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    Hamanokarisuma2

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    Hamanokarisuma2

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    最終的には本にします
    同人SSにします

    ノアとわSS 1「ねぇ、ノア。一緒に旅に出ようよ」
    「…え?」
     それは何の脈絡も無い、いつも通りの平凡な一日、いつも通りの平凡な一コマに花巻乙和から来た突然すぎる誘いだった。乙和からの誘いを受けた福島ノア、唐突な誘いに一瞬戸惑いながらもまたいつもの事か、と若干呆れつつも平静を取り戻す。
    「旅に出よう…っていきなり言われてもすぐに返事は出来ないわよ」
     直感型の乙和とは逆に基本的には冷静沈着で物事の判断も考えた上で許可や同意をするノア。直感的にあれしたい、これしたいの乙和の提案などはあしらわれる事が殆どだ。今回の案に至ってもあしらおうと思えば簡単に出来るし、行きたければ一人で行ってもらう事だって出来た。
    「ダメ…かな?」
    「…乙和?」
     だが今回の乙和からの旅行の誘いは普段のあっけらかんとした乙和の軽いノリとは何か違うものをノアは感じた。普段通りの声、普段通りの表情、普段通りのノリ、いつもと変わらない乙和のはずだがそう捉えるには何かが引っかかるものがあった。何が違うかまでは分からない、分からないけど普段の乙和とは何かが違う。一緒に居てきたからこその違和感、ノアの中の第六感が伝えてくる。
           何かおかしいのでは? と
    「ダメとかの前にせめてどこに行くかとかは教えてもらっても良い?」
    「ここに行きたいって場所とかは今のところ決めてないっていうか決まってないっていうか…」
     乙和らしいというのかやはり目的地は未設定、一緒に旅をしたいという気持ちが先走っての提案だったのだろうかと思うノア。ところが乙和はそこで終えるわけではなくさらに言葉を続けた。
    「でもさ、私はせっかくノアと二人で旅行をする事を思うと、私が一方的にここに行きたいとかあそこに行きたいとかノアに押し付けるよりも私の行きたいところ、ノアの行きたいところってそれぞれ出しあって行けたら楽しいかなと思ってあえて決めてない状態で誘ってみたんだよね」
     乙和は乙和なりに考えていた。折角二人で行く旅行にも関わらず乙和一人が行きたいところへ行くならばノアを誘わずとも行けるし、例えノアと一緒に行けたとしても果たして自分一人が楽しんでノアの気持ちを置き去りにするのはいかがなものか、と。
    「へぇ、乙和にしては考えたじゃん」
    「…もしかしてバカにしてた?」
    「バカにしてたんじゃないわよ、バカにしてるのよ現在進行系でね」
    「ノアッ!」
     からかうようにして乙和をおちょくるノア、無論遺憾の意を示す乙和はやはりいつも通りだった。
    (考え過ぎ…だったかな?)
     ノアは違和感は恐らく気の所為だろうとその場は割り切ることにして旅行の返答についても一旦保留とした。 しかしその判断は数日後、悪い形で表に現れてしまった。定期的に行われるフォトンメイデンの活動練習中、そこには明らかに様子がおかしい乙和の姿があった。
    「ストップ、乙和。またリズムがズレていってるよ」
    「あ、あれ?ご、ごめん!ちょっと一人で今のところ確認してみるね?」
    「良いけど…、乙和大丈夫?何か精彩を欠いてるわよ?」
    「アハハ…面目無い」
    「……」
     ミスが起こるのは仕方ないのだがその数が普段と比べても多くなっている。普段出来るはずの動きも何処かぎこちなく、リズムは崩れていき、取り戻そうとすればするほど動きがおかしくなっていく。
    「あれぇ?だってここのステップは…うん、動きは出来るよね。なんで音楽が入ると…」
    「…ちがうって。これじゃあさっきと同じだよ。いつまでもこんなのじゃ皆に迷惑かかっちゃうよ。ここままじゃ私…何とか…何とかしないと…」
     乙和本人もおかしい事は理解してるのだろう、動きの中でも違和感はあるのか顔をしかめたり小声での呟きが聞こえてくる。ミスをするたびに顔をしかめ、自分に喝をいれる。徐々に溜まっていくフラストレーションは乙和自身を執拗に追い詰めていく。ノアの感じていた違和感はどうやら間違いではなかった、間違えどころかここまで不調が顕著に現れるまでに悪化してしまった。
    「咲姫ちゃん、乙和の今の色見える?」
     ノアも流石に不安になったのか、咲姫に乙和の色を見てもらうことにした。咲姫は乙和の後ろ姿をじっと見つめる、表情にも明るさは見受けられずただただ必死に練習する姿。その姿からは微塵も楽しさは感じられない。
    「乙和さん、かなり辛そうな色をしてる。真っ暗というよりは様々な暗い色が合わさっての黒…恐らくキレイな色だとは思う色もも塗りつぶされてる…」
     果たして乙和は何が原因でここまで追い詰められているのだろうか、いずれにしても深刻な状態まで陥っていた。
    「いたっ!」
    「乙和!」
     乙和の声でハッと我に返ったノア、顔をあげると苦痛の表情で足首を抑える乙和と寄り添う衣舞紀の姿があった。ターンを入れた瞬間、バランスを崩し体重を乗せたまま足首を捻った様だ。
    「咲姫ちゃん!コールドスプレーかアイシング!」
    「は、はい!」
    「ノアは濡れタオルを用意して!」
    「分かった!」
     結局この日の練習は消化不良の形で終了、いや中止となったというべきだろうか。乙和は先に帰ると告げると、痛む足で帰宅した。その背中は悲壮感でいっぱいだった。
    「乙和さん大丈夫でしょうか…」
    「怪我自体はそこまで酷くないと思う、多分軽い捻挫で済んでるから何日かすれば練習自体には復帰できるだろうけど問題は…」
    「乙和自身…ね」
     明るく振る舞ってきていたムードメーカーの乙和がこうなってしまっては嫌な空気が広がってしまうだろう。そんな責任は誰よりも早く違和感に気付いていたはずのノアにものしかかる。
    (やっぱりあの違和感は間違ってなかったんだ…)
     あの日だって乙和の横にいたはずなのに、普段とは違うってことに気付いていたはずなのに、勝手に大丈夫だと思いこんで流してしまった。
    (もしかしてあの誘いは…)
    「ねぇ、衣舞紀。無理を承知の上でお願いしたいことがあるんだけど…」

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