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    夢屋 異

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    夢屋 異

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    ワンドロ(お題:猫)です!!

    「ふわぁぁ...おきたか、こんろ。」
    「あァ。おはようさん。」
    間抜けな声で目を覚ますと、隣の布団で紅丸が伸びをしていた。どうやら自分より先に目を覚ましたらしい。珍しいこともあるものだ。もしかしたら、今日はちょっと良いことが起こるかも知れない。

    昼前、皇国からの書類を片付けていると、若い隊員が声をかけてきた。
    「中隊長、若どこに居るか知りやせんか?」
    「さっきまで居たんだが...すまねェ。大方、町へ散歩にでも行ったんだろ。見かけたら声掛けとくぜ。」
    今日は冬の割に暖かいし、町を歩いているのだろう。見回りも兼ねているだろうし、紅丸が居ると町に活気が出るのでありがたいことではある。だが、詰所に何も言わずにふらりと出ていってしまうのは何とかならないのだろうか。紅丸を拾ってから長年一緒に居る自分なら兎も角、若い奴らは大抵若を探し回る羽目になってしまう。帰ってきたらまた注意しておかねば。そんなことを考えながら手元の書類に再び目を落とした。

    午後、雑貨屋で買い物をしていると、店主のばあさんの隣で黒猫が丸くなっているのが目に入った。
    撫でてやると、もっと撫でて、というというように頭を手に擦り付けてくる。
    「この店、猫なんて飼ってたかい?」
    ばあさんに聞くと、
    「あぁ、その子ねぇ。朝からこの店に居たのよ。晴れてるとはいえ、外、寒いじゃない?だから座布団を用意してあげたら落ち着いちゃって。」
    可愛いでしょう?と楽しげに答えてくれた。「そういえばお母さん。若を見かけやせんでしたか。」
    「さあ、あたしは見てないわねぇ。」
    「そうかい。ありがとうごぜェます。」
    まったく。うちの大隊長は何処ほっつき歩いてんだか。


    店を出て空を見上げる。
    「良い天気だなァ。」
    見上げると雲一つない青空。こんな天気なら確かに散歩に行きたくもなる。詰所への帰り道を歩いていると、黒い尻尾が曲がり角の先へ消えるのが目に入った。ふよふよと揺れる黒い尻尾に、つい頬が緩む。先程雑貨屋に居た黒猫が自分の住処へ帰っているのだろうか。もしかしたら自分と入れ替わりで紅丸は詰所に帰っているかもしれない。紺炉は詰所への帰路を急いだ。

    詰所に帰って紅丸の姿を探す。無造作に整えられた黒髪が廊下を曲がるのが見えた。早足で追いかけるが、午前中に紅丸を探していた隊員が一足早く声をかけている。晩飯のあとにでもするか。

    晩飯を食べ風呂に入り布団を敷いていると、紅丸がこちらに体を寄せてきた。「どうした、眠ィのか?」
    「眠か無ェけどよ...今日、紺炉と全然喋れなかったじゃ無ェか。」
    ...紺炉だって紅丸と話したかったのだが。
    「あァ。俺も探しちゃいたがすれ違いが多かったみてェだな。それから、散歩に行くときは一言詰所に言ってくだせェ。」
    「...すまねェ。」
    「わかったなら、良いんだよ。」
    そう言いながら、額を紺炉の肩に柔らかく付けられると、もう強く言えなくなってしまう。ふっと微笑み、艶のある愛しい黒髪を優しく撫でた。

    猫みてェだなァ、なんて思いながら。
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