ちとたち短文①「…気持ち良さそうな顔しとるね、桔平」
「っ…はぁ?」
空気を読まずに眉をしかめてしまった。しかし無理もない。
橘は今、腹の中で蠢く指が作り出すとてつもない違和感を必死に堪えていたところなのだ。
指を突っ込んでいる張本人は雰囲気をぶち壊すような橘の言葉が聞こえていないかのような顔をしている。
「今はまだ分からんだけばい。あと…1分もかからん」
「なにが…おい!」
千歳の顔を取り巻くように、空中がきらきらと輝いている。この野郎、こんな時に才気を使うな。
この会話の間も依然として千歳の指は体内を弄り回しており、時々苦しさに似た感覚が橘を襲う。
「なあ…っ、なにが、分かるんだよ…」
「もうちょっと…」
こいつはまた好奇心に任せて考え無しに行動しているだけなんじゃないのか。自分でやるならともかく人の体で実験されてはかなわない。痺れを切らした橘が一旦抜けと言おうとした時。
「っん、あっ!」
今までとは明らかに異なる、重い快感が腰を貫いた。
「あ、ああっ!おい千歳、まて!な、なんか…っ…」
未知の感覚が怖くて、目の前の千歳の肩にしがみついた。止めて欲しくて見上げた顔は驚くほど愉悦の表情を浮かべている。
「あ〜…桔平…よか顔たい…」
うっとりと呟いた千歳はさらに強くそこを押し込んだ。
「ああっ!!やっ、うぁ、ちとせ!!」
「きっぺぇ、気持ち良かねぇ?俺ん指でこぎゃん気持ち良くなっとる……あは、顔真っ赤たい」
橘が縋るように見つめていると、千歳はさらに興奮したように息を荒くする。熱いため息をもらすと、艶かしい薄ら笑いを浮かべて耳元で囁いた。
「俺で感じとる桔平、たいぎゃむぞらしか…もっと良くなりなっせ」
「ち、千歳……っあ」