「ば……っかやろ。」
「だって届かないでしょ?」
キッチンでのあれやこれやの後、腹の中を綺麗にするという名目で風呂に入った……はずなのに。
「だからってなぁ、挿れる奴がいるかよ!」
「ここにいるが?」
ぐる、と腰が周り、ぐり、と腹の中が掻き回される。
「……っ!」
最初は指だった。
広げられた後ろから、生温かいどろりとしたものが垂れ、湯気の満ちた風呂場に雄の匂いが立ち込めた。
それだけでもどうしようもなく腹の奥が疼いたのに、
──一番奥でだしちゃったからなぁ、指だと届かないねぇ。
なにほざいてんだ、と言いかけたところを圧倒的な質量で貫かれた。
ついさっきまで交わっていた体はすんなりとそれを受け入れ、残滓が混ざり合うぐちゅぐちゅというという音にキッチンでの記憶が蘇る。
「ちょっと失礼。」
軽い一言の後に、くぼん、と奴の先端が最奥に潜り込む。
「!?!??」
抗議の声を上げようにも、目の前はチカチカして唇が戦慄くだけ。
「息して。」
細い指が震える唇をそっと撫で、
「こっち向ける?」
促すように顎に沿う。
無理矢理体を捻れば、
「いい子。」
と唇が重なり、ぬるい息が吹き込まれる。
重なった唇の隙間から唾液がこぼれ落ちるのも気にせず貪るように酸素を求めた。
その間も腹の最奥は絶えずかき混ぜられ、甘く、やわく脳髄が痺れていく。
「愛してるよ。」
「……!」
低く囁かれたその言葉に、体が素直に反応する。
びくんびくんと震える体の奥は、新たに吐き出された情欲を、まるで奥へ奥へと引き込もうとしているように──吐き出した侵入者を離したくないとでもいうようにきゅうきゅうと蠢いた。
「んっふふ。可愛い。私の声、好きだねぇ?」
「……お前、掻き出してる最中に出すやつがいるかよバカヤロ……。」
「ああ、ごめんね?だって君があんまりにも可愛いから。」
「言ってろよ。ほらもう抜けよ。お前に任してたら終わんねぇ。」
「えー?君の中、まだまだ私が欲しそうだけど?」
「は?」
ぐ、と腰を押し付けられて、咥えこんだままだった先端が、達したばかりで敏感な奥を軽く小突いた。
「……っ!」
たったそれだけでも体が仰け反った。
「……バッカヤロ、今、お前っ!」
「うんうん。」
「抜けって!」
「本当に?」
弱く、小さく動いているだけなのに、イクのが止まらない。
けれど自分からは何も出ず、その事実にまた、腹の奥が締まる。
「可愛いねぇ。」
くったりとした俺の前をやわやわと弄びながら、ドラルクが楽しそうに笑う。
「奥が、気持ちいいんだ?」
背中、肩、首筋。
少し熱を帯びた唇が順に這い上がり、
──私の、ロナルド君。
そんな声で、そんな言葉を囁かれたら。
「……っ!っ!!」
何度目かはもう分からない、でも他の追随を許さない程の絶頂に、目の前が一瞬真っ白になる。
「ロナルド君、ロナルド君大丈夫?」
心配そうな声に引き戻されて、浴槽の縁に倒れ込む。
荒い息をどうにか抑え、ふぅ、と一つ大きく息を吐いた。
「テメーのせいだろ……って、お前また出したのかよ!?」
「いやだってめっちゃ気持ちよかったんだもん。」
「だもんじゃねぇたろ!なにオッサンがかわい子ぶってんだよ!」
「私は可愛いが?」
「鏡見ろっつってんだよ!あぁもういいから抜けよ!自分でやる!」
「それはそれで見たい。」
「今すぐ殺されて排水口に流されてぇのかよテメェはよ。」
「オッケージョークジョーク。」
ずるりと長いものが引き抜かれ、なくなった圧迫感。
「うわ……めっちゃエロい。」
「は!?何が!?」
「内緒。」
「コノヤロ…っ!」
「ん?どうした?」
拳を振り上げかけたまま固まった俺に、ドラルクが怪訝そうな顔をする。
「どこか痛むのか?」
「……レ。」
「ん?」
「トイレ!」
涙目だろう俺の顔を見て察したのだろう、ドラルクが視線を逸らす。
「あー……ほんと、ごめん。」
「後で覚えてろよ!」
気合いでトイレに駆け込んで、今日一番の戦いをした。
***
「だからごめんって。」
「……。」
浴槽の縁にタオルを置いて首を預け、ふん、と目を閉じている。
ドラルクは俺の髪を洗いながら、何度も謝罪の言葉を口にするが無視を決め込んでいる。
「唐揚げ作ってやるから機嫌直せ。」
ちょっとだけ心が揺らいだが、唐揚げだけで許せるほど俺の心の傷は浅くない。
何しろ大変だった。
マンガに出てくるような擬音語が、これでもかと腹から鳴り響いた。
こうならないために風呂に入ったはずなのに、追い打ちをかけられたんだ。
俺は悪くない。
暫く悶絶していたら、抵抗しているのに抵抗なくどろりと……その、あれだ、アレが出た。
体温と同等の熱を持ったアレが出ていく感触は筆舌に尽くし難い。
その後に起こった雪崩。
あらかた出し終えた後、急に寒くなって(素っ裸だから当然といえば当然)急いで風呂に戻った。
それからこんな風にドラルクに奉仕されている。
「ねぇ。」
シャワーで泡を洗い流し、なんか髪がツヤっとするやつを塗りたくられる。
いい匂いすんな、これ。
「バナナフリッターも付けるから。」
「……さっき」
「ん?」
「な……何がエロかったんだよ。」
決してバナナフリッターに釣られたんじゃない。
こいつの「内緒」が気になっただけだ。
「あー……怒らない?」
「これ以上はな。」
弱い力でヘッドマッサージをした後、シャワーで髪を洗い流す。
軽く髪を搾ってふわふわのタオルで髪をくるんだ。
「君から私を抜いた時にね。」
続けて指にクリームを取り、俺の顔に何ヶ所かクリームを置いて、触れるか触れないかのソフトタッチで指を滑らせる。
「普段はぴっちり閉じてる後ろがね、ぱっくり開いてたんだ。」
変な声が出そうになった俺の顔を、赤い瞳が覗き込む。
「綺麗な赤い粘膜と、私が出した白で……。」
「もっ、もういい!」
いたたまれなくなって暴れそうになった俺の唇を、ドラルクのそれが覆う。
「んぐ……?」
ゆっくりと離れた唇。
見下ろす赤い瞳。
「……堪らないね。」
「……!!」
熱を帯びた瞳。
そんな顔見せるのは、いつもベッドの中。
──くっそ、堪らないのはどっちだよ!!
「……おや?」
「……なんだよ。」
「んっふふ、それ。」
「は……?」
指をさされた方に視線を動かす。
その先にあったのは──。
「!?!??!!」
「元気だねぇ?」
くすくすと笑いながら、クリームをタオルで拭い、浴槽から逃げ出そうとした俺を細い腕が拘束する。
離せと言いかけた唇は塞がれ、舌が容赦なく絡む。
「……ね、続き、する?」
離れた唇が発した言葉に耳を疑う。
「何だよお前今日どうした!?おかしくねぇか!?」
「うーん、何だかまだまだ出来そう。特殊シチュのせいかな?」
「何だよそれ……。」
「んっふふ。」
「?」
「拒否はしないんだ?」
楽しそうに細められる瞳に、返す言葉が見つからない。
「準備してるから温まったら上がっておいで?」
そう言い残して扉の向こうに消えた背中。
あの背中に、また。
そんな事を考えると、腹の奥がまた疼く。
期待、してるのか?
もう散々したというのにこの上?
「……。」
いや、アイツは雑魚だから、風呂から上がったらやっぱり無理とか言うかもな。
まぁでも一応。一応な。
シャワーを手に取りヘッドを外す。
その時聞こえて来た言葉にシャワーとヘッドの両方を落とした。
「ねぇ、ベッドと棺桶、どっちがいい?」