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    マベだみ

    鍵に上げてたけど表にもあげづれえなあ
    みたいなのが出たり出なかったりする
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    だみだんだりのポイピク
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    マベだみ

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    人喰い親分の加筆修正版。
    擬人化でやる必要ねぇじゃ〜ん!と思ったので。
    DQ11の人喰い火竜みたいなイメージ。

    ※軽度ですがグロ描写アリ。

    人喰い鮫の話【数年前、ローズタウンの近海に化け物が居た。
    それは海から現れて、海にいる人を攫っては食い殺していた。
    人々は化け物を恐れ、海へ近付くのを止めた。
    するとどうだろう。化け物は夜な夜な陸へと上がり、人を攫うようになった。
    ピチャ、ピチャ、と海水を滴らせ。海の生き物が故に陸は息苦しいのか、浅い呼吸を繰り返し。
    その夜化け物に目をつけられた運の悪い獲物は、そのまま抵抗も出来ず連れ去られ、海の藻屑と消える。
    人々は毎夜怯えながら眠りについていた。

    そんなある日、近海に何処かから海賊が現れた。金色に光る鋭い目をした灰色の子分鮫達と、暗い口の中に子分と同じ金色の瞳を持った奇妙な姿の青い親分鮫。
    人々はまた悩みの種が増えたと頭を悩ませた。
    いっその事化け物と海賊が同士討ちにでもなれば、助かるのだが。
    そんなことを語り合い、その夜住民達はまた怯えながらも眠りについた。

    その夜も化け物は現れた。
    ピチャ、ピチャ、と地面を濡らしながら。
    浅い呼吸を繰り返しながら。
    人を攫って食い殺した。

    しかし次の夜。その日は化け物による被害が出なかった。
    次の日も。またその次の日も。

    人々は奇妙に思って、海に近づいた。
    群れを成して現れた住民達を警戒したのか、海賊の子分が三匹(人?)ほど訝しげな顔を浮かべながら海の中からその姿を見せた。
    子分に化け物を見なかったか、と人々が聞くと「人喰い鮫なら親分が殺した。ここの海は親分の物だから、迷惑な奴は始末されて当然」と言った。

    人々はそれを聞いて喜んだ。
    人喰いの化け物が居なくなった。
    これでもう毎夜怯えて眠らずとも済む。
    海賊とはいえどその親分に感謝をし、町長が礼をしたいと言った。
    子分の一人が海に潜り、少しして戻ってきた。
    親分が要求したのはブドウジュースだった。
    町長は喜んでその要求を飲み、子分を通して定期的にそれを渡すようになった】


    あの夜、自分がナワバリと決めた海を血で汚した人喰いの鮫。奴と死闘を繰り広げ、左鰭を持って行かれたものの奴に勝利を収めたあの日から、妙な空腹感に襲われるようになった。
    ただの空腹ではないのは分かる。普通の食事で腹は満たせど、【自分の中の何か】が満たされない。喉も異様に渇く。幾度飲み物を口にしてもそれが癒える事はなかった。

    満たされないこの《飢え》をどうしたものかと海を泳いで気を紛らわせていた時、ふと目の前を横切ったのは緑と白の鱗に覆われた魚、ピチピチだった。
    …気付いた時には手に持っていた三叉槍で、その丸々とした体を突き刺していた。ピチピチは痛みに悶え、苦しげに顔を歪ませている。槍が刺さった箇所から赤い血が溢れている。

    喉が、胃がそれを求めているのが分かった。

    口の中に海水と共に血の味が広がる。赤い血が渇いた喉に染み渡る。食道を通り、ぐるぐると獣のように鳴いていた胃が新鮮な肉を受容する。


    …無惨な姿となった肉と骨の塊を前に、自分の悩みの種であった喉の乾きと空腹感が少しだけ軽くなっているのに気づいた。
    魚を生きたまま食らう事でこの妙な症状が収まるんなら安いものだ。その時はそう思っていた。


    それから何度か同じ《飢え》に陥ったが、その度にピチピチを食らって誤魔化してきた。
    だがそれでも収まらない時は沈没船にいるネズミのモンスター、チューベェを食べた事もある。

    魚と同じ血の味、違う肉の味。新鮮なままで食べるのが一番だった。苦しげな弱々しい鳴き声が聞こえたが、自分の飢えを満たすのを優先して気にする暇もなかった。


    そんなことの繰り返し。
    そしてまた飢えが訪れた。

    倉庫に訪れたがチューベェは居ない。自分が此処に来るのを察して全員逃げてしまったのだろう。
    木箱に背を預けてその場に座り込む。あまりに強い空腹感と喉の渇きの影響を受けてか、意識がじわりと混濁していく。

    誰かが声をかけてきた。
    顔を上げる。
    視界に映るのは見覚えのある形をしたものだ。
    これが何だったのか思い出せない。
    どんな顔をしていたのかは分からなかった。
    見ていなかった。
    自分の身体が《それ》へと手を伸ばす。
    そこに俺の意思はないように。





    『親分』


    そう声をかけられハッとして上体を起こす。
    …自分が何をしていたのか覚えていない。
    口の周りが濡れているのに気付いた。右手で拭うと、その手は既に全てが赤に染っていた。

    視線を落とすと子分がいた。…息は、していなかった。
    その身体に触れている箇所からは、じんわりと弱々しい温もりを感じる。
    腕や腹の辺りがべったりと血で濡れていて、腹の方は中身が引きずり出され大方食われているのが分かった。

    その死に顔は切なそうで苦しそうだった。


    喉の乾きも飢えも感じない。自分は今、酷く満たされた感覚に包まれている。
    ゆっくりと床に広がっていた赤い血溜まりの進行が止まり始め、子分の身体は少しづつ冷たくなっていく。



    「…親分?」

    背後から子分の声がした。その声には戸惑いと恐怖が混ざっている。
    少し振り向くと、赤い縞模様のバンダナを身に付けた子分が顔を青くして立っていた。不安そうな顔で手に持った槍をぎゅっと胸元に寄せ、震えている。

    「……誰にも言うな」

    静かに正面へと首を動かしながらそう告げた。子分は「わ、わかりましたッ」と怯えた様子で倉庫の扉を閉めて逃げるように去っていった。
    自分の返り血にまみれた姿なんぞ子分達は過去に何度か見ているだろうが、あそこまで怯えるとは。自分の今の姿は余程恐ろしいものだったのだろう。
    …いや、同族を食い殺している者に対して恐怖しないわけもないか。

    ふらりとその場から立ち上がり、窓に近づいた。硝子に反射した自分の顔は赤く染まっていて、牙には子分のものと思われる肉片が付いていた。

    「……クソ」

    頭の中は嵐の海域が如く荒れ狂い、混乱していた。

    子分を自覚のないまま襲って喰らった事実。
    喰らった事で満たされた自分の身体。
    人喰い鮫を殺した日から現れた飢えと渇き。
    それを癒すには獲物を生きたまま食べなければ意味がなかった。
    人間にはまだ手を出していないが、人間を食えばこの症状も収まるだろうか。それとももっと人間を喰らうようになるだろうか。

    どちらにせよ…自分はあの日に殺した人喰い鮫と、同じモノになっていると気づいてしまった。
    原因は一切わからない。呪われでもしたのだろうか。

    もう二度と、この近海に潜んでいた人喰い鮫を殺すよりも前の自分には戻れないのだろうか。

    「…………」


    ちら、と部屋に遺されている肉塊を見る。

    あのままで残しておくのは、ヤツが哀れだ。

    ふらりと足がその方へと向かう。




    お前は、最期にオレを呼んだ。

    [ばき]

    お前を襲った時のオレは、さぞ化け物のような様子だったに違いない。

    [ぶち、ぶち]

    それでもお前はオレを親分と呼んだ。


    「………………」


    今のオレを見ても、お前はオレを親分と呼べるか?

    自分の意思で子分の死体を喰うオレの事を。


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