「ようやく会えましたか」
「…話には聞いていたが、どうやら虚偽ではなかったらしい」
「えぇ、貴方が避けるばかりでしたので。かくいう私も、今こうして目の当たりにしても信じ難いと思っているんですよ」
「抜かせ、お前に理解できない筈がない。まずはその張り付けた様な笑い方をやめたらどうだ?」
「……よく似ていますからね」
「ッ!人の琴線に触れるのがお好みらしい…!」
「分かりやすくて助かりますよ」
「お前は何故恨まない?何故疑問を持たない。何故この世の理不尽さを憎まない」
「…確かに彼の死は私にとって非常に惜しいものでした。けれどそれ以上に、彼との約束を果たさねばと思ったまでです」
「あの出来損ないとの約束なんかに何の意味がある?」
「意味を持たせるのは私であり貴方の行動ですよ」
「…何故死ななければならなかった」
「彼は人を守るために他者を蹴落とす事を選べなかった。それだけです。誰かが悪かった訳ではありません」
「あんなに優しい人ばかりが!憎まれ恨まれ誰より早く死にゆく事が正しい事だと宣うか!」
「この世は元より理不尽ですよ。いい加減子供の癇癪の様な態度はお止めなさい」
「どうして分からないんだ…!」
「分かっているんでしょう?」
「分からない筈が、無いだろう…」
「えぇ、よく似ていますから。私たちは」
「最悪な気分だ、どうやっても、理解はし難い」
「…えぇ。…諦め、達観し、放棄し、仕方無いのだと見過ごす事が、正しい筈がありませんから」
「……もう、いい。散々だ」
「…どうか彼女等には恨みを向けることがないよう。誰も悪くないんです、…貴方の言う通り誰もが悪かったんです。ただ、これだけは──」
「罪だと言うんだろう?今や存在そのものが、だ。…数多の亡骸の上に現在が在るのだと。」
「…よく覚えておいでですね」
補足
・フェイの笑い方は父によく似てる。
・フェ→父「紛うことなき善人だった」「強かではなかったが芯のある人」
あの人の死を「仕方が無かった」と片付けた。
終わった事だし戻りやしないし、なら自分が動かねばならないだろう、彼の死まで無意味にはしておけない。
・異フェ→父「優しいが脆弱」「愚か」
あの人の死の理由を考え続けている。何故死ななければならなかったのだろうか。彼の死はあまりにも無意味過ぎただろう?そんなものを肯定出来るはずもなかった。