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    zuki_ni_exe

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    おにロリ炎熱です 好き勝手に書いた突発文章

    おにロリ炎熱化粧で塗り固められた顔に偽りの笑みを貼り付けた女性のくだらない噂話や誰かを貶めるような下世話な話題に愛想笑いを浮べる。
    父親に命じられてパーティー会場に来たものの、腹の探り合いや誰かの悪評といった相変わらずのつまらない空間。
    目の前の女性も含め誰もがいくら身なりを整え着飾ったところで腹の汚さは隠せていないな、と手にしたグラスを口に寄せた瞬間、背中に何かがぶつかった。
    振り返った先には青色のドレスに身を包んだ少女がどこか焦ったような表情でこちらを見上げている。

    「え、あ、その、ごめんなさい!」
    「大丈夫だ。しかしあまりこういったところで走らない方がいい」

    怪我をするぞ、と栗毛色の頭に手を置く。
    怒られると思っていたのか少女は呆気に取られたように、ぱちぱちと目を瞬かせる。
    そしてはっ、と表情を変えると頭を下げてもう一度謝罪の言葉を口にして早足で去っていく。
    キョロキョロと辺りを見渡していた辺り、大方両親とはぐれたのだろう。
    探すのを手伝ってやれば良かっただろうか、と考えていると女性が上品に笑った。

    「どうしたのですか?」
    「ふふ、いえお優しいのだなと思いまして」
    「別に…これくらい普通ですよ」
    「怪我の心配をしていらしたじゃない」
    「少々やんちゃなところが見受けられたので…」
    「あら、子供はあのくらい元気な方が可愛いんですよ?」

    そういうものなのか、と人の中に消えていく少女の背中を見送りながら納得する。
    しばらくの間、子供の愛おしさについて語る女性の話を半分ほど聞き流していると女性の背後に別の女性が現れた。
    挨拶も程々に、話に花を咲かせ始めた女性達にそれでは、と声をかけて離れる。

    あまり人の少ない端の方で先程飲むことの出来なかったグラスの中身をひとくち飲む。
    口の中に広がるほんの少しの苦味に眉を寄せる。やはり酒は苦手だ。
    胸の中に溜まった重たい空気を全て吐き出すような深いため息を吐きだす。
    疲れたな、と自然と言葉がこぼれた。
    主催の人間に挨拶をしたらさっさと帰ってしまおうか、と脳内で計画を立てているとスーツの裾が引かれる。
    目線を落とすと、そこには先程ぶつかってきた栗毛色の少女が不安げにこちらを見上げていた。

    「どうした」
    「えっと、少しの間でいいから…お、私のこと匿ってくれませんか!?」

    お願いします、と頭を下げる少女に、少し待てと声をかけてから近くのテーブルにグラスを置く。どういうことだ、と言葉の意味を問うと目の前に青色のナビが現れる。

    《急にこんなこと頼んですいません。今、変な男の人に追いかけられていて…っ、》

    青色のナビの目付きが変わる。
    緑色が鋭く睨む先へ視線を送ると下卑た笑みを浮かべた男が、キョロキョロと何かを探していた。裾を掴む力が強くなる。
    確かあの男は少女を好む趣味があると先程の女性が言っていたなと思い出す。
    なるほどそういうことか。
    頼られてしまってはしょうがない、と青色のナビにわかったと視線で伝える。
    僅かに震えている少女の小さな手を握り笑いかけると、目の前に男が現れた。

    「あ、いたいた!どうして逃げるんだい……お前は?」

    醜い猫なで声に全身が粟立つ。
    反吐が出そうになるのを必死に耐えて、いつものように作った明るい表情と共に挨拶をする。

    「どうも。この子に何か御用ですか?」
    「私はその子の親なんだがね、ここに来るまでに喧嘩をしてしまって……全くこの年頃の子はやんちゃで叶いませんよ」

    ニタニタと笑いながら手を差し伸べてくる男に、少女はブンブンと首を振って拒絶する。

    「本当にこの子の親御さんなのですか?」
    「それはどういう意味だ?」
    「私の目にそうは見えないもので」
    「まさか疑っているのか!?君こそうちの子の手を掴んでどういうつもりだ!!!」

    男の声にざわめいていた会場が静まり返った。こちらに突き刺さる訝しげな視線の数々に男が勝ち誇ったように笑う。
    ひそひそとこちらを見ながら楽しそうに耳打ちしあっている奴らを睨みつけていると、男が距離を詰めてきた。
    そして少女の腕を掴むと、無理やりに自分の方へ引き寄せる。その拍子に繋いでいた手が離れた。

    「いっ、はなせ!!」
    「ほら!いい加減こっちに来るんだ!!」
    《熱斗くん!!!》
    「おい、待て……ぐっ、」
    「動くな!!!」

    痛みに顔を歪めながら男に引きずられていく少女を追いかけようとしたが、騒ぎを聞き付けてやってきた警備員によって組み伏せられてしまった。
    何とか抜け出そうにも複数人に敵うはずもなく、泣きそうな表情の少女に舌を鳴らす。
    このまま会場から出ていくつもりだろう。
    何も出来ない己の歯痒さに歯を強く噛むと、突然男の足が止まる。
    途端にざわつき始めた会場に顔を上げると、男の前に白と黒のツートンカラーが特徴的な男──伊集院炎山が立っていた。
    男の背中のせいで伊集院の存在に気がついていないのか、手を振り払った少女は一目散にこちらへと駆けてくる。

    「警備員さん、この人は悪い人じゃないよ!俺のこと助けてくれたんだ。だからどいてあげて!」

    少女の言葉に警備員達は顔を見合せて首を傾げるが、早く早くと急かされて渋々上から退いた。

    「お兄さん大丈夫?俺のせいでごめんね…」

    差し出された小さな手のひらに大丈夫だ、と断りを入れて立ち上がり、スーツについた埃を払う。状況が分からず未だ混乱してる警備員達を横目に少女を見下ろす。

    「怪我はないか?」
    「大丈夫だよ。ありがとうお兄さん!」

    太陽のような笑顔に思わず目を細める。

    「そういえばあいつなんで急に止まったんだろ?」
    「それは、」
    「熱斗」

    続けようとした言葉が遮られた。
    青色のナビが呼んでいた名前と同じ名前に、少女が表情を明るくさせる。
    後ろを振り返ると、いつの間にか男は姿を消しており伊集院がこちらへ真っ直ぐと向かってきていた。

    「あ、炎山!」

    馴れ馴れしく伊集院の名前を呼ぶ少女に会場がざわつく。もちろん自分も例外ではない。

    「遅かったな!」
    「どこかのバカを探していたからな」

    親しげな会話を繰り広げる少女と伊集院は突き刺さる視線など気にもしない。
    その光景に呆気に取られていると目の前に青色のナビが現れる。

    「あぁ、さっきのナビか」
    《巻き込んじゃってすいません…!》
    「別に、気にしないくていい」
    《でも、僕たちのせいで警備員さんに取り押さえられちゃったし…》
    「僕のことはいい。むしろあの子のことを心配してやれ」
    《……優しいんだね》

    ふにゃり、と頬を緩めて笑うナビに頬が熱くなる。恥ずかしさを誤魔化すように背を向ける。

    「さて、僕はもう行く」
    《え、待って、》

    呼び止める声に聞こえないふりをして足早に離れる。突き刺さる好奇の視線から逃げるように出入口へと足を早める。
    挨拶なんてどうでもいい。後で父に怒られようと関係ない。
    一刻も早く出て行こうとしたが、目の前を塞ぐように人集りが現れた。

    「先程のことなんですけど!」
    「かっこよかったわ!」
    「見直したよ!君名前は?」

    矢継ぎ早に繰り出される質問の数々に口角が引き攣るのを感じた。
    囲まれてしまっては無視ができるはずもなく、心の中で溜息を吐き出しつつそうそうに終わらせようと笑みを張りつけた。

    繊細な音色で奏でられる有名なクラシック音楽と雑談をする人の声に、疲れたと呟いた声が溶けていく。
    あの後、散々質問攻めをされ開放される頃には壇上に主催が上がり挨拶を始めていた。
    主催個人に挨拶を終えて、もう用はないとばかりに立ち去ろうとしたその時、話好きな女性が割り込んできた。嬉々として先程のことを話す女性に興味を持ってしまった主催によってさらにその後一時間ほど拘束されてしまった。

    そしてようやく解放され、疲れた身体を引きづりながらテラスへと出るとやたらと人が集まっていた。
    面倒ごとの予感を感じ、踵を返そうとしたが近くにいた女性に捕まってしまう。

    「あら、先程の」
    「どうも。何を見てらしてるんですか?」
    「ふふ、とても珍しいものですわ」

    ほら、あそことラメがきらめく指先を追った先の光景に言葉を失う。
    そこには少女を抱き上げて穏やかな笑みを浮かべている伊集院が立っていた。

    「自分で立てるから大丈夫だって!」
    「また迷子になられても困るからな」
    「下ろせってばー!!」

    ばたばたと暴れる少女を受け流しながら、赤色のナビ──ブルースとなにやら話し込んでいる伊集院の姿を見て周りの女性は口々に羨ましいと呟く。
    それが少女を抱く伊集院に対してなのか、伊集院に抱かれている少女に対してなのかは言わずとも分かるだろう。
    恥ずかしそうに唸る少女に気を良くしたのか、ほんの少しばかり声色が浮ついてる伊集院になんだか鳥肌が立つ。
    今日はもう疲れた。さっさと帰ろう。
    羨ましそうに少女を眺めている女性に声をかけて足早に出入口の扉へ向かう。

    「そういえば聞きましたか?炎山様に婚約者が出来たそうですよ」
    「まぁ!本当ですか?うちの娘が聞いたら悲しんでしまうわ」
    「うちの子もよ」

    途中で聞こえた会話に、ほんの少しの興味を惹かれつつも一刻も早く体を休めたい気持ちが勝り足を動かす。
    ふと、テラスでの伊集院の表情を思い出す。
    偽りではない、心の底から浮かんでいる穏やかな笑顔。
    頭を左右に振り、脳裏に浮かんだ考えを離散させる。

    十年後、ウエディングドレスに身を包み伊集院の隣で幸せそうに笑う成長した少女の姿を見るとは知らずに。
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