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    kurusaki

    神父と淫魔(夢魔)という設定の南扶と风情のファンタジーAU?をまとめてます。
    ナンバリングは時系列ではなく書いた順。
    なかなかのOOCなので、何でも許せる方向け。

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    kurusaki

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    南陽神父兄弟と玄真淫魔兄弟の話。
    ※OOC なんでも許せる人向け

    時系列では№12の次の話

    神父と淫魔 №15 コンコンコンと教会内にある書斎の扉を叩く音がする。
    「入って良いぞ」
     ノックの仕方で南風と分かっている風信が大きな机の前で座って読んでいた新聞から顔を上げた。
     扉を開いてたくさんの封筒を持った南風が入ってくる。
    「兄さん、郵便物」
    「ありがとう」
     受け取って封筒に書かれた差出人の名前を見始める。
    「それと、これ……」
     南風は一通、毛色が変わった封筒を眉尻下げながら差し出した。
     受け取った風信は封筒の裏を見る。
     何の模様も入っていない黒い封蝋印。
     風信は一度目を細めてから、封を解いて中に収まっていた手紙を取り出した。
    「兄さんそれ……」
    「…………」
     難しい顔をして手紙を読んでいる風信に南風は不安を感じた。
     ややあって、読み終えたであろう手紙を破りだした。
    「兄さん!?」
    「たいした事は書いてなかった。お前が気にする必要はない」
     本当にたいした事がない内容ならわざわざ破る必要は無い。
     読み終わってからの風信の顔は随分不機嫌な様子だ。
    「南風?」
    「うん。なんでもない」
     南風の様子に風信は小さく息をついた。
    「何かあったらちゃんとお前に話すから、そんな不安そうな顔をするな」
    「俺そんな顔してる?」
     風信は立ち上がって南風の頭に手を置いた。
    「そんな顔をしてるから言っているんだ」
     南風の頭をかき混ぜるように撫でる。
    「兄さん! 髪が崩れる」
     南風が笑いながら風信の手を剥がそうとするが、南風の力でどうにかなる訳がなかった。
     風信の手は大きくて力強い。
     そして傷だらけだ。
     黒い封蝋印が神父ではなく祓魔師の兄へに宛てたものである事を南風は知っている。
    「またどこかへいくの?」
    「いいや、そういう手紙じゃないから本当に気にするな」
     本来ならいくら弟でも南風に自分が『祓魔師』だとは言うものではないが、風信は南風を信用して話してくれている。さすがに祓魔師としてどこかへ行く時、場所や内容は教えてはくれないが。
    「…………」
     南風が眉じりを下げているのをみて風信は笑って
    「どうしても考えてしまうなら、俺の事じゃ無くて扶揺の事でも考えておけ」
    「なんでここで扶揺がでてくるの」
    「好きなやつの事を考えてたら不安なんて無くなるだろう」
     南風は風信の意図が分かっていないらしく『?』が見えるような不思議そうな顔をして首を傾げた。
     祓魔師の殺伐とした気持ちになりがちな風信の心を癒やしてくれる可愛い弟は聡いが鈍いらしい。
     とはいえ、お相手である扶揺も自分が好かれているとは気付いてない様子なので、南風の気持ちに気付いているのは自分だけかもしれないと風信は内心苦笑した。
    ――慕情は気付いているとは思うが……――
     だが、あいつはあいつで大概に鈍いと思い至り、だからと言って自分も色恋については疎い方だ。
     誰も彼もなんとも焦れったい話だろうと他人事の様に思う。
    「ちょっと考えたいことがあるから一人にしてくれ」
     風信がそう言うと、南風はまだ何か言いたげだったが、結局は「わかったよ」と言って出て行った。
     扉が閉まるのを見送って、風信は再び椅子に座り足を組んで背もたれに体重を預けると右手で顔を覆って盛大にため息をつく。
    ――思ったより早く勘づかれたな――
     自分の思惑通り事が進んでいないことにもどかしさを感じながら、さてこれからどうしたものかともう一度息をついた。



    「慕情!」
     またか。と慕情は内心舌打ちをした。
     場所は人気の無い路地。目立つような行動はしていないはずなのに、獲物を見つけかけるとなぜか風信が現れて邪魔をする。
    「これはこれは神父様、毎度毎度どれだけ暇なんだお前は」
    「途中から口調が変わってるぞ」
    「わざとだ、嫌味にも気付かないのか」
     いかにも嫌そうに顔を歪めている慕情に風信はせっかくの整った顔立ちが台無しだなと思った。
    「私はお前のように暇ではない。じゃぁな」
     風信に背を向けて払うように右手を振り去ろうとしたのに、風信はその手首を掴んで引き留める。
    「俺だって暇じゃない。手が足りなくて南風に手伝ってもらってるくらいだ」
    「威張る事か! 忙しいならさっさと行け」
    「そうはいかない」
    「はぁ?」
    「男のケツ追っかけ回してるお前を放ってはおけない」
    「ケっ……お前……っ!」
     風信の言葉に頭に血が上る。いっそ屈辱を感じてあまりの怒りに言葉が出なかった。
     だが、実際の所獲物を見定めるために就けているのだから風信の言い方はともかく、あながち間違いではない。
     慕情は息を吸ってゆっくり吐いてから、風信を睨み付ける。
    「もし、お前の言うとおりだったとしてもお前にはなんの関係もないことだろう」
    「関係は、ある」
    「何を言っている」
    「お前が目的を果たしたら、俺は知らない振りをしてやれない」
     慕情は思わず息を詰めた。
     随分ぼかした言い方だ、それをどう捉えるのが正しいか慕情の頭の中で風信の言葉が巡る。
    「目的? 私が誰とどうなろうがお前に口出す権利はない」
    「権利はある」
    「な……っ」
     握られていた手首を引かれ、もう片方の手で上腕を強く掴まれてその痛みに慕情は顔を歪める。
    「思いだせ慕情」
    「何を」
    「言えない、俺からは言えないんだ。だから」
     苦しさを吐き出すような声に慕情はその腕を払いのけて
    「訳の分からないことを言うな!」
     と怒鳴りつけ、風信の胸を突いた。
     少し離れはしたが、手首を掴んでいた手はまだ握られたままだ。それに舌打ちをして手首をひねり、風信の手から逃れる。
    「お前が何を考えて何が言いたいのか知らないが、お前の都合を私に押しつけるな」
     冷淡な物言いに隠す気も無い怒りが含まれてる。
     何か言いたげでどこか悲しそうに見える風信の視線を振り切って、慕情は風信とすれ違い表通りへ歩いて行った。
     風信は振り返りもせず、ゆっくりと慕情の手首を掴んで居た手を握る。
    「俺はお前を死なせたくない」
     俯いて、そう言えば伝わったのだろかと考える。
     いっそ逃げてくれればいいが、逃げたとしても無駄だろうとも思う。
     第一、南風と扶揺の事を思えば慕情がこの街から出て行くとは考えられなかった。
    「再会してめでたしめでたし……とはいかないものだな」
     呟いて顔を上げる。
    「腹を括るしかないか」
     どこか憤りを含んだ声で風信は見上げた天を睨み付けた。
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