定位置 のんびりと時が進む休日、滅多に取れない愛しい時間を過ごすために、リョータは通い慣れた恋人の家に訪れていた。
「ねえ深津サン?」
少し気まずげに身じろぎしながら、おずおずと声をかける。
しばらく会えなかった後の逢瀬では、深津は必ずと言って良いほど、リョータを膝の上に乗せて時間を過ごす。始めの方こそ、筋肉の付いたゴリゴリの男同士でやることじゃ無いと抵抗していたリョータだったが、あまりにも本気の眼でじいと見詰めてくる深津に折れて(恐怖して)、今ではそこが定位置であると言っても過言では無い。
「…あー、そのさァ…」
「はっきり言わないと伝わらないピョン」
ハッキリと縁取られた瞳が所在なさげにゆらゆらと揺蕩う。花も恥じらう乙女の如きその仕草は、リョータのエキゾチックで色気のある容姿とミスマッチで胸の内を煽られる。深津が、膝にちょこんと座るリョータをわざとらしく覗き込めば、じわと頬に薄桃色が滲み出す。
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