❏設定❏
・彰人→女遊びに忙しい経験豊富な大学生
・冬弥→恋愛経験ゼロの真面目な大学生
・二人の身長差は公式設定より開いている
・二人は同じ大学に通っていて、共通の友人がセッティングした合コンに参加することになる(冬弥は人数合わせでの参加)
・ところが、なぜか女性陣には目もくれず彰人を口説こうとしはじめた冬弥によって合コンは終始微妙なムードになり、仲のいい友人や女性陣の前で合コンが終わるまで延々と男に口説かれ続けた彰人は屈辱感に苛まれながら何の収獲もなく家に帰ることに
・細かい設定は話を進めていくうちに変更する可能性あり
・↑前提で、合コン終了後に冬弥が彰人に声をかける場面から
❏本文❏
彰人「……」
彰人:帰宅しようとした矢先に冬弥と遭遇してしまい、心の中でげっと呟くと同時に一連の騒動の発端である冬弥を忌々しげに睨みつける
冬弥「彰人」
彰人「馴れ馴れしく呼ぶな」
冬弥「だが、夜道にはどんな危険が潜んでいるか分からないだろう、俺が家まで送って……」
彰人「あのな……さっきから何度も言ってるが、オレは男だっての」
冬弥「俺も何度も言っていると思うが、それは分かっている」
彰人「だったら……」
彰人:苛立たしげに語気を荒げながら急に立ち止まると、背後を歩いている冬弥を振り返る
彰人「……っ!?」
冬弥「……!」
彰人:急に立ち止まったせいか冬弥の胸元に顔をぶつけてしまい、反射的に目を閉じる
冬弥「大丈夫か?」
彰人「あ、ああ、悪い……」
冬弥「……」
彰人「……!?」
冬弥:申し訳なさそうに離れようとする彰人の腰を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる
彰人「な……!」
彰人:あくまでスキンシップの範囲内で男友達と抱きあうことはあるものの、自分に恋愛感情を向けてくる男に生まれてはじめて抱きしめられたことに驚くと、瞬時に表情を引きつらせる
冬弥「終電を逃したから、家に泊めてくれないか」
彰人「……は?」
彰人:耳元で囁かれた予想外の言葉に拒否することすら忘れてしまい、冬弥に抱きしめられた状況のまま間抜けな表情を浮かべて冬弥の顔をじっと見つめる
冬弥「さっき、この近くに住んでいると話していただろう」
彰人「確かに、その話はしたけどな……」
彰人(男をお持ち帰りするために言ったわけじゃねえんだよ……)
彰人:心の中で悪態をつきながらも冬弥に抱きしめられている状況を思い出してハッとすると、ようやく周囲の視線に気がつくと同時に顔を真っ赤にしながら冬弥を引き剥がす
彰人「と、とにかく! タクシーかなにかで帰れ!」
彰人(こいつ以外にも初対面の男はいたが、そいつらの名前なんか一人も覚えてねえ……つーか、狙ってた女の名前すら今はもうあやふやなのに……こいつの名前だけは、しっかりと覚えちまったじゃねえか……)
彰人「聞いてるのか、冬弥……」
冬弥「ああ、聞いている」
彰人「……」
彰人(なるほどな、家に来る気満々、一歩も引き下がる気はねえと……)
彰人:冬弥の顔をじっと見つめる
彰人(これは、あれだよな……強引に押して押して押しまくって、無理やり相手をその気にさせる、オレや、オレみたいな男がよくやるやつ……ただし、女相手に限るわけだが……)
冬弥「……? 彰人、急に黙り込んでどうしたんだ」
彰人「……」
彰人(恋愛経験ゼロって話だったし、見るからにクソ真面目そうなのに……人は見かけによらないって、まさにこのことだよな……)
冬弥「……?」
冬弥:人間観察をするようにじっくりと見つめられ、頭上にハテナマークを浮かべながら彰人の顔をじっと見つめ返す
彰人(しかも、親が名だたる音楽家とやらで金持ちの息子だって合コン中に話題にされてたし、タクシー代くらい余裕で出せんだろ……なのに、終電を逃したから泊まらせてほしいなんて、明らかに取ってつけただけの嘘の理由じゃねえか……絶対に泊まらせちゃダメなパターンだろ、これ……普段オレが女相手にやってることを、オレ自身が経験してるなんて、悪い冗談みたいだ……)
冬弥「何も答えないということは、泊めてくれるということでいいのか?」
彰人「いや、普通に考えたらそうはならねえだろ……」
冬弥「沈黙は肯定というだろう」
彰人「……」
冬弥「……」
彰人:ふいに地面に視線を落とすと、何かを考えこんでいる様子で無言になる
彰人(実際にこいつを家に泊めてみたら、どんな展開になるのか試してみてえなんて、マジでどうかしてるとしか思えねえ……つーか、ただの、好奇心だよな、オレ……頼むから、そうであってくれよ……)
彰人:心の中でそんなことを考えつつ、意を決したように顔を上げる
彰人「なあ、お前……送り狼って言葉、知ってるか?」
冬弥「……!」
冬弥:一瞬虚を突かれたような表情を浮かべてしまうも、すぐに元の無表情へと逆戻りする
冬弥「ああ……今、俺が……」
彰人「なるほど、どうやら自覚はあるみたいだな」
彰人:冬弥が言い終わるのを待たずに、心なしかとげとげとした口調でそう言い放つと再度口を開く
彰人「つーわけで、今夜は泊めてやるが、よからぬ考えなんて持つだけ無駄だからな」
冬弥「……! ありがとう、彰人……」
彰人「……」
彰人(なんだよ、その眩しい笑顔は……オレが言った言葉の意味、ちゃんと分かってんのか、こいつ……)
彰人:泊まりの許可を出したとたんにパアッと表情を明るくした冬弥に呆れつつ、ついてこいよと言わんばかりに先を歩きだす
~彰人が住んでいるマンションの部屋の中~
冬弥「お邪魔します」
彰人「おう」
彰人:玄関の扉を開けて冬弥を迎え入れる
冬弥:彰人の後に続くように玄関の内側まで入る
彰人「急だったから中は散らかってるし、食うものとかも何もねえからな」
冬弥「ああ、突然お邪魔したのはこちらなのだから、気にしないでくれ」
彰人「ま、それもそうだよな」
彰人:だんだんと打ち解けてきたのか、ははっと笑いながら冗談めかした口調で答える
彰人「メシはさっき食ったし、また腹が減ったら近くのコンビニにでも行こうぜ。24時間営業のスーパーやファストフード店も近くにあるし、もし酒を飲むなら家にあったかも……って、なんだよ、突然ニヤニヤして……」
冬弥「いや、食事の話が多いなと思ったんだ。彰人は結構食い意地がはっているほうなのか?」
彰人「……」
彰人:実家に住んでいた頃はよくつまみ食いをしたり、絵名がパンケーキを餌に無茶ぶりをしてきた時も大人しく従っていたことを思い出すと否定できず、ほんのりと頬を染めると同時に眉間にしわを寄せて黙り込む
彰人「べ、別に、オレは……いくらお前が強引に上がりこんできたからって、その辺の気配りはちゃんとすべきだよなって思っただけで……お前がそう言うなら、勝手に……」
彰人:恥ずかしそうに視線をそらしながら言い訳を並べ立てると、いたたまれない気分になったのか急いで靴を脱いで廊下に上がろうとする
冬弥「……」
彰人「……!?」
冬弥:唐突に彰人の腕を掴む
彰人:驚いたように目を見開いて冬弥の顔をじっと見つめる
彰人「冬弥、なに……」
冬弥:彰人が喋り終わるのを待たずに彰人を玄関の壁に押さえつけると、間髪いれずにキスをする
彰人「……っ!? ん……っ、冬、弥……てめ……っ、いきなり、なに……っ」
冬弥「……」
冬弥:必死に振りほどこうとしてくる彰人を身長差で抑え込むと、彰人の口内に舌を入れる
彰人「~~っ!」
彰人:突然の展開に思考が追い付かず、他になすすべもないといった様子でぎゅっと目を閉じる
彰人(嘘、だろ……今、オレ……男とキスしてる、のか……?)
彰人:いくら女性経験は豊富でも男とキスをした経験はなく、どうしたらいいか分からずに冬弥にされるがままになってしまう
彰人「――……っ!」
冬弥「……っ!?」
彰人:しばらくの間目を閉じた状態で冬弥のキスを受け入れ続けるも、やがて我慢の限界に達すると同時に冬弥の舌を噛む
冬弥:突然口内を襲った痛みによって反射的に体を離す
彰人「……っ、……」
冬弥「……」
彰人:はあはあと肩で息をしながら、涙目で冬弥を睨みつける
冬弥:無言で彰人の顔をじっと見つめると、血がにじんできた口端を手の甲でぬぐう
彰人「オレに、そっちの趣味はねえ……!」
冬弥「だったら、なぜ泊めてくれたんだ」
彰人「そ、それは……」
冬弥「まさかとは思うが、同性だから何も起きるはずがないと思っていた……などと、言うわけではないだろう」
彰人「……」
彰人:冬弥の質問に対する答えは自分でもよく分かっておらず、恐らく好奇心からの行動だろうと思いながらも、自分に好意を抱いている相手に好奇心で接しているなどと正直に話すことができず、視線をそらしてしまう
彰人「そ、そんなことより……お前、初めてだったんじゃねえのかよ……」
冬弥「……? なんの話だ」
彰人「恋愛経験ゼロって言ってただろ……だったら、キスだってしたことねえはずだろ……」
冬弥「ああ、その話か……言われてみれば、確かに今のが初めてのキスだな」
彰人「~~っ! んな、あっさりと……」
冬弥「なにか問題でもあるのか?」
彰人「は?」
冬弥「今日出会ったばかりだが、俺は彰人のことが好きだ」
彰人「……っ!? ……、……」
冬弥「だったら、初めてのキスの相手が彰人でも、なにも問題はないだろう」
彰人「~~っ! と、とにかく、だ……次に何か変なことをしたら、その時は、追い出すからな……」
冬弥「ああ、分かった」
彰人「……」
彰人(短い付き合いでも、段々とこいつのことを理解してきた……この目は、絶対に分かったなんて思ってない目だ……)
~数時間後~
冬弥「大丈夫か、彰人……」
彰人「……っ、きもち、わりい……もう、いってきものめねえ……」
冬弥「だから、無理して飲むなと、あれほど……」
彰人・冬弥:すでに風呂なども済ませてしまい、あとは寝るだけの状態で宅飲みをしていたものの、そんな状況下で彰人が酔いつぶれてしまう
冬弥「そろそろ寝るか?」
彰人「ん……」
冬弥「……」
冬弥:彰人が自分の肩にもたれかかって眠ってしまっていることに気がつくと、彰人の寝顔をじっと見つめる
冬弥「……彰人、自分に好意を抱いている男を家に上げておきながら、そんな状況にもかかわらず酒を飲んで酔い潰れるなんて、あまりに無防備すぎないか……」
冬弥:彰人が眠っているため誰に言うでもなく独り言のようにそう呟くと、自分の肩に頭を預けてきている彰人の体を倒れないように抱きなおし、ためらうことなく唇を重ねる
彰人「……っ、ん……ん、ん……」
冬弥「……」
彰人「……は、あ……ん、ん……う……」
冬弥:彰人の口内に舌を入れると、好き勝手に口内を蹂躙する
彰人:苦しそうに眉間にしわを寄せながら眠り続けるも、だんだんと鼻にかかった甘い声を漏らしはじめる
冬弥:視覚、聴覚などの五感全てを刺激され、急速に高まってきた興奮に突き動かされるように彰人を床に押し倒す
彰人「ん、んん……っ、とう、や……?」
冬弥「彰人、目が覚めたのか……」
彰人「……? おれ、は……ねむって、ねえ……」
冬弥「……」
冬弥:自分が酔い潰れてしまったことを認めたくないのか、舌足らずな口調で反抗してきた彰人の態度に思わずきょとんとする
冬弥「……ふっ、そうか」
冬弥:つい笑ってしまうと同時に、拍子抜けしたことで興奮が少しだけ収まってくると、床に押し倒していた彰人の隣りに寝そべり、彰人の体を抱きしめてぽんぽんと頭を撫でる
彰人「……とう、や? なに、して……」
冬弥「……」
冬弥:自分の胸元に顔を埋めるような体勢になっているため、心なしかもごもごとした喋り方になってしまっている彰人の頭頂部にちゅっと音を立ててキスをする
冬弥「なんでもない」
彰人「……?」
冬弥:やはり、意識がハッキリとしていない彰人を襲うのはやめよう……などと思い直しながらそう呟き、お姫様抱っこで彰人の体を軽々と抱き上げてベッドに寝かせると、隣りに寝そべりながらお互いの体の上に布団をかぶせる
冬弥「おやすみ、彰人」
彰人「……」
彰人:酒の影響でぼーっとしている頭では状況についていけず、何が起きているのかも分からないまま再び眠気が襲ってくると、赤みがかった顔をとろんとさせながら冬弥を見つめ続ける
~数時間後~
彰人「……」
冬弥「……」
彰人(な、なんだよ……この状況は……)
彰人:ここ数時間の間に起きた出来事を何も覚えていないのか、自分の隣りですうすうと規則正しい寝息を立てながら眠っている冬弥の顔を凝視しながら冷や汗を垂らす
彰人「……っ、……」
彰人:恐る恐るといった様子で布団を捲り、お互いに衣服を身に付けていないなどといった絶望的な状況ではないことを確認すると、安堵の溜息を吐く
彰人(服を着てたところで、絶対に何もなかったとは言いきれねえが……いまんとこケツに違和感はねえし、大丈夫なはず……)
冬弥:一人で悶々としている彰人の心境などはつゆ知らず、彰人の目の前で小さく身じろぎをする
冬弥「ん……」
彰人「……!」
冬弥:身じろぎが原因で目を覚ましたのか、ぼんやりとした表情で薄目を開ける
彰人:とっさに目を閉じる
冬弥「彰人?」
彰人「……」
冬弥「一瞬、彰人が起きているように感じたのだが、眠っている、のか……?」
彰人「……」
彰人(――~~っ!? な、なんで、狸寝入りなんかしてんだよ、オレ……!?)
彰人:「マジで意味が分かんねえ!」などと、心の中で自分自身に悪態をつきながら狸寝入りを続ける
冬弥「……」
彰人「……」
冬弥:必死に狸寝入りを続けている彰人の顔をじっと凝視する
冬弥「彰人」
彰人「……」
冬弥「呼びかけても返事がない……ということは、やはり眠っているようだな……」
彰人「……」
冬弥「あれから数時間が経過しているし、すでに酔いは醒めているはず……」
彰人「……?」
冬弥「今なら、襲っても大丈夫だろう……」
彰人「……!?!?」
冬弥「酔いつぶれて意識がハッキリとしていない彰人を襲うことは躊躇したが、眠っているだけであればそのうち起きるだろうし、恐らく大丈夫なはずだ……」
彰人(いやいや、大丈夫じゃねえだろ、どんな理屈だ!? つーか、脳内で考えるだけならまだ分かるが、例え眠ってるとしても本人を前にして声に出して言っていいセリフじゃねえだろ!!)
冬弥「彰人……」
彰人「……っ!?」
冬弥:彰人の名前を呼びながら彰人の頬を両手で包むと、そっと触れるだけのキスをする
彰人「――~~っ!?!?」
彰人:いまだかつてないほどの大ピンチと言っても過言ではない状況で、今すぐに逃げ出してしまいたいほどの身の危険を感じながらも、今さら狸寝入りでしたとは言いだせず、冬弥のそれと触れ合っている唇をきゅっと真横に引き結ぶと、全身をカチコチにこわばらせる
冬弥「……」
冬弥:そんな彰人の心境を知ってか知らずか、拒絶の意思を示すようにしっかりと閉じられた唇にためらいなく舌を這わせる
彰人「……っ!?」
彰人:驚きのあまり情けない悲鳴のような声にならない声をあげてしまうと同時に、しっかりと引き結んでいたはずの唇を開けてしまう
冬弥:彰人の唇が開いた隙を見逃さず、彰人の口内に舌を入れる