悪魔とシスター暗い森の奥深く、木々が多い茂るそこにはおおきな教会がある、白く綺麗な外観でおおきなガラス窓が印象に残る教会。その教会で暮らすシスター、虎於は若くしてシスターとなった。教会の近くに住む孤児院の子供たちと毎日虎於とお祈りを捧げて、虎於は子供たちに勉強やマナーなど生きて行く上で必要なことを教えていた。虎於は困ってる人を見捨てない助けを求めている者には手を差し伸べる、それはシスターだからではなく根が優しい虎於だからだった。そんな虎於の元に1人、迷いを抱えた人物が訪れた。その日は雨が酷く、雷が鳴り響く嵐の夜だった。
ガタンッ!!
外で何かがぶつかり倒れる音、その音は外で降り頻る激しい雨音よりも大きく虎於は目を覚ました。木材のベッドで眠っていた虎於はぎしりと音を立て身体を起こしベッドサイドのランプに火を灯した。外を確認するため眠たい目を擦りながら長い髪をひとつに束ね薄手のネグリジェはまだ早かったかもしれない、とそんな事を思いながら椅子にかけていたカーディガンを羽織りランプ片手に外へ向かった。扉に近づくにつれて雨音は大きく激しくなっていった。
ギィッと教会の重たい扉を開けるとそこには男が柱にもたれかかるように倒れていた。長いこと雨に打たれていたのか身体はビショビショになり頭から足のつま先まで濡れていた。虎於はランプを置き急いで男に駆け寄り羽織っていたカーディガンを着せて男に呼びかけた。
「アンタ、なぁ!大丈夫か!? しっかりしろっ!!」
虎於の呼びかけに応じない男、ぺちぺちと冷たい頬を叩きながら虎於は必死に呼びかけた。呼びかけている間にも雨は激しくなる一方だった。このままでは虎於も濡れて男を助けられなくなるその前に何とかしなければならない、そう思い虎於は男の太い腕を自分の肩に回し自分より大きい男を引きずりながらも聖堂へと連れこんだ。なんとか広い聖堂へと連れて来れた、虎於は男を椅子にもたれかせ起こし続けた。虎於の着ていた薄手のネグリジェも髪の毛もビチョビチョに濡れていた。あの激しい雨に打たれつづけた男の身体は氷のように冷たく浅い呼吸を繰り返している。虎於は男の頬を両手で掴みながら男が目を覚ますように神に祈りながら呼びかけ続けた。
「っ、おい!大丈夫か!?」
「……っ、う、…ん"」
虎於の祈りが神に届いたのか男はようやく目を覚ました。長く閉じられていた瞼から金色の瞳が虎於をとらえる。苦しそうに唸りながら男は掴まれた頬の手にそっと手を伸ばし虎於へ問いかけた。
「俺を…助けてくれたのは……キミ?」
「あぁ、あの激しい雨の中アンタはこの教会の前で倒れてたんだ。」
「……きょう、かい」
「そうだ。それよりここじゃまだ寒い、私の部屋に行こう」
立てるか?そう男に尋ねると男はゆっくり立ち上がった。虎於はまだよろける男に肩を貸しながら虎於の部屋へと向かっていった。