曖昧な答えだけど細かく聞く必要はなさそうな言い方だったからそのまま流した。
    「そういえば、今日行く時入間さんの機嫌が悪かったけど心当たりある?」
    「あるよ。」
     即答された。絶対的自信のある時に回答が早くなるのは僕のクセだ。
    「おちびちゃんが二郎に懐いてたから。」
     ドヤ顔で言われたけどなんだそれ。でも二郎とちびの事は確かに気にはしていたようだった。でもそれと機嫌の良し悪しが結びつかない。
    「銃兎は僕のこと大好きだからね。」
     これが僕の未来だと思いたくないほど自信家な事実に少し落胆した。今の僕より楽観的なのもいやなんだけど。
    「銃兎とか二郎によく言われたけどやっぱ生意気だな、この頃の僕。」
    「なんだよ急に。失礼だろ。しかも本人じゃないか。」
    「そうだけど客観的に見ることなんてできないんだし、僕が歳を重ねたから思うことだからね。あ、今日は何してきたの?」
    「プラネタリウム行ってお茶飲んだ。」
    「何観た?」
    「銀河鉄道の夜。」
     大きな僕は「そっか」と言った。とても懐かしそうに遠くを見ている。
    「卵サンド、美味しかった?」
    「うん。」
     そうか。この記憶はあるのか。
    「ねえ。今日一応デートでプラネタリウムって言われてたんだけどプラネタリウム終わって帰ろうって言ったら入間さん困惑してたんだ。僕、なんか変なことしたのかな。」
     単なる疑問。だってこいつも同じことしたはずなんだし。
    「あー……それ、結構あっちには衝撃だったみたいだけど別に気にしなくていいよ。変なことはしてないし、楽しそうに今話すから。」
     楽しそうに話すの意味が分かんないけど問題行動がないならいいんだろう。
    「そっか。こんなに真っ新だったんだ。ほんとに忘れてたよ。」
    「え?なにが。」
     真っ新とかなんのことなんだ。恋愛のことなら本当に何も知らない。興味もなかったのに降って湧いた出来事で世に言うフワフワした気持ちとか皆無だし。
    「銃兎に告白されたじゃん。」
    「え、うん。」
     
     ある日の夕方突然西口公園に呼び出された。その日僕は夕食当番で早く帰ってご飯を作らないといけなくて
    「歳の差があるのはわかっている。だけど君のことが気になって仕方がない。お付き合いをしてもらえませんか。」
     と突然言われてなんのことかわからないし、早く買い物に行きたくて
    「わかった。」
     と答えてしまった。入間さんは珍しくガッツポーズをしていて「なんだこいつ」と思っていたら入間さんの完全プライベートの端末に連絡先を交換させられた。
     これが『お付き合い』の始まり。
     入間さんの発言のどこに恋愛感情があったのか今もわからない。今の僕に恋愛感情があるのかも。
     
    「どんな感じだった?」
    「どんなって、別に何も。入間さんはガッツポーズしてた。」
    「だよね⁉︎ほら、僕の言った通りじゃないか。」
     なにやら『勝った!』みたいな顔してるけどなんなんだ。
     
     …………
     
    「じろくん。あっちのお兄ちゃんも遊べる?」
     あっちと指差す先には一郎。
    「にいちゃーん。こっち来れる?」
     依頼の処理をするのにPCの前にいた一郎がちびのところへ来てしゃがみ込む。
    「どうした?」
    「一緒に遊んでくれる?お外行きたい。」
    「おう。いいぞ。」
    「なにする?サッカー?」
     三人で外に行く。
    「プラネタリウム行きたかったんじゃないのか、さぶちゃん。」
    「んー行きたかった。」
    「行くか?」
     一郎が三郎に聞いてもふるふると首を振る。
    「お兄ちゃんたちいるからお外で遊ぶ。」
     施設では小さな子供しかいない時は部屋の中で遊ぶように言われていた。治安が悪く子供だけで外に行くのが危険だったからだ。この頃の三郎から見れば二人は「お兄ちゃん」と呼ばれているが立派な大人に見えているはずだ。二郎はサッカーボールを持ってきていたから三人でパスしたり兄のどちらかがキーパーになりPK合戦したりして遊んだ。
    「楽しいね。」
     にこにこと素直に喜んでいる三郎は天使のように可愛い。
    「僕にもね、いち兄とじろ兄っていう二人のお兄ちゃんがいるんだよ。」
    「へえ。」
    「いち兄はね、もう大きいからあんまり遊んでくれないけど、じろ兄とは一緒に学校行ったり遊んだりするんだ。」
    「そうなのか。仲良いな。」
     にこにこしていたのに兄弟の話をした途端表情が暗くなる。
    「僕が嘘ついたから僕だけ違うところに置いてかれたのかな。」
     一人でここにいる事に違和感を感じていないはずはなく心当たりのある事を呟いた。
    「嘘か。」
    「うん……ついちゃいけないってわかってたんだ。でも……」
     二郎はこの頃の事を覚えている。三郎の嘘のことも。知らないのは一郎だけ。
    「どんな嘘をついてたんだ。」
    「兄貴、いいじゃん。」
     二郎は止めようとするが三郎は素直に話し出す。
    「えっと、いち兄がお仕事してて、お小遣いもらったんだけど取られちゃって、足んないって言われたからいち兄に学校の買うからってもらったりした。」
    「取られちゃった?」
    「うん。知らないお兄ちゃんに。じろ兄もぶたれたりして僕もこわくて。でもいち兄忙しいし、言えなくて、でもお金は持ってかないといじめられるし、それで嘘ついてお金もらった。いち兄に何回も嘘ついちゃった。ふえぇ……」
     三郎は告白するうちに泣き出してしまった。一郎の顔が曇る。二郎も悲痛な顔をしている。
    「そうか。辛かったな。」
    「僕だけ捨ててかれっ……ひっ……ひく……うあぁーん……」
     兄弟と離れる事はほとんどなかったが施設暮らしな事は理解していた。両親は死別したと言われていたが噂話で捨てられた子も混ざっていると聞いていたからポロッと出た言葉を一郎は聞き逃さず三郎をギュッと抱きしめる。
    「違うぞ、三郎。にいちゃん達はそんな事でお前を捨てる事はない。ここは萬屋だ。子供の面倒もいつも見ている。にいちゃん達はここが安心だから預けてくれたんだ。」
    「そうなの?」
    「ああ。」
     捨てられる子供の気持ちなんか分からなくていい。少しでも安心して欲しい。
    「三郎そんなに泣いてると、泣いたのじろ兄にバレちゃうぞ。」
     と二郎がちょっと真剣な顔をして言う。
     この頃三郎が夜中に隠れて泣いていたことを思い出したからだ。たびたび夜中に居なくなることもあったが朝には布団に戻っていたからきっと見つかりたくないんだろうと勝手に解釈して見て見ぬふりをしていた。三郎にまさかこんな事が起きているとは思わなかったけど。
    「……。」
     三郎はすぐに泣き止んだ。
     じろ兄には三郎が泣いたのがすぐにわかってしまう。その度に「どうしたんだ」「オレがやっつけてやる」「だれにやられた」と助けてくれようとする。嬉しいけどケンカはだめだから大丈夫って言っても納得してくれなくてずっと質問され続ける。心配かけたくないから泣いた事は内緒にしておきたい。
    「泣かないからじろ兄に言わないで。」
     と二人に言ってきた。二人は頷いて指切りをした。
     
     
     結局何も解決しないまま夜になり五人で食事をした。小さな僕はおかわり自由の山田家特製カレーライスと山盛りの唐揚げに目をキラキラさせてもりもり食べていた。その様子を四人で頷きながら見守るという不思議空間になっていた。
     その後風呂に入りちびが目を擦り出すと「さぶちゃん、一緒に寝るか」といち兄が声を掛けた。小さな僕はコクンと頷きいち兄の部屋へ抱っこされて早めの就寝。二郎と僕も自室に戻る。大きな僕は僕の部屋で一緒に寝る。
     
    「おやすみ」
     
     …………
     
     朝起きたら一人だった。
     キッチンに行くといち兄が朝食の仕度中。皿の枚数は三枚。いつも通り。
    「おはようございます。」
    「おはよう。昨日のはなんだったんだろうな。」
    「そうですね。ちびちゃんは居なかったんですね。」
    「ああ。多分そっちも戻ってるかと思って三人分しか用意してねえけど。」
    「大丈夫です。こっちも同じです。」
     穏やかに話しているとバタバタと二郎が階段を駆け降りてくる。
    「どうした?」
    「朝から騒がしいなあ。」
    「朝練‼︎忘れてた‼︎にいちゃん、弁当出来てる?」
    「おう。」
     いち兄が弁当を二郎に渡す。二郎は食卓に出来ていた卵焼きを手掴みで一切れ口に入れ「いってきまーす!」と慌ただしく出ていった。
     
     僕はいつも通りの朝。
     
     …………
     
     コーヒーの香りが遠くからしてきて目が覚めた。そして昨日の出来事を反芻して頭の中でまとめてからパートナーへの認識訂正をしようと意気揚々と部屋を出た。
    「銃兎!やっぱ僕の言う通りだったよ。」
    「なんだ。藪から棒に。それより昨日はどこに居たんだ。」
     中学の時の僕の部屋のベッドで寝たはずなのに朝起きると自分の部屋の机で寝落ちしていた。でもそんな事は些細な事だ。
    「昨日は中学の時の僕の部屋にいたよ。」
    「なんだ、寝ぼけてるのか。大学生は遊び呆けてていい身分だな。」
     今日のイヤミも冴えわたってるな。銃兎は昇進して仕事が忙しくなったから大学生の気楽な生活を疎ましく思うんだろう。
    「イヤミばっかり言うんなら一緒に住まなくてもいいよ。」
    「……。」
    「ま、それはいいや。あのね僕に告白した時のはなし。」
    「ああ。あの時は言われた事に焦ってて可愛かった……」
    「だからちがうって。思い出したんだ。あの時は夕飯の支度しなきゃいけなくてさっさと帰りたかったんだって。銃兎はそわそわしてて初心だったとか言うけどそうじゃなかったよ。」
    「なんで急にそんな事言い出すんだ。」
    「なんかもやもやしてたんだよね。あんまり覚えてなかったけど中学の頃の僕、そんな可愛げあると思えなかったから。本人にも聞いてきたし。」
    「本人?何言ってんだ。本人はお前だろ。」
    「違うんだって!中学の頃の僕に会ってきたんだって‼︎」
     銃兎は頭を抱える。
    「お前、年々残念になっていくな。本当に中学生の頃の方が大人びてたんじゃないか。それも平和の為せる業か。」
     たしかにマイクでバトルなんかしなくなったし情勢も安定している。人間が丸くなるって成長の証でしょと思うけど『気高い三郎』のイメージが強い銃兎には神童ではなくなった今の僕は少し残念なのかもしれない。
    「悪い。そんな顔するな。」
    「別になんも顔作ってないけど。」
     多分憮然としていたんだとは思うけど。
    「やっと背伸びしなくなって可愛いから安心しろ。」
    「はあ?僕もう成人なんですけど。可愛いとかやめてよね。」
    「……あんまり変わってないな。ほら、朝飯にするぞ。」
    「はーい。」
     
     やっぱ非科学的な事には無関心だな、銃兎は。
     
     
     …………
     
    「三郎!起きろ!ごはん片付けられちゃうぞ‼︎」
    「んー……おにいちゃん?」
    「なんだよ。ほら早く着替えろって!」
    「……二郎?」
    「そうだよ。ほらー早くしろって‼︎」
     いつも部屋。二郎が怒ってる。お兄ちゃんたちはいない。
    「変な夢見た。」
    「は?おまえいつもそんな事言ってんじゃん。オレ先行ってごはん食べてくる。」
    「あ、待ってよ!」
     
     急いで着替えなきゃ‼︎
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    😍😍😍💘💘🍼🍼🍼💞💞
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