愛せば融けて ふと時計を見るといつの間にか十時を回っていた。
そろそろ帰ってくる頃だろうか。じいと見つめあっていたブルーライトのノートを閉じ、凝った筋肉を伸ばしてやる。三十近くにもなると長時間同じ体勢で一点に集中すると精神よりも身体が悲鳴を上げ始めて、労らない事には仕方がない。
飲み干した湯呑みを下げ割らないよう優しく洗い、逆さにして音が立たないようにラックに乾かす。
まだ余力を残してのプロ引退後、決してロマンチックな形ではないけれど愛する恋人と同棲する運びとなって早数週間。なかなか主夫が板についてきたのではないだろうか。元より人の面倒を見るのが得意な質であるのが遺憾無く発揮されている。
「まだ起きてるぴょん」
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