記憶すらも共有したくないほどに「最期に呼ばれるまで、七海は僕のことなんてすっかり忘れているものだと思ってたよ」
「何故?」
空港にて。隣に座る七海は心外だという顔でこちらを振り返る。出会った頃から彼は考えていることがすぐに顔に出るタイプだった。
「だって、僕の話を全然しなかったでしょ?僕のこと知らない人にはもちろん、五条さんたちでさえ」
七海は殊更昔の話をしなかった。だから、七海に僕という同級生がいたことを知る人は少ない。しかも、知っている人に対しても、僕のことを思い出して語りだすということはなかった。
「…大抵の人にはギムレットで察してくれたんだがな」
「七海がよく飲んでたお酒?」
「ええ」
お酒に何が?と首を傾げると、どこから取り出したか携帯を操作しこちらに画面を見せるそこに書いてあったのは。
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