ぼくはぱぺである。名前はまだないが、カイヌシはもちぱぺと呼ぶ。これは別に名前ではなく、ぼく以外にももちぱぺはたくさんいる。ぼくだけの名前はないが、カイヌシはぼくのことをもちぱぺと呼んでいる。
カイヌシとはもう長い付き合いだ。ここでいちばんにぼくが古い。他にもたくさんのぱぺがここにはいるが、カイヌシのはじめてのぱぺはぼくである。だからぼくがここではいちばんの先輩である。つまりはたいへんえらいということである。
ぼくにはおおきいぼくがいるらしい。ただしくはぱぺではない。ぼくはぱぺだが、おおきいぼくはカイヌシと同じ人間であるらしい。時々カイヌシはぼくを四角い箱の隣に置いて、おおきいぼくを見ていることがある。カイヌシが言うには、おおきいぼくはハイシンが少ないのだという。もっとハイシンしろと四角い箱に向かってきゃらきゃら笑っていることがある。ハイシンが何かは分からないが、カイヌシはおおきいぼくがそうすると嬉しいらしい。ならばおおきいぼくはもっとハイシンとやらをするべきである。
カイヌシはよくぼくを連れていろんなところへと行く。すぐそこのコンビニから、ものすごくはやい電車に乗ることもある。カイヌシがいうには、空を飛ぶ乗り物もあるそうだ。それにも乗ってみたいが、カイヌシはそれが苦手なのだという。いつか乗りたいので、はやく乗れるようになってほしい。
そういえば、ちょっと前にカイヌシといっしょにコンビニへいったとき、カイヌシはぼくをポケットへと入れていた。スマホや財布といっしょにぎゅうぎゅうになったポケットのなかで、ぼくはえらい先輩のもちぱぺであるのだからもっと大事にあつかえと思っていたら、ポケットの出入り口から外がみえた。明るいなあと少しあたまを出したら、なにかと目があった。
「……」
ロリだった。かわいい。
「おっと」
と思ったら、ぎゅうとカイヌシにポケットの奥までつっこまれた。ふざけんな。