火照る「紅、それは、駄目だ。」
紺炉が呟いたのはそんな言葉。顔から血の気が引く。きっと俺は今、ひどく青ざめていることだろう。
ああ、そうかやっぱり俺はいつまで経っても弟分のガキなんだな。
家族だとか、仲間だとか、尊敬だとか。ガキの頃から世話になってた紺炉への想いはもう、そんな単純なものではなくなっていた。
「紺炉、お前が好きだ。だから、」
何年も拗らせた胸の中の想いを曝け出す言葉は、俯いた紺炉の呟きによって遮られた。
驚きとともに紺炉の口から発せられたそれを聞き、唇を噛み締めた。
音が消え、微動だにしなくなった二人の間を、行灯の灯りだけが揺らめいている。
「そう、だよな。...すまねェ。俺は部屋に帰る。」
先に気まずい沈黙を破ったのは俺の方だった。早く、二人きりのこの場から立ち去ってしまいたい。
「違ェ。待て、紅」
紺炉が慌てた様子で顔をあげる。
「何なんだよ。」
そんなはっきりと拒絶しといて何を今更。自分から告白した癖に、理不尽な怒りで頬が紅潮する。
「違うんだ。俺は紅のことを拒絶したいわけじゃねェ。だが、」
「何だ。そういう目で見れねェってことじゃねェのかよ。」
そりゃそうだろう。こんな歳の離れた男なんざ。
「紅、いいから聞け。まず俺も紅と同じ気持ちを持ってる。そして紅の俺への想いが変わっていくのもずっと感じてた。」
まっすぐ俺の目を見て紺炉はそう言った。
同じって、、紺炉も俺のことを好いてるっていうのか?
「じゃあ、何で、、、。」
「そりゃ、16も下の奴に手ェ出すわけにゃいかねェだろ。」
「年の差なんて関係ねェだろ!」
「紅、俺が今までどんな気持ちだったと思ってんだ?手前より16も離れた浅草の破壊王で、」
やれやれといった様子で、そう諭すように説明される。
「そんなの、そんなのしらねェ。おれはただ、こんろがほしい。」
「っ紅!あのなァ。」
「なんでだめなんだ!」
「、、、、お前ェは、紅はそれでもいいのか。」
「あァ。いいにきまってんだろ。」
そう問いながら、こちらへ差し伸べられる包帯の巻かれた手。
「俺ァ、一度手に入ったものは手離せる気がしねェが。」
「離さなくて、いい。おれは紺炉のモンになりたい。」
「こんなつもりじゃなかったんだが、、。まァいい。互いに、離しやしねェさ。」
手が、体が、顔が熱くなるのを感じる。
きっとそれはもう怒りの所為ではない。壊れ物を扱うように優しく、その指が俺の頬に触れたからだ。