静かだった。そこを選んだ理由はそれだけ。急に一人になりたくなって外に出た。寝落ち寸前だったシバケンは罵声を浴びせてきたけど、ちょっとした取り引きを持ちかけたら渋々、俺の願いを叶えてくれた。
空気が重い。肌にまとわりつくようだった。だけど嫌じゃない。独りじゃないような気にさせてくれたから。目的地を決めずにただ歩く。静かな方へ、暗い方へ。途中コンビニで酒を買って、袋を下げてまた歩く。
明かりのない住宅街の入り組んだ道の途中にそれはあった。誰もいない公園、切れかけの電灯がチカチカと瞬いている。あそこでいいか、そろそろ歩き疲れたし。
公園の中に入りベンチを探す。無いなら無いでそのへんに座ればいいかと見回すとベンチはあった。が、先客がいた。一人になりたくてここを選んだのに、これじゃ一人になれない。離れた場所に座ったとしても、ここにいるのが俺だけじゃなきゃ嫌だった。誰にも入り込まれたくなったから。
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