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    以前に呟いたネタの供養
    微妙に前作と繋げてみた
    1️⃣の初恋地獄篇

    #左馬一
    samaichi

    17のまま 17の頃に、生まれて初めて愛の告白をした。
     今思えば、なんであんな大それたことをしてしまったんだろう。その時、部屋には誰もいなくて。俺たちふたりだけで。ただそれだけだった。どうして口にしようなんて思ってしまったのかなんてわからない。思い余ったとしか言いようがない。マイク片手に肩を並べる度に、背中を預ける度、リズムを合わせる度に少しずつ連なっていった甘くて重いそれ。飯奢ってもらったとかバイクで海に連れてってもらったとか、鼻歌口ずさんでる横顔とか、香水交じりの煙草の匂いとか。本当にささいなことで積み重なってゆくうちに、溢れた感情が勝手に口から零れてしまった。そんな感じ。
     しまった、なんて思ってももう遅い。次の瞬間にその人の唇から不要な煙と一緒に吐き出されたのはこんな言葉だった「男のケツに興味ねんだわ」。

     部屋の空気が薄くなる。
    「いや、そういう意味じゃねっすよ」とか「憧れてるってだけです」とか。誤魔化しようならあったはずだった。でも、息が巧く出来ない。足がすくんで、こめかみが酷く痛んで涙腺はぶっ壊れて、どうしようもなくて。
    「あ……そうすか」無理に出した声が震えてて、カッコ悪くて逃げるしかなかった。

     情けなくも逃げ帰って弟たちにただいまもろくに言わないで自分の部屋に滑り込む。ベッドに上がったら毛布を被る。やっと息ができる気がした。簡易で温かな暗闇に包まれてしまえばもう我慢することはない。できるだけ、声を殺して。二郎にも三郎にも誰にも聞こえない声で泣いた。一度、溢れてしまったもんはしょうがない。俺の身体は案外たくさん涙を隠していたらしい。 無理に止めようとせずに、泣いて泣いて泣いて、泣き疲れて、部屋は毛布を取っても変わらないくらいにすっかりと陰っていた。暗い部屋の中で目を覚ました結論。愛の告白なんてするもんじゃねえ。もう二度としねえ、絶対に。

     決意と共に腹の音が鳴った。まるで芋虫のように毛布から這い出した俺は生まれ変わるしかなかった。蝶になんてなれなかったけどきっと大したことじゃない。俺はあの人が大好きで、こっ酷くフラれた。もうあの人を好きなままの自分ではいられなくなったんだ。だから、これからの人生、二度と恋なんてしないと思う。それだけ。
     電気を点けた。暗闇に慣れた目をしぱしぱと瞬かせた途端に、
    「兄ちゃん! 平気?」
    「一兄! 大丈夫ですか?」
     二郎と三郎が雪崩れ込んできた。こちらを心配して潤む瞳がじっと俺を見てくる。ホッと息をつく。良かった。俺はまだまだ笑っていられる。大丈夫、こいつらさえいれば俺は恋なんてしなくたって生きていける。そう思えた。夕飯はニラ玉にしよう。
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    MAIKING何れはまた左馬一になるだろうバチバチ期の一郎が深夜に己の初恋地獄篇を思い出してあああああてなってる(めっちゃさわり)
    はつ恋 ふと目を覚ますと俺はリビングのソファーの上にいて、目の前のテレビ画面には見覚えのない古い映画が流れていた。覚醒したての視界には眩しすぎるような風景が流れていて、一瞬だけ、ここがどこだかわからない。見覚えのない風景と見覚えのない人たち、聞き慣れない言語で聞いたこともない台詞が突然脳内に押し入ってくる「愛のない人生なんて、最低だ」。

     隣では俺にもたれ掛かりながら三郎が少し前の俺のように寝落ちていた。俺はとりあえず座り直して、ずり落ちそうになっていたケツを戻す。深夜アニメリアタイしようとしてそのまま寝落ちしたんだな。変な姿勢を取っていたせいか、首が少し痛い。そうそう、二郎は友達んちに泊まりに行ってて、今日は三郎が付き合ってくれてたんだ。本当はそう興味なかっただろうのに、三郎はキラキラした瞳で「是非是非お供させてください!」と笑っていた。結局、俺まで寝落ちてなんだか申し訳ない。俺は三郎の身体をそっと横抱きすると、起こさないように部屋へと運んだ。随分と重くなったな~なんて思いながら三郎の寝顔に小さな声でおやすみを言って、リビングへと戻る。煌々としていた電気を消して、おそらく三郎がかけてくれたのだろう毛布を被り直すと、なんとなく画面を見つめる。やべえ太陽が眩しい。森が綺麗だな。南欧だろうか? ピレネー山脈って何処の国だっけ? 既に映画は終わりかけで、若い頃はきっととんでもないイケメンだったんだろうおじいさんが、その人生に幕を引こうとしている。映像も綺麗だし、登場人物も老いも若きもみんなそれぞれに美しくて目に優しい。ちゃんと観たら泣けるんだろうな。なんとなくスマホで情報を取ってみると、三十年くらい前のフランスの映画だった。ストーリーはざっくりいうと死んでしまう前に初恋の人に逢いに行く、というものだった。
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    MAIKINGオメガバースサマイチの書きかけです。続きはまだ曖昧ですがさわりは書けたので一応「一郎、キャラメルみたいな匂いがしてるよ」

     乱数のなんでもないようでいて明らかに忠告であろう一言に、一郎は表情ひとつ変えなかった。ただ、彼の目の前にある生クリームとベリーソースがたっぷりとかかったクランペットを指差して「それのせいだろ」と呟く。そもそも、ここはシブヤ。乱数の最近のお気に入りであり、彼を取り巻く若き女性たちが御用達としているようなカフェだ。キャラメルの匂いくらいどこから漂ってきたっておかしくはないのだ。
    「一応確認しなよ。一郎、前回のヒートの日にちなんて覚えてないでしょ?」
     クランペットに生クリームをたっぷり塗り付けながら乱数は尤もなことを言う。一郎は溜息をつきながらも、念のためにスマートフォンを開いてスケジュールを確認する。何度更新しても反吐が出そうなそれによると、前回のヒートからふたつきが経過しているらしい。
    「や、まだはえーよ。こないだ二郎が終わったばっかだし、もっと先だろ」
     呟いて、飲み干したコーラはもう美味しくなくて、一郎は思わず舌打ちした。

     武力による戦争が根絶され、言の葉党が独裁政権を持つようになって久しい。徹底した女尊男卑の強いる現政権が、そ 4177

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