猫「ふわぁぁ...おきたか、こんろ。」
「あァ。おはようさん。」
間抜けな声で目を覚ますと、隣の布団で紅丸が伸びをしていた。どうやら自分より先に目を覚ましたらしい。珍しいこともあるものだ。もしかしたら、今日はちょっと良いことが起こるかも知れない。
昼前、皇国からの書類を片付けていると、若い隊員が声をかけてきた。
「中隊長、若どこに居るか知りやせんか?」
「さっきまで居たんだが...すまねェ。大方、町へ散歩にでも行ったんだろ。見かけたら声掛けとくぜ。」
今日は冬の割に暖かいし、町を歩いているのだろう。見回りも兼ねているだろうし、紅丸が居ると町に活気が出るのでありがたいことではある。だが、詰所に何も言わずにふらりと出ていってしまうのは何とかならないのだろうか。紅丸を拾ってから長年一緒に居る自分なら兎も角、若い奴らは大抵若を探し回る羽目になってしまう。帰ってきたらまた注意しておかねば。そんなことを考えながら手元の書類に再び目を落とした。
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