あまつかぜ 空に厚く濁った雲がかかり、太陽の光が鈍く乱反射している昼下がり。堅苦しいスーツを来たサラリーマンに、遊び気分で浮かれきった観光客。老若男女数多の人々。大小さまざまな自動車、タクシーにトラック、もちろんマフラーを爆音で唸らせる真っ黒なバイクも。目の前の大通りはうんざりするような喧噪で満ちている。
カフェの中とを隔てる大きなガラス窓は、外界の景色を一枚絵のように切り取っている。店内に聞こえるのは利用客の静かな話し声のみ。
男は窓際の席に座り、季節はずれのアイスティーを飲みながら、手前のモバイルパソコンに向かう。
「うーーん……」
思いついた文字列をワードに入力してみるが、全くしっくりこない。バックスペースキーを連打する。入力しては消す、さっきからこの繰り返しだ。ちっとも前に進まないし、キーが小さいわ押しづらいわで気分も全然上がらない。
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