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    [龍捲風夢]トワウォ/九龍城砦 ネームレス夢小説

    わるいおとこ 階段をいくつも登り、薄暗い路地を抜けるとそこには彼の理髪店がある。九龍城砦で暮らす誰もが知っている。ここが龍城幫の龍頭、龍捲風の居所だってことを。
     龍捲風はその名前の通り全てを巻き込み、敵を容赦なく叩き潰す男なのだと、上の世代の彼の全盛期を知る人達は言う。でも、私が初めて龍捲風に会ったのはそんな恐ろしい場面じゃなくて、理髪店で真剣な顔をして客の髭を剃っている姿だった。
     鋭い目つき、サングラス越しの視線、タバコの煙をくゆらせながら剃刀を動かすその手つきは、どこか退廃的で、目を奪われるほど美しかった。彼は私よりずっと年上で、親子ほど歳が離れていると言ってもいい。怖い人だとわかっているのに、それでも私は彼に惹かれてしまった。どうしようもないほどに。
    「私、やっぱりあなたのことが⋯」
    「やめろ。俺のようなろくでもない男を選ぼうだなんて、未来のあるお前には勿体ない」
     いつもそうやって、龍捲風は茶を振る舞い、私をはぐらかす。低い声に微かな優しさを滲ませながら
    。でもその言葉は、私の胸に冷たく突き刺さる。
    「もっと若くて、まともな奴なんざ星の数ほどいるだろう。もちろん黒社会なんかに染まってない奴だ。お前の人生はまだ長い。運命の人にまだ巡り会えてないだけだからそう焦るな」
     最もらしいことを並べて龍捲風は今日も私を諭す。私にはどうしてもそれが我慢ならなかった。
    「それでも、私にはあなたしか見えないんです。あなた以外考えられない。本気です」
     私がそう言うと、龍捲風は黙ってしまった。タバコをくわえたまま、じっと私を見つめる。サングラスの奥で何を考えているのかわからない。やがて、彼は小さくため息をついて、タバコを床に落とした。足で踏みつけて火を消すと、低く掠れた声で言った。
    「仕方ない。お前、俺がどんな男かわかってないようだな」
    「え?」
    「今までに男とそういう仲になったことは?」
      突然の質問に、私は顔が熱くなるのを感じた。
    「ない⋯です」
      小さく答えると、彼は口の端を歪めて笑った。 「それじゃあ、少しだけ教えてやる。こちらへ来なさい」
     手招きする龍捲風に呼ばれるまま近づくと、いきなり手首を掴まれた。次の瞬間、私は彼の膝の上に引き寄せられ、向かい合うように座らされていた。「えっ!?」
      驚いて立ち上がろうとしたけど、彼の大きな手が私の腰に回されていて、力が強すぎて逃げられない。
    「な、なにするんですか、こんな⋯」
      身を引こうとする私を、彼はさらに強く抱き寄せた。
    「もっと脚を広げて近付くんだ。俺に体重を預けろ」
      腕を突っ張って仰け反ろうとする私を窘め、囁く声はどこか甘く、耳の奥まで響く。突然のことに頭が真っ白になって、彼の体温とタバコの匂いが私を包み込んだ。
    「サングラスが邪魔だ。外してくれ」
      私は言われるがまま震える手で彼のサングラスを外した。すると、彼の鋭い目が露わになって、初めて真正面から目が合った。その瞳は深くて、どこか寂しげで、でも底知れない力を感じさせる。息が詰まるほどだった。
    「信一からの贈りものでな、落とさないようちゃんと握っててくれ」
      龍捲風がそう言ったのは、私が手に持ったままのサングラスのことだった。私は慌てて頷くけど、彼とこんなに密着するのは初めてで、戸惑いが隠せない。
     私の腰をしっかりと掴んだまま、龍捲風は静かに、でも確信を持った声で言った。
    「お前さんが俺に惹かれる気持ちはわかる。だが、俺とお前じゃ住む世界がまるで違う。俺の手は血に汚れているし、お前はまだ世間を知らなさすぎる」
    「それでも、私にはあなたしかいないんです」
     掠れた声で返すと、彼の目が一瞬細まった。
    「恋仲というのはな、好意を伝えてそれを受け入れるだけじゃない。当然知ってるな?」
      低い声が耳元で響き、私は遠慮がちに頷くことしかできなかった。龍捲風の瞳から目が離せない。彼の視線には、強者の圧力のようなものがあって、私を小さく縮こまらせる。でも、同時にその力が私を絡め取るように引きつける。
     彼の手が私の腰からゆっくりと動き出した。指先が太ももに触れ、ジーンズ越しに往復する。焦らすような、緩慢で意図的な動き。まるで私の反応を味わうように。
    「く、くすぐったい、です」
      私が小さな声で言うと、彼は喉の奥で低く笑った。
    「くすぐったいか。本当にそれだけか?」
      その声にはからかうような響きと、どこか色っぽい余韻があって、私の心臓がまた跳ねる。彼の手がさらに太ももの内側へと滑り込んだ。爪が布の上からカリカリと引っかくたび、背筋を這い上がる感覚に息が詰まる。
     それを見た龍捲風は、口の端を吊り上げて悪い笑みを浮かべた。こんなのはまだ序の口だぞ、と囁く声は、私の耳朶を撫でるように甘い。彼の掌が太ももをゆっくりと撫で上げ、布越しでもその熱が染み込んでくる。私は膝の上で身をよじらせそうになる。
    「動くな」
      声は静かだけど、抗えない命令の響きがあって、私は反射的にピタリと動きを止めた。彼の手が私の太ももを離れ、今度は背中に回される。大きな掌が背骨の形ひとつひとつを確かめるように沿って這う感触に、ゾクゾクが止まらない。彼は私の耳元に顔を寄せ、低く掠れた声で囁いた。
    「まだ何もしてないのに、そんな顔をするんじゃない」
    「まだって⋯」
      私が言い返す前に、龍捲風の指が私の顎を掴んで顔を前に向けさせた。また目が合う。細められた彼の目には、楽しげで、どこか獰猛な光が宿っていて、それに射抜かれた私の体からついに力が抜けた。頭がぼうっとして、視界がとろんと霞んで彼へと倒れ込んでしまった。
    「おい、大丈夫か?」
      小さく笑いながら龍捲風は私の腰に回していた手を締めて、簡単に私のことを抱えて立ち上がり、あっという間に代わりに私が理髪店の古びた椅子に座らされていた。見上げると、彼がそこに立っていて、私を見下ろしている。鋭い目つきと、口元に浮かぶ薄い笑み。その視線だけで、私の心臓はまた跳ね上がった。
    「たったこれだけで腰砕けになってしまうなんてな。お嬢さん」
     彼はからかうように言う。私は慌てて姿勢を正そうとしたけど、膝がまだ震えていてうまく力が入らない。
    「でもちゃんと、サングラス持ってます、私」
      私がそう呟くと、龍捲風は私の頭に手を置いて、くしゃっと撫でた。
    「まだ邪魔だから持ってろ」
      指先が私の頬を滑り、顎の下をくすぐるように触れる。その動きに、私は反射的に顔を上げさせられた。彼の顔が近づいてくる。間近で見るその瞳は、深くて、どこか危険な色気を湛えている。
    「顔が熟れた林檎のように真っ赤だ」
     龍捲風の声で、私の頬がさらに熱くなるのがわかった。恥ずかしさで目を逸らそうとしたけど、彼の指が顎を軽く押さえたまま離してくれない。
    「逃げるなよ」
     掠れた声で囁かれ、私は息を呑んだ。
     逃げません、と小さく返すと、彼の目が一瞬だけ驚いたように揺れた。でもすぐにその表情は悪い笑みに変わった。
     彼の手が私の顎から離れ、今度は私の唇のすぐ近くまで近づく。でも、触れない。指先が唇の輪郭をなぞるように動くだけで、私は背筋がゾクッとする感覚に襲われた。彼の顔がさらに近づき、吐息が私の頬にかかる。唇が触れそうな距離で、彼は一瞬動きを止めた。
    「まだ早いか」
     小さく呟き、目を細めて私を見下ろす。その視線に、私は息をすることさえ忘れそうだった。
    「口付けはお前に運命の人が現れるまで取っておけ」
     そう言うと、龍捲風は突然私の口を手のひらで塞いでしまった。そして、その手の表面に彼の唇が触れる。私も彼の手に唇を押し当てる形になった。もちろん直接じゃない。ただ、彼の手を挟んで唇が触れ合っているだけ。それなのに、彼が何度も角度を変えて口付けの真似事を繰り返すたび、私の頭がクラクラした。息ができない。頭の後ろに回された彼のもう片方の手が、私を引き寄せて離さない。本物の口付けじゃないとわかっているのに、彼の人間らしい吐息と鋭い視線が近すぎて、錯覚してしまうほどだった。
     龍捲風の手が私の唇から離れると、私はようやく息をつけた。彼の見下ろす視線に捕らわれたまま、私は椅子の上で小さく縮こまるしかなかった。彼は私の頬を指先で軽く撫で、新しいタバコを取り出して火をつけた。紫煙を吐き出しながら、低く笑う。
    「もう息が上がったか?これが本気ってなら可愛いもんだな」
     たった一言だけを残して、龍捲風は私に背を向けた。私はただ、彼の背中を見つめるしかできなかった。
     心臓の鼓動が、まだ収まらない。
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