ちとたち短文②「ここん奥、どうなっとっと?」
「ああ…?」
千歳が突拍子もないことを言うのはよくあることだが、流石に脳の理解が追いつかなかった。
たった今、体を重ねている真っ最中だ。なんなら入っている。ただでさえでかい奴のさらにでかいブツが。
橘はといえば必死に肩で息をして快感と羞恥の波にさらわれぬよう、シーツにしがみついていたところだ。
「ここの、奥」
ぐっと重心を傾けられると、中のそれがさらに深くへ入り込もうとする。驚きで忘れていた快感が襲いかかってきた。
「うあっ!?おい!あ、ちょ…っんん!!」
「これ、もっと深く入りそうたい…」
上から覆いかぶさっている千歳の汗が、ぱたりと橘の首筋へ落ちる。本人だってそれどころではなさそうな状況だというのに、どうやら好奇心のスイッチが入ってしまったらしい。
こうなると千歳は手が付けられない。知りたいことを知るまでとことんやり込む。
しかし橘からすれば堪らない。何が起こるか分からない実験に巻き込まれてたまるか。
「あ、あっ…っ!!あからん…!やめなっせ!!」
苦しさに似た快感を覚えながら橘は叫んだ。ここから先、自分も知らない領域へ放り込まれようとしている。恐怖を覚えない訳がなかった。
「なして?桔平も気持ち良くなれっとよ、多分」
「多分なんかじゃ、許せんたい…」
「じゃあ絶対」
小学生のような言い合いが始まってしまった。入れている側の余裕にイラついた橘は、別の方針を取ることにした。
「千歳…俺に、怖いこつせんでくれんね…?」
なりふり構わずに懇願した。今この瞬間のプライドよりも今後の自分の尻の方が大切だ。橘が千歳に甘いように、千歳も橘に甘いはずだった。
「分かった…」
そう呟いたのを聞いて、橘は心底安心した。千歳の好奇心は芽生えた瞬間に止めなければならない。ひとたび研究が始まってしまえば、千歳が満足するまでそれは終わることがないからだ。
「桔平が怖くないように、ゆーっくりするけんね♡」
「え」
どうやら、間に合わなかったらしい。
「また入れっとよ。ちゃんと息せんね、桔平」
「っ!!あ、ああ!やだ、やめ、あぁ!!」
奥をみちみちとこじ開けられる感覚。さっき押し込まれた時と同じ、いやそれ以上の快感が橘を襲う。
「きっぺー、奥ぎゅーってするけん10秒頑張ろ」
焦れったいほどゆっくりと動く千歳は、本人も辛いはずなのにペースを変えようとしない。ふーっという荒い息を抑えたような呼吸がずっと聞こえてくる。
行き止まりのはずの場所へゆっくりと千歳が体重をかける。言葉通りぎゅうぎゅうと押されるそこは、橘が力を込めて居なければどうにかなってしまいそうだ。
「いーち、にーい、さーん」
「ちとせっ、ちとせぇ!あからんっ!!そこっ、ああ、あああ!!!」
迫り来る何かから逃げようと体をよじった瞬間、ごぷりと飲み込むような感覚があった。
「〜〜〜っっっああああああ!!!」
「桔平、奥入った」
短く告げるのがやっとのような千歳が、汗で張り付いた髪をかきあげた。
「動いてよか?」
「だ、めぇっ………っうあ、ああ!!んう!」
精液を吐き出すことなく絶頂を迎えた橘は、震える声で千歳を止めた。しかし涙を浮かべて体を張り詰めさせる橘の姿は、限界に近い千歳の自制心をあっけなく壊れさせた。
「すまん、桔平」
熱に浮かされた頭でなんとか呟いた千歳は、大きく腰を引くと欲望のままに橘の奥へ叩き込んだ。
「ああああっっ!!!」
もう橘に抵抗する術は残っていなかった。