ぽたり。
汗が落ちた。
暑い。
息が、あがる。
運動らしい運動などした事はなかった。
それを成し遂げる筋力も、耐えうる体力もないからだ。
見ろ、この細腕を。
およそ努力だとかは無縁だと見て取れるだろう?
なのに今、衝動を抑えられずにいる。
もっと、もっとと欲望が鎌首を持ち上げている。
眼下の絶景。
筋骨隆々とした美丈夫が、無様に泣いて、喚いて、乱れたシーツを握りしめている。
ぽたり。
垂れた汗は筋肉の谷間へと吸い込まれ、じわりと広がり少しばかり煌めく。
自分にこんなに体力があったとは。いや、気力かな?
指先で汗を混ぜ合わせながらそんな事をぼんやりと考える。
これも愛のなせる技か、なんて古臭い言い回しがふと浮かび、そうか、愛か、と一人納得する。
掠れた声が名を呼んで、シーツを離した手が私のシャツを掴む。
控えめにシャツを引くその仕草に、思わず口元がゆるむ。
可愛い、なんて言葉はおよそ大の男に向かって吐く言葉ではないけれど。
可愛い、愛してるよと囁けば、蕩けた瞳がへにゃりと笑って。
しんどい事はしたくない。
きつい事なんて以ての外。
けれど、でも。
この笑顔を見る為ならば、そっくり返上してしまえるな。
震える唇にそっと口付けて、愛してるよともう一度囁いた。