「かお、見たい」
投げかけられた言葉に返す言葉が見つからない。
沈黙した私に、ロナルド君がさらに言葉を続ける。
「お、俺だって、お前の…声聞きたいし、顔、見たい。お前ばっかりずるい。」
そう言われてしまってはぐうの音も出ない。
とうとう言われてしまったか、というのが正直なところだ。
声聞かれたくない、顔見られたくないと言うロナルド君を宥めてすかして事に及んできた。
可愛い、上手、いい子、愛してるよ。
言葉をかければかけるほどに蕩けていくロナルド君はそれはそれは可愛くて。
達する時の顔なんて、それはもう。
その裏で自分はと言えば死にやすいのを言い訳にしてバックで果てるようにしていた。
──あの時の顔なんて見られたくない。
それが正直なところだ。
ロナルド君には散々顔を見せろだの声を聞かせろだの言い続けてはきたが、それはほらなんというか私の特権だろう?
この美しい顔が快楽に歪んでいく様、そしてそれを与えているのが自分だという事実に、これ程畏怖欲が満たされることがあるか?(いや、ない)
「今日はバックじゃしないからな。」
「……見ても楽しいものじゃないよ。」
「お前が決めることじゃねぇだろ、。」
うーん。困った。
今になって特大ブーメランが返ってくるとは。
「俺だって。」
「うん?」
「俺だって、俺がお前を気持ち良くしてるんだって、思いたい。」
温かい手のひらが、私の頬を撫でる。
少し下がった眉尻と、甘く垂れた眦。
見上げてくる少し潤んだ青い瞳。
──あぁもう可愛いな!
「…後悔しても知らんからな。」
「しねぇよ。」
「じゃあキスして。」
ん、と少しだけ舌先を覗かせて、ロナルド君が両手を広げる。
招かれるように覆いかぶさり、甘い甘い口付けを堪能する。
少し硬度を失っていた私はロナルド君の中ですぐに硬さを取り戻した。
ゆるゆると腰を動かせば、塞がれた唇の隙間から甘い声が漏れる。
「……動くよ?」
小さく頷いたのを確認し、動きを速めていく。
大きく、小さく、鋭角に。
絶え間無い刺激にロナルド君の首が仰け反り、甲高い声が上がる。
──あぁ、もたん。
間もなく達しそうだと言うのに、それでも顔を見られたくないというどこか冷静な自分。
ロナルド君の体を折り曲げ、奥の奥を抉るように突きながら首筋に顔を埋める。
「ロナルド君…ロナルド君。」
上がりきった呼吸の合間、ただただ名を呼んだ。
普段なら気持ちいいかい?とかもっと声聞かせてとか、甘い戯言を吐いているはずだ。
だが今は他に言葉が出てこなかった。
最愛で、一番大切な音だけが溢れた。
美しい瞳が、私を見つめているから。
「ごめ……もう。」
擦れ合う粘膜の熱に脳が溶かされていく。
「ちゃんと見せろ。」
指を絡めて繋いでいた両手を押され、私の体がもちあげられる。
「ロナっ……!?」
「……めっちゃ気持ちよさそうだな、お前。」
「〜〜〜!!ああ!気持ちいいとも!」
「……良かった。」
嬉しそうに綻んだ顔。
「すげぇ、嬉しい。」
眦からこぼれた涙。
舌先でその涙をすくい取り、こくりと喉を鳴らしたその後は、顔を見られたくないだのそんなつまらないプライドは消え去って、
「ロナ……っ!」
ただただ夢中で体を繋ぎ、そして二人で果てた。
「……満足か?」
ぜぇぜぇと荒い息のまま、スキンを処理してロナルド君の逞しい体にダイブする。
ちゅ、ちゅ、と軽いキスを繰り返しながら呼吸がおさまるのを待つ。
「すっげぇエロかった。」
「……君、本当に性癖歪んだな。」
「うるせぇ……でも。」
「ん?」
「お前が俺に顔見せろとか声聞かせろとか言うのが何でか分かった。」
「……ふん。私のは君のと違ってそんなにいいものではないだろう。」
「そんな事ねぇよ。」
拗ねんなよ、とロナルド君が汗で張り付いた私の前髪をそっと払う。
拗ねとらんわバーカ、と私もぐちゃぐちゃになったロナルド君の髪をなでつける。
視線が絡んだらキスをして、唇の温度がイコールになったらそっと両手の指を絡めて。
汗で体はベタベタだけど、このまま微睡むように眠るのもいいかな、と思っていた矢先、とんでもない言葉が聞こえてきて思わずざらりと死んでしまった。
「なぁ……もう一回、ダメか?」