Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    岩藤美流

    @vialif13

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 100

    岩藤美流

    ☆quiet follow

    オクタ3人が風邪をひいたときに何かがあったらしい話。

    続きが書けるかわからないので。たぶん↓と同じ時空です
    https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=871428&TD=3772640

    目を覚まして思ったことは、今が何時かだ。常に起床時間には気を付けて、念のためにアラームもいくつかセットしているはずだが、この耳に届くアラーム音は一体何回目のものだろう。ひどくおもだるい体は言うことを聞かなくて、瞼さえ開けるのが辛い。うう、とうめき声を上げながらなんとか妙に思い布団を押しのけ、ベッドサイドに置いていたスマートフォンを手に取り、そのけたたましい鳴き声を止めようと画面を見たところで、アズールは悲鳴を上げた。
     もうとっくに授業の始まっている時間だ。無断遅刻、内申、モストロ・ラウンジの経営権……逃げまどうイワシの群れの如く、様々な考えがよぎった。それからその混乱が、今日が休みであるという事実を思い出すことでようやく終息する。
     安心して溜息を吐きながら、アラームを止め。それからベッドを出ようとしたところで、ぐたりと倒れ込んだ。おや、おかしい。こんな風に体に力が入らないのは、初めて陸に上がった時以来ではないだろうか。あの、とてつもない虚脱感、おまけに濡れた肌が外気に晒されて何故だかブルブル震えるものだから、人間の服を着てもしばらく人魚が三匹仲良く固まっていたのを思い出す。そういえば、今も何故だか寒いし、僅かに震えているような気がする。だのに、顔ばかり暖炉に近づいた時のように熱い。
     なんだこれは。何が起こっている。アズールはスマホを握ったまま呆然とベッドに突っ伏してしばらく過ごし、それからとりあえず双子に助けを求めることにした。電話をかけてみたけれど、なかなか出ない。散々待った挙句出たジェイドは、様子がおかしかった。
     どうやら三人ともおかしくなっているらしい。スマホの向こうから聞こえる言葉を総合すれば、だが。フロイドに至っては「ジェイド」以外の単語を忘れたようにジェイドのそばで喚いているばかりだ。比較的冷静なジェイドと話し合った結果、自分達は何らかの病気にかかっているのではないかと推測した。
     そういえば何日か前、ラウンジのシフトが入っている寮生が具合が悪そうで、そんな状態で接客はさせられないと裏方に回させ、同じ空間で今の三人を含めた数人で作業をしたような気がする。もしやあれか。接客どころか出勤すること自体を止めさせたほうがよいとは、体調不良と無縁であった人魚達には想像することが難しいだろう。反省はすることとして、しかしこの事態をどうにかせねばならない。
     悪いことには自分達の体調はどんどん悪くなっているようだ。ぜえぜえ呼吸をしながら、回らない頭で必死に思案する。この様子では部屋から出るのも大変な苦労を伴うだろうし、それを寮生に見られるのも、ましてや助けられるのもあまりよい事ではない。弱味を握られるのは避けたいところだ。同様の理由で医務室などにも行きたくないし、第一この状況でたどり着けるか。
     そうして色々考えた結果、アズールは普段の彼なら恐らくしないであろう結論に辿り着き、スマホの画面をいくつか操作した。




    「……?」
     次に目が覚めた時、アズールはいつもの体調に戻っていた。アラームは鳴っていないが、今は何時だ。のろのろとサイドテーブルのスマートフォンに手を伸ばそうとして、ぎょっとした。眼鏡をかけていないからボンヤリしているが、愛用している机のそばに、青い炎のかたまりがある。薄暗い部屋では妙に明るいそれは、どこか神秘的な色をして僅かに揺れている。少しして、それがイデアの髪であること、そして彼がどうやら椅子に腰かけ、机に突っ伏して眠っているのだということを理解した。
     どうしてここにイデアさんが? アズールは眉を寄せて、それから記憶を辿る。そういえば、朝起きたら体調を崩していたような、それでジェイドに連絡したのだけれど、彼も使い物になりそうになくて。それで、最終的に誰を頼った……?
     アズールは顎に手をやり、目を閉じて考える。しかし、真っ白だ。何も思い出せない。まあ考えなくても、目の前に答えは有るわけだが。要するに、イデアを頼ったのだろう。記憶は無いけれど。結論を出すと、サイドテーブルのスマホを手に取った。日付は変わって、朝が近い時間をさしている。今日も授業は無いが、ラウンジの仕事は有る。しかし病み上がりで働いてもいいものかどうか。思案しながら、画面を切り替えると、最後に自分がしたであろうイデアとのやりとりが表示された。

    『イデアさん、おはようございます』
    『おは、まあ拙者寝てないんですけどww』
    『すいません、折り入ってごそうだんが』
    『なんぞ? 珍しいっすな、アズール氏が頼みごとなんて』
    『どうもたいちょうがおかしk』
    『アズール氏?』
    『アズール氏?? おーい??』
    『アズール氏~~~~?』
    『やば』
     
     それが会話の全てである。アズールはまた思い出そうと目を閉じた。イデアに助けを求めた……この文面を見るにどうやらその途中で、落ちたのだろう。それからどうなった? きっとイデアが看病をしにかけつけたのだろうが。
     アズールは後ろ髪しか見えないイデアを見ながら、思案に暮れる。
     体調不良はすっかりなくなっている。あの重だるさも、熱いのに寒くてブルブル震える感じも、頭や視界にモヤのかかったような、水中を歩くような感覚も全くない。いつも通り、普段の自分に戻っているような気がする。ということは、本当にイデアが看病をしてくれて、治してくれたのか、もしくは治ったのか……。アズールは考えながら、眼鏡をかける。視界がクリアになると、机に突っ伏して寝こけているイデアの顔も見えた。
     スマホのやり取りから見れば徹夜したのだろう男が、他人の部屋の机で寝ているのだ。さぞかし疲れるようなことがあったのだろうが。ベッドの周りの様子を見ると、自分のパジャマやタオルが微妙に畳んで置いてあるし、よく見れば今着ているパジャマは最後に着たものとは違うような気がする。つまり脱がされたのか? 裸を見られたのだろうか。そう考えると、何故だか顔が熱くなった。
     不思議な感覚だった。海では裸で過ごすのが普通だったから、陸に上がって衣服についての文化を理解はしたものの、その羞恥心についてはなかなか馴染まなかったのだが。イデアに裸を見られて、着替えさせられたのだろうと思うと、妙にムズムズして落ち着かない。きっと借りを作ってしまったからだろう、と自分に言い聞かせて、アズールは上体を起こす。
    「……あの、イデアさん」
     声をかけてみたものの、イデアはすよすよとよく眠っている様子だ。何度か声をかけてから、少し考えて「SSRガチャチケットが配布だそうですよ!」と言うと、イデアは「ふあ!」と気の抜けた声を上げて飛び起きた。
    「何!? どのゲーム!?」
    「おはようございます、イデアさん」
    「ふぁ、あ、アズール氏、あっ、だ、大丈夫? その……色々……」
     イデアはぎこちない様子でアズールに問いかける。何故か目を泳がせているが、気にせず「おかげさまで」と微笑んだ。
    「僕のメッセージを見て、駆け付けてくれたんですね? 助かりました、おかげで回復したようです。この対価は――」
    「や、対価とか、いい、大丈夫、いつもお世話になってますし? お薬飲ませたぐらいで特別なことはしてないんで、ハイ」
     妙に早口でそうまくし立てたイデアに、アズールは怪訝な顔をする。何かに焦っているようなイデアをじっと見つめると、彼は落ち着かない様子で視線をあちこちに泳がせた。
     何か、隠している顔だ。
    「……僕、あなたに何か迷惑をかけましたか」
    「エッ! いえ、別に、そう、特別なことは何も、なかったデスゾ! ほんま、ほんま」
    「そうですか? 率直に聞きますけど、あなた何か隠していませんか?」
    「なななななんのことやら! アズール氏はとっても良い子で寝てましたぞ!」
     疑いを持たれたことに焦ったらしいイデアは、それから早口で事の次第を話した。
     アズールからの返信が途絶え、イデアは慌ててオルトを連れてオクタヴィネル寮まで来たらしい。それはもう、キノコだかスターだかでブーストがかかったような全速力だった、とイデアは一旦言ったが、少ししてオルトに荷物ごと運搬されたことを明らかにした。
     時間が時間だった為、人目に晒されたのは辛かったが、ひとまずアズールの部屋に辿り着いた。声をかけてもドアが開かなかったので、鍵は魔法とオルトの解析で開けさせてもらった(この時点で犯罪の匂いと商売の香りを感じたが、アズールは黙っていた)。中ではぐったりした様子のアズールがベッドから滑り落ちて床でたこのように伸びて冷やされていたので布団に戻し、オルトに人魚と人間の病気とその解析をインストールしてもらい簡易検査も行ったところ、ただの風邪だろうという結論に落ち着いたので、必要な薬もオルトと共に用意して投与した。
     そこまでしたところで、貸し借りを異常に嫌うアズールが最初にイデアへ相談を投げたとも思えず、もしやとリーチ兄弟の部屋も探しに行くと、案の定何故だか彼らはクローゼットに頭を突っ込み二匹で絡み合ったままうねっていた。人間の姿でそんなことをしているのだからホラーでしかない。そちらにも同じ薬を投与することとして、しかし看病をするにあたりなんだかんだするなら上背のあるリーチ兄弟を動かすほうが力が必要だろうと、そちらの部屋はオルトに任せ、イデアはアズールの部屋へと戻り、状態が落ち着くまで看病をしたという。その際、汗で濡れたパジャマを着替えさせたりタオルで拭いたりしたけれど、さすがに申し訳ないのでタンスも漁っていないし下着も取り替えてはいないとイデアは釈明した。
     なるほど、とアズールは納得する。したうえで、新たな疑問が湧いてきた。
     何の問題もないただの看病だ。なんら後ろめたい点も無いし、アズールはリーチ兄弟のことも含めて感謝してしかるべきところである。なのに、この妙な男は何を隠そうとしているのか。
    「……僕、あなたに何かしましたか? あるいは何か言いました? すいません、どうもあなたにメッセージを送ろうとしたところから、本当に記憶が無くて……」
    「いいいい、いや! なんも! なんもないよ! アズール氏はお人形のようにぐっすり眠ってよく休みよく回復しただけでござる! ほんま、ほんま」
     露骨に怪しい。アズールはイデアをじっと見据えたけれど、彼は誤魔化すように笑って、「落ち着いたなら拙者そろそろ失礼します、念のため医務室とか行ったほうがいいですぞ」と言いながら荷物をまとめている。今ここでこのまま証拠も無く問い質しても、恐らくのらくらと逃げられるだけだろう。ここは泳がせるか、とアズールは素直に「本当にお世話になりました。対価は後日」と頭を下げた。
    「いや! 対価はマジでいいって!」
    「そういうわけにはいきません。僕はおろかうちの二人も世話になっているのに何も無しというのは僕が納得できませんので」
     あなたがどう言おうと必ず支払わせて頂きますから。強い調子で言うと、イデアはもごもごと何か言っていたけれど、諦めたように「ハイ……」と小声で頷いた。



     さて、しかしながら。イデアさんは一体何を隠しているのか。
     イグニハイド寮へ帰るイデアを笑顔で見送り、その姿が消えた瞬間表情からも笑みを消し去って、アズールは一度部屋に戻った。さっさと私服に着替えて、それから隣のリーチ兄弟の部屋へと向かう。ノックをするとややして、ジェイドが扉を開けたので中に入った。
     ジェイドはいつものウツボ柄パジャマを着ていて、まだ起きて間もないのか寝ぐせもそのままだ。そういう姿を知っているのは片割れとアズールぐらいなものだろう。少し眠そうなジェイドに話を聞こうと部屋の中を見渡して、アズールは眉を寄せた。
     部屋の配置は把握している。いつも散らかっている部屋の左がフロイドのテリトリーのはずだ。しかしそこは今もぬけの殻で、右側のベッドは妙に膨らんでいて、布団の中から裸足がにゅるりと伸びている。それを見て口を開こうとしたところ、先に「誤解です」とジェイドが言いきった。
    「まだ何も言ってないぞ」
    「はい、ですが恐らく僕たちの身に何も起こっていません、いや起こったと言えば起こったのかもしれませんが……」
    「お前にしては歯切れが悪いな。……もしかして、何も覚えてない、ですか?」
     我が身に起こったことを思い出して問えば、ジェイドは「はい」と静かに頷いた。
    「昨日、アズールからの着信に答えて、やたらに名前を呼んで絡みついてくるフロイドをなんとかしようとしていたところ、バランスを崩したところまでは覚えているのですが。目を覚ますと何故かオルトさんがいて、僕たちの様子を確認すると帰って行ったのです。なので気付いた時にはベッドにフロイドと入れられていて、まあ彼のほうはまだ幸せな夢の中のようですが」
     フロイドは布団の中でうねうねと動いて、ジェイドの名を呼んで過ごしている。そういえば、ジェイドがどうなのかは知らないが、フロイドはジェイドを性的な目で見ているんだったな……と思い返して、複雑な心境になった。あそこまでしてただの兄弟だと思われているなら気の毒なことだ。もっとも、長年連れ添った幼馴染が結ばれてしまったりしたらますます複雑な心境で過ごさねばならないので、アズールからは何の手出しもすまいと決めた。
    「お前が記憶が無いなら、フロイドもそうでしょうね。僕たちはイデアさんとオルトさんに看病をしてもらったようです。何か治療薬を飲んだようですが、僕たちが揃いも揃って記憶を無くすとも考えにくいんです、イデアさん曰く、ただの風邪だったそうですからね」
    「ただの風邪、ですか。陸の病気について詳しくありませんが……普通は記憶を無くさないんですか?」
    「恐らく」
     陸に上がる時、必要な知識は一通り調べた。風邪についても知識を得ていたが、そんな厄介な病気であるという記憶が無い。それに、通常は2、3日から1週間程度は治癒にかかると書いてあったように思う。一晩寝てすっかり治りました、というのはどうもおかしい。
    「つまり……治療薬の効果ではないかと?」
    「ええ。副作用のかもしれませんね。該当する薬を探せば見つかるでしょう。お前は寮生の健康状態をチェックし、必要が有ればシフトを変更してください。お客様はもちろんですが、これ以上風邪が蔓延しても困りますから」
    「かしこまりました。イデアさんとオルトさんへの謝礼などは?」
    「それは僕のほうで手配します。なにしろ三人分の世話をして頂いたわけですから」
     アズールはそう言い残すと、部屋を後にした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💘💞💞😻👏👏👍💞👍💞💯👏👏☺☺☺☺👍👍🍆🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767