ちとたち短文⑤「あ、おい!やめ…!」
静止の声も虚しく、両手を膝で抑えられ抵抗できない橘の服が一気に首元までまくり上げられた。
橘の胸元に貼られた2枚の絆創膏を見て千歳が沈黙したのもつかの間、「桔平…」と呟いて上げた顔にはありありと興奮が現れていた。のしかかられた橘は羞恥心半分苛立ち半分でその期待した表情から目を逸らす。
乳首へ絆創膏を貼ることが恥ずかしいとは思わない。練習中もチリチリと感じる違和感は、テニスへ集中するために排除すべきものだ。怪我で痛む足をテーピングするのと同じ理屈で橘はそれに対応した。だからなんら恥じることはないはずなのだが、いかんせんその原因がかなり不埒な行為に基づいていることや絆創膏の貼られた胸をまるで卑猥なもののように鼻息荒く見つめる親友のせいで羞恥心が掻き立てられる。
絆創膏の上へ千歳の指がそっと這う。撫でられる程度ならばガーゼのお陰で感じずにいられたが、少し力を込めて押された途端びくりと肩が跳ねた。
「こんなもんば付けて…こぎゃん感じとるばってん、意味あっとや?」
そもそも誰のせいだ。目線を戻せばその張本人は楽しくて堪らないといった顔で胸を撫で回している。依然として絆創膏は外さないまま、爪を立てたり引っ掻いたり絶妙な刺激を繰り返す。
「っあ、千歳…胸、いじんな…!」
「気持ち良かやろ?一日中絆創膏なんち貼られて、可哀想たい…いっぱいよしよししてやらんと」
「あ、ああ!嫌だ、あっ!」
やにわに強く突き立てられた爪は、痛くない程度にカリカリと絆創膏越しの1点を狙う。優しくはあるもののその分快楽もゆるい。焦らすようなやり方に若干の物足りなさを感じ始めた時、突然脳天へ突き抜けるような快感が突き抜けた。
「っう、あああ」
「弄り過ぎておっきくなってしまったんかね〜?桔平、これ自分で貼ったとやろ?絆創膏の下ん方、ちいっとだけ乳首はみ出とるばい♡今度もっと大きい絆創膏買いに行かんといけんねぇ」
「も…嫌、あっ!変な触り方…っ!!」
「抓るだけでビクビクして、桔平はいやらしかね♡分かっとるよな桔平?お前んここ、俺が大事に育てたとよ?」
「う……っああ!千歳、もう…やあっ!」
「さっきから嫌ばっかりばい。嫌なこつじゃなくて、何して欲しいんか言ってみんね?」
千歳が顔を近づけた拍子に、既に熱を持ったものが腹に当たる。それが自分の中に入ったときのことを思い出して、橘は熱っぽくため息をついた。
「ん?ほら、言いなっせ」
「ぅあ、千歳ぇ♡これ、剥がして…俺んこつ、ちゃんと抱いてくれんね♡」
非常に満足気な顔で頷き、いそいそと服を脱がせる千歳に無性にイラついた。千歳が上からどいた隙に体を起こすと、耳元で更にとどめの一言を囁いた。
「俺ん体こんなにした責任、ちゃあんと取りなっせ♡」
再び橘を押し倒した千歳の、それはもう余裕の無い顔を見て橘は不敵に笑った。