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    秋夜ゆん

    @yun_rvln

    進捗報告用です。主にリバリン。ケツ叩いてください…

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    秋夜ゆん

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    支部の続きから。長いけど、ここまで書いてますので褒めてください_(:3 」∠)_

    #二次創作
    secondaryCreation
    #リバリン
    rivarin

    騎士と戦士進捗 ウルボザ、ミファー、ダルケルに伝令を済ませ、ようやくリーバルの元を訪れる。リト族へきびきびと指揮していたリーバルはリンクの顔を見た瞬間怪訝そうに眉を寄せたけれど、いつもの事だと気にせずハイラル王の無事と伝令を告げた。
     その間、お喋りなはずのリーバルは顔を顰め、隣に立つテバも片眉を引き上げてリンクから視線を外そうとしない。翼で嘴を隠し、ヒソヒソとリーバルに何事かを囁いていた。

    「……伝令はそれだけかい?」

     リンクが口を閉じたのを見計らってリーバルが言う。頷けば、ようやくかとリーバルは翼を広げてみせた。

    「ついに厄災を討つわけだ。待ちかねたよ。……それより、テバ」
    「ええ。人払いと、ゼルダ姫に伝令を遣わせましょう」
    「うん、任せたよ」

     リンクには分からない短い会話の後、すぐさまテバが飛び立った。空の上でリト族へ指示している様を横目で追って、伝える事は伝えたのだからリンクもゼルダの元へ戻ろうと踵を返す。
     まだ会ってから時間は経っていないはずなのに、まるで長い時間連れ合った師弟のように言葉が少なくともリーバルの意志を汲み取ったテバ。初めて会った時には二人が並んでいるだけで痛んだ胸が、今は不思議と凪いている。
     それよりも、早く厄災を討たなければという衝動の方が大きかった。早くゼルダの元へ戻って、まだ残っているだろう魔物の残党を始末しなければ。ゼルダに危険が及ぶ前に。
     そう、ゼルダに危険が及ぶ前に、魔物を始末するのだ。どこへ逃げようと隠れようと決して逃さない。矢を放って足止めをし、喉笛を掻っ切って胸の中心に剣を突き立てよう。
     何体いようが、大きかろうが小さかろうが関係ない。厄災を封印できるのはゼルダだけなのだ、そのゼルダに危険が及ばないように。ゼルダを護る事がリンクの使命なのだから。
     早く、戻って魔物を始末しなければ。早く魔物を屠らなければ。
     早く、早く。魔物を、殺さないと。

    「待ちなよ」

     ふいに心地の良い低音が耳へ届く。振り返れば、リーバルが垂直上昇で空へ飛び立ち、彼の起こした風がリンクへと吹きつけた。目も開けられないような力強い風は髪も服もさらっていく。
     それはあまりにも冷たく澄んで清々しく、赤黒く染まり脳内へしがみついていた思考までもが吹き飛ばされて、目の前がぱっとひらけた気がした。
     空を優雅に一回りしたリーバルはこちらへ近づいてきたかと思うと、急降下して脚の鉤爪でリンクの肩を掴む。
     瞬時に、背中の剣へ伸びた手。相手はリーバルだと分かっているのに戦闘態勢に入ろうとする体を抑え込もうとするが、上手くいかない。剣から手を離そうとすればするほど強く柄を握りしめてしまう。
     そんなリンクにリーバルはフンと鼻を鳴らす。

    「へえ、剣を向けるのかい。君が、僕に?」
    「!」

     リーバルの声を聞いた途端すっと手から力が抜けた。慌てて剣から手を離すと、リーバルはそのまま力強く羽ばたいて空を舞う。ぎゅっと鉤爪に力が込められているが、肩に痛みを感じる事はない。
     滑空するのではなく、風に乗って空を飛ぶという感覚は初めてでリンクは思わず息を呑んだ。空を飛ぶというのはこんなにも清々しいものなのか。ぐんぐん雲に近づき突き抜け、透き通るような青い空が目に飛び込んだ。
     リーバルは何も言わないままヴァ・メドーへと降り立つ。制御装置付近に下ろされたリンクは肌を突き刺すような寒さに身を震わせた。
     寒いけれど、メドーはとても息がしやすいと思った。すうっと大きく息を吸えば冷たい空気が肺に落ち、意識がぴんと伸びた糸のように引き締まる。視界がとても広く明るく感じて、先程までの状態はやはり良くなかったのだと改めて気づく。
     顔を上げると、広がる空はどこまでも高くて鮮明で、厄災が復活する前と変わらずそこにあった。そんな事に気づく事もできなかった。あんなにも早くゼルダのところへ戻りたいと考えていたのが嘘のように、このままメドーに乗っていたいと思ってしまう。

    「!」

     突然ばさりと視界が覆われて体が大きく跳ねた。反射で剣に伸びそうになった指先は、体を覆う柔らかいものに触れて止まる。そのまま握って引っぱれば、するりと布が頭から落ちた。滑らかで手触りのいい布は優美で力強いリトの紋様が描かれていて、思わずリーバルの方を見た。
     リンクより少し離れた場所で腰を下ろしたリーバルは見覚えのある手入れ道具を取り出し、オオワシの弓を背中から下ろしながら、こちらへ視線を寄越さないまま嘴を開く。

    「時間がないんだからさっさと寝なよ」
    「寝、……?」
    「気づいてなかったんだ? 敵味方関係なく殺気振りまいて、無鉄砲で考え無しの猪突猛進野郎になってるのはわざとじゃなかったんだねぇ?」
    「……あ、」
    「もしかして、自覚していてその状態だったのか? 本物の馬鹿だね。姫だって、僕より先に会ってきたアイツらだって気づいてただろうに、何も言われなかったのかい?」
    「いや、いろいろ……言われた……」
    「なのにその状態か。退魔の騎士殿がここまで大馬鹿野郎だったとはね」

     心底呆れたと言いたげにため息をつかれ、リンクは居心地悪く布を握りしめた。
     ミファーに「リンク、大丈夫だよ。大丈夫だからね」と手を握られ、ダルケルに「あんまり無茶するなよ、相棒には俺がついてるからな!」と頭をぐしゃぐしゃにされ、ウルボザに「まったく、決戦前だからってちょっと落ち着きなよ。おひい様を困らせてないだろうね?」と背中を思いきり叩かれたのは、そういう事だったのか。
     理解してしまえば、ゼルダの命令の意図にもようやく気づく。ゼルダにも、きっとインパにも迷惑をかけてしまった。厄災を討つ直前なのに。
     体の異変に気づいていながらも放置した結果がこのざまだ。自分が情けなくて、大きく息を吐く。自覚してしまえば、急に体が重く感じる。

    「……周りが、見えすぎてて。調子が悪いわけではないから、別にいいかって」

     ぽつりぽつりと、走馬灯のようなものを見てから変に周りが見えすぎているのだと言い訳をした。あのライネルさえもリンク一人で倒せるほど、魔物がどう動くのか、自分がどうすれば、どう動けば確実に魔物を倒せるのかが見えていたのだと。それを好調と捉えてしまうのは危ないと分かっていたけれど、どうしてだか抑えられなかったのだと。
     リンクの言葉を静かに聞いていたリーバルは、はーーっと深いため息をついた。

    「要は、命の危機に瀕して体が限界なんだろ。それをハイリア人は覚醒と呼ぶのか、暴走と呼ぶのか知らないけど。姫が君に伝令を頼んだのも、親しい奴の顔見て頭を冷やせって指示だろうさ。それを察する事もできないでただ周りに殺気振り撒いてるなんて、本ッ当に愚の骨頂だね。全く、いい迷惑だ」

     言葉は強いけれど、リーバルの声は心地良い。極度の緊張状態から解放されたためか、リーバルの言葉は意味を理解する前に頭から抜けていく感じがする。リーバルの声だけが頭に残って、なんだか意識がふわふわする。瞼が重くて、ごしごしと目を擦った。
     目を開いた先にはリーバルがいる。ちゃんと、リンクの目の前にいる。その事に、どうしようもなく安心した。

    「早く眠って回復しろ。それとも、僕と話をつけるかい?」
    「話、……」

     ぼんやりと口篭るリンクを放って、リーバルは念入りにオオワシの弓を手入れした。ふわふわの翼が力強く弦を引き、弦の張り具合を調整する。何度か弦を引いて弾くを繰り返し、一つ頷いたかと思えば、小さな布を取り出して油を染み込ませ、弓柄を丁寧に拭き上げる。
     数度拭いては頭上に掲げて具合を確かめ、また弓へ布を滑らせる。大切なものを扱うように、大きな羽先はきめ細やかな配慮を持って弓を持つ。いいなと、心の底から羨ましく思った。
     リーバルがオオワシの弓を大事にしているのは彼と出会った時から知っている。あの小さな家の中でも、こうして弓の手入れを欠かさなかった。怪我をして空を飛べない片翼でも、丁寧に丁寧に、時間をかけて手入れしていた事を覚えている。
     いいなと、羨む。リンクはもうリーバルに触れてもらえない。小さな家の中では、時に気さくに、時に慈しみを持って大きな翼はリンクに触れていた。その翼に包み込まれて、これ以上ないほどの幸福を感じた事もある。
     けれど、その翼はもうリンクに触れない。リンクから手を伸ばしても届かない。近くにいるのに、リーバルが遠い。ぶるりと、寒さを感じて体が震えた。
     触れてほしい。撫でてほしい。できれば、抱きしめてほしい。リーバルの翼の温かさを、体が、心が求めている。

    「……どれだけ待てばいいんだよ僕は。で、どうするんだい?」

     呆れたようなリーバルの声にはっとする。リーバルと話している最中なのに、ぼんやりしすぎた。
     睨むように寄越された視線に促されるまま口を開いて、話をしようと言おうとした、のに。

    「さわって、……ッ」

     思わず口を抑えた。こぼれ落ちた本音。違う、言いたかったのはこっちじゃない。
     おそるおそるリーバルを見ると、盛大に顔を顰め、翡翠は冷たく怒りの色を湛えている。全身に冷水を浴びたかのように血の気が引いた。ああ、やってしまった。

    「ハァ? ようやく口を開いたと思ったら何だそれ。今更、捨てた男に縋るのか」
    「いや今のは、……ちが、わない、けど……」

     捨てた、という単語が一瞬引っかかるが、それよりもリーバルの怒りを抑えなければ。どう説明したものかと困った顔をするリンクにリーバルが嫌そうに吐き捨てる。

    「フン、お断りだね。そんなに尾羽の軽いように思われていたなんて心外だ。他を当たれば? 例えば、そうだな、君を慕っているシドあたりか?」
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