ごめんね葉流ちゃん!「カンボジアの彼女さんは清峰先輩のこと怒ったりしないんですか?」
兄に似ながらも若干幼さを残す顔立ちの後輩に尋ねられた。部活が始まる前の部室で、突然。思わず着替え途中だった手がぴたりと止まる。
圭が葉流火と交際を始めたのはつい先月からだ。仲の良い友人たちにはおいおい報告していこうと話していたにも関わらず、次の日には部員全員に知れ渡っていた。
「圭と付き合い始めたからよろしくって、部室で顔を合わせるたびに新年の挨拶の如く伝えてきたよ」
山田の言葉に自分の顔がギラで焼き払われたかと思うほど熱くなった。たぶん葉流火も浮かれていた。今ならそうわかるのだけれど。
――はあ〜〜。
屋上に大の字で寝そべりながら長く深いため息を雲一つない青空に向かってつく。いつものメンバーがたまたま全員用事があって一人寂しく弁当をかっこんだ昼のことだった。
7045