「こんろぉ。一緒に呑まねェか?」
炬燵に入り、猪口を片手に、にこにこ笑顔になっている紅丸に声をかけられた。浅草の破壊王も一度酒が入れば愉快王になってしまう。
「飲み過ぎですぜ。まったく。」
炬燵の上の徳利と蜜柑越しにそう返す。
「良いじゃねぇか。たまには二人でこうしてぬくぬくするのも。」
「はぁ。炬燵で寝落ちして風邪ひかないでくだせぇよ。いつも若を布団へ運ぶの誰だと思ってるんで?」
「わぁってるよ。」
紅丸が小さい頃から何回このやりとりをしたかわからない。
「ったく。紅はガキの頃から変わらねェなァ。」
思わず呟くけば紅丸に睨まれた。
「なんだって?子供扱いすんじゃねェ。」
まあ、酒の入ったとびきりの笑顔で凄まれたところで、怖くも何ともないのだが。
しかし、大隊長とやらに担ぎ上げられて疲弊しているのも事実だろう。今日くらいは甘やかしてやるとするか。
「まぁたまにはゆっくりしやしょうか。」
そう言うと、
「最初っからそう言えって言ってんだよ。」
紅丸は口を尖らせて言い返し、猪口を寄越してきた。不機嫌なふうに言っているが、内心、上機嫌になったのが丸わかりだ。第八の姉ちゃん達が言っていた「つんでれ」、とはこんな感じなのだろうか。こういう解りやすいところが可愛く見えて仕方ない。
きっと今日も、寝落ちした愉快王を布団に運ぶことだろう。......俺の布団に転がしておいたら紅丸はどんな顔をするのか。いつも世話を焼かされている仕返しだ。そんなことを考えながら、受け取った酒にくちを付けた。