Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    バム🌰

    @vnight6_6 のポイピクです
    気軽になりたくて使ってみてます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 💕 🌟
    POIPOI 9

    バム🌰

    ☆quiet follow

    生きていられない「俺、お前のこと好き」

    帝統にそう言われた日、小生は変な夢をみました。夢の内容は、帝統にひどい言葉で侮辱されたり、過去の思い出したくないことを言い聞かされながら罵倒される、起きた時ふと涙が出そうなものでした。こういうのを逆夢というのでしょうか。あまり愉快な経験ではありませんがたかが夢なのですぐ忘れました。

    帝統の告白に対しての小生の対応は微温そのもので、特に答えはしてあげてません。理由はあると言えばいくらでもあり、ないと言えば全くないものでした。肯定も否定もしてない小生の態度に帝統は焦ってるながらも何かしらのゲームを楽しんでるようにも見えましたので強いられてない答えをわざと言おうとは、お互い急ぎませんでした。

    それから3日後、帝統はきれいな桃と高価な飲み物を何本か買ってきては、

    「これ、雀荘のおっさんからもらったもんだけど、美味そうだからお前と食いたくて、持ってきた」

    普段の彼の野性的な振る舞いを見てた人がいたら、彼がそんな風に笑えるとは思えないほど無邪気な笑顔で戦利品を小生の前で自慢しました。桃は皮をむいて二人で食べました。本当においしかったです。誰かに食べ物をもらってみるのは初めてでした。語弊があったかも、同情やゴミが混ざってない食べ物をプレゼントでもらってみるのは初めてでした。ただ美味しいものを、楽しい瞬間を一緒に過ごしたいと思う帝統の気持ちが嬉しかったです。こんな風に距離を縮めて行けるかな、二人して同じことを考えた気がします。
    幸せが近づいてくる気分になりました。

    そしてその日の夜の事です。夢にまた帝統が出てきました。今度は拳で理由もなく殴られたり蹴られたりしました。痛みがとてつもなくリアルに感じられて、夢の中でも本気で痛いと感じました。壁に投げられ呼吸が難しい胸を無慈悲に踏まれ、肋骨が骨折して肺に刺さったらどうしようと、そんなことを考えてました。気が遠くなっていく小生の財布からお金を勝手に持って行く帝統の後ろ姿、そこで目が覚めました。起きた瞬間体を手で触りましたがどこも痛いところはありませんでした。くらい寝室のなかで成人男性が自分の体を抱きかかえ一人怯えてる滑稽な情景。

    帝統は桃の事で想いが通じたと思ったのか、一気に好意の表出を大胆と見せました。訳もなくこっちの手を触ってきたり、指がきれいだの爪が自分より小さいだのどう見てもかまってほしい子供のようなことをします。それを拒む理由もなく、見てるこっちもかわいいと思ってきたので適当に相づちをしながら自由にさせました。初恋をしてる帝統を目の前にして、こっちまでドキドキしてしまい、楽しいです。長くない未来に彼との関係に何かタイトルが付くのではと思いました。

    夜になると帝統は賭場に行きました。一人になった部屋の中で布団を敷いてたら夢の事が心配になります。ですが寝ないと翌日の生活に支障が出ます。こんなことを言うと「夢野幻太郎」として失格かもしれませんが、夢幻の世界のせいで生活をダメにしてはいけませんので、おとなしく布団に入りました。

    花札の舞う賭場、帝統はイカサマがバレた上、大負けしていました。巨額のベッティングマネーを小生の身体を切り落とすことで払う、そういう話をしてました。テーブルの上に固定されたのは小生の右手。間違いなく有価値なものですが特別それを持っていたとしてもベストセラーが書けるわけでもありません。イカサマをしたのは帝統の右手なのに、なんで小生の右手が切断されなければならないのでしょう。理不尽なこの状況で、テーブルのギャンブラーたちは誰一人おかしく思ってません。当事者の帝統は目をギラギラ光らせながら小生の右手切断を何か面白いショーでも見るような顔で興奮してます。帝統のイカサマを見抜いた人が斧を持った手を高く上げました。右手は動けません。泣いて、叫んで、助けを求めても誰も助けてくれませんでした。大きな斧が手首に入ってくる瞬間、目が覚めました。息を荒くして、全身汗まみれ。即右手の手首を左手で確かめました。何もなかったことは言うまでもありません。

    変な声で唸りながら、恐怖を感じました。夢そのものも怖かったですが、今回だけではなくこれから近くなってくるはずの帝統の事が、帝統が大きい好意を見せれば見せるほど、夢は悪く怖く気持ち悪くなる。その事実が怖くなりました。だといえ彼を拒む気持ちも、権利も小生にはございません。ああそう、この前気を抜いていたら急にキスされました。その日の夢は鋏で歯を全部抜かれ彼の性器を口に入れられそういう行為を強いられる夢でした。一緒においしいものを食べてバイバイしようとした昨日、後ろから抱きしめられ「もうちょっと一緒に居たい」と甘えられました。普段なら可愛くてすぐにでも甘やかしたくなるその行動が、胸の中を占めた恐怖でなにかの脅しみたいに感じました。絵に描いたようなロマンティックシチュエーションがこの世のものではないホラブルなシークエンスになりひやひやさせます。心臓拍動はやけに早くなり、帝統は誤解しますね。嬉しいなのは確かです。帝統は誤解じゃなくちゃんと理解したかもしれません…昨日の夜、帝統と午前2時までろくな言葉も交わさないまま同じ空間で何かのテンションをお互い感じ取りながら時間を浪費しました。夜寝ないで威張るのは帝統と一緒に居られる上悪夢をみなくていい、一石二鳥でした。眠さに耐えきれず彼の肩で眠ってしまう前まではそう思いました。

    今朝悲鳴をあげながら起きました。どんな夢を見たかは言えません。もう言うのも、思い出すのも怖くなりました。ノイローゼになりそうなこの悪夢の循環で頭がどうにかなりそうでした。いいえ、実際どうにかなってます。帝統は寝ぼけた顔で怪奇な起床をしている小生を見つめてました。「変な夢でも見てんのかよ」特有のハスキーボイスで手を伸ばし小生を慰めようと頭を、肩を撫でてくれます。その時確実に聞こえます。もう一人の帝統が、野球バットを持って小生の頭を、肩を殴るために歩いてくる足音が。それが怖くて再び金属の摩擦音みたいな声を叫んではぶるぶる震えました。帝統の心配げな目線、「大丈夫か?」とかけてくる優しい声、それらすべてが耐えられなく息を圧迫します。鏡のように同じ顔をしてる男が、正反対の行動をするのが想像されます。今夜は前述したように野球バットみたいなものでも持って小生を思いっきり殴るでしょう。気絶しそうになると「へばるなよ」と言われ汚いものでもみる目線を浴びられるでしょう。それでも帝統の手を追っ払うことはできませんでした。本当の彼を失うことも辛いからです。

    今夜も眠らないため帝統と深夜まで起きているつもりではあります。時間を一緒に過ごすその分、彼との関係も深く、甘くなるはずです。それは、つまり、そう、

    寝ないで生きていられるならどれだけいいでしょう。
    ですが人は寝なくては生きていられません。

    生きていられません。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏🍀🍀🍀🍀🌙🌙🌙
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    バム🌰

    PAST
    クリスマス精神街にクリスマスの雰囲気が漂う12月、赤、緑、金色できらめくこの時期は、理鶯にほんの少し古郷を思い出させる。いつ聞いても懐かしいキャロルに心がときめく。まるでサンタクロースを待っていた少年時代のように。毎年12月になると、母は降臨節のカレンダーを買ってきた。チョコレートが毎日一個ずつ食べられるような仕組みだった。理鶯も他の子供と変わらず、一日で全部食べつくしてしまいたかったが、サンタクロースにバレると欲しいプレゼントがもらえなくなるため毎日我慢していた。降臨節カレンダーのチョコレートもあと5個以下になってる頃には、父の車に乗って近い山まで行く。もみの木を取りに行くのだ。母はいつもコストコで売っている安い偽物を使えと言っていたが、父は毎年、頑なに生きてるもみの木を使いたがった。今考えてみると、彼はクリスマスツリーにこだわっていたわけではなく、おそらく年に一度、息子と共有できるマッチョイズムがとてつもなく楽しかっただけだろう。まるで今の理鶯みたいに。もみの木に厳しいことを言う母も、オーナメントにだけは人一倍気合い入れていた。20年も前の家族写真が飾られているものや、理鶯が初めて作ったオーナメント、手先が器用な隣人からもらったものなど。親戚みんなで飾るクリスマスツリーは、ただの人工美溢れるもみの木ではなく、美しい形の家系図だった。完成されたツリーの下には、メイソン家の子供たちのためのプレゼントが用意されている。キッチンからは七面鳥を焼く匂いー理鶯の音のない回想がここまで来た時、後ろから人の足音が聞こえた。
    4148

    バム🌰

    PAST
    都市が眠らない理由東京の雨の日がたいていそうであるように空は陰気な雲を垂らして力のない雨脚を垂らした。帝統はそれが水圧の低いシャワーのようだと思った。夕方が始まる時間、巨大なシャワーヘッドの下に黒い傘が影の下にまた影を作った。下降するシベリア高気圧が小さな人間の懐から温もりを奪っていく。襟を正す、雨を傘で遮る大勢の人々と一緒にスクランブルを通る。向かい側の人達は帝統を避けて歩いて行った。いくら混みあっても雨、風、そして少し汚い人には触れたくないようだ。紅海を渡るモーゼにでもなったような気分で、帝統は渋谷スクランブル通りを斜めに歩いていった。2日3日洗ってない頭の上に雨が降り、濡れた髪を冷たい風が靡いた。自分についている汗、血、ほこり、砂のようなものが雨粒に混じって風に乗って…···遮断された視線、ぎゅっと閉じた襟、固い傘の中に食い込み彼らになにかしら病気になりますように。そんなことを想像しながら歩いて行った。その病気を一層深めることができるかな?と期待しつつタバコに火をつけた。雨の中でなかなか火がつかず、ライターを何度もカチカチと鳴らした。やっとついた火が消えるのが嫌だったので、フードを深くかぶった。
    2984

    recommended works