ごろごろごろごろごろ。
そう聞こえて来てもおかしくないな、と。
隣で寝転ぶ毒気の抜けた寝顔を眺めながら、上条当麻はそんなことを思った。
昼下がりであった。窓から差し込む木漏れ日が、静かに寝息を立てる恋人の輪郭をやわらかくなぞる。薄く開いた唇からは規則正しい吐息が漏れ、時折小さく身じろぎすると、ふわりと髪が揺れる。
上条は枕の上に肘をつきながら、その光景をぼんやりと眺めていた。
安心しきった表情、ゆっくりと上下する胸、わずかに丸まった指先。いつもなら影のある眉間には、今はシワ一つとして寄ってない。
そっと手を伸ばせば、触れることができる。けれど起こしてしまうのが惜しかった。
聞こえてくる寝息がひどく耳に心地いい。ごろごろと喉を鳴らしてるように思えて仕方がない。例えるなら、そう。猫が甘える時のような。
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