全てを失ったあの日から、プリズムリバーの屋敷での日々を忘れた日はなかった――と言えば嘘になる。
花よ蝶よと育てられた貴族の娘が、父も身分も資産も失い、たった一人で生きるには相当な苦労が必要だった。最初は父のことを恨んでいたような気がするが、もはや顔さえ朧気だった。私は必死だった。昔、家族がまだ一緒だった頃には確かにあった、美術品だとか音楽だとかの娯楽を楽しむ心の余裕は、すっかり失われてしまった。
もはや「お嬢さん」ではなくなった私だが、それでも私は「生きている」。未だに離れ離れになった姉の一人とは、連絡すら取れていない。つまり、生死不明ということだ。私の生き方は間違ってはいなかった、はずだ。そう思いたい。
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