look at meーーー今日うちに来ない?
仕事終わりにスマホを覗くと簡素な誘い文句のメッセージ。
行きません。と打ち込み送信すると即座に既読がつく。
ーーー良いお肉貰ったんだ。待ってるね。
行かない、と送った文字が見えていないのだろうか。
相変わらず我を通す相手にため息をつく。
このあとは寮に戻るだけだし、明日はオフだ。
自分が食べれもしない食材を用意していることから、狙って連絡をしてきたのだろう。
もう一度だけため息をつくと、肉が勿体ないからと自分に言い訳をし、メンバーに今日は帰らないとラビチャを送ると、千のマンションへ足を進めた。
「いらっしゃい、大和くん。」
「……は?」
マンションのオートロックを抜けチャイムを鳴らすと、玄関を開けて迎える部屋の主。
……なんでこの人は長い髪を左右で高く結っているのだろうか。
髪型を所謂ツインテールにしている以外は、普段通りに出迎える相手に数秒思考が固まる。
固まる自分に相手が首を傾げ、その仕草にようやく我に返る。
「……何、やってんすか!」
「ふふふ、似合う?」
パタリと玄関を閉めてから指摘すると、相手は結った髪にさらりと触れて笑いながら部屋の奥へ招く。
可愛い、と思わず言葉を零しそうになるのを堪えて視線を逸らして後に続く。
買ってきたつまみを渡しながら、もう一度何をやってるんだと問う。
「何って…大和くん、好きなんでしょ?ツインテール。」
「……は?」
さっきと同じ反応だね、と楽しそうな相手に疑問符を浮かべる。
何をどうしたらそんな勘違いをするのか、そう思っていると顔に出ていたのか自分のスマホを手に取り画面を見せてくる。
そこにはつい先日、誕生日だった万理の為に寮で開いたささやかなパーティーの写真が表示されていた。
……酒の勢いで万理さんがツインテールにして、楽しそうにそれを囲んでいる成人組。
「環くんが送ってくれたんだ。大和くんがツインテールの万を見て褒めてたって聞いた。」
「褒め…、?」
また酒のノリでやって欲しいと言っていたのが、どうやら自分がツインテールが好きと曲解して伝わったらしい。
本日3度目のため息。しかしこちらの気も知らず相手は口を少し尖らせる。
「なに、万のツインテールは良くて僕は駄目なの?」
「そうじゃなくて……」
ぐいっと顔を近づける千に言葉を詰まらせ、あぁもうと観念しそのまま抱きしめる。
え?と、驚いた相手の漏らした声を気づかない振りをして普段は隠れている首筋に軽く口付ける。
「ん…っ…、大和くん…?」
「別に、ツインテールが好きとかじゃなくて…あれは酒のノリでまた見たいって言ってただけです。」
「……僕がやっても、似合わない?」
「だから…、そんな可愛いことするのやめて。」
万理さんより自分の方が似合ってるだろと、この人なりに小さく嫉妬をしていたのか。
ようやく相手の意図を理解し、そっと身体を離すと少し俯いてしまっていることに首を傾げるが、さらけ出された耳が赤くなっているのを見て思わずソファーに押し倒す。
「な、に……」
「…アンタが、悪い。」
赤い耳元にそっと顔を寄せ、可愛いと小さく囁く。
ビクリと肩を揺らすも腕をこちらの首に回し、嬉しそうに笑う千の唇に噛み付くように口付けた。