ぼくはぱぺである。名前はまだないが、カイヌシはもちぱぺと呼ぶ。これは別に名前ではなく、ぼく以外にももちぱぺはたくさんいる。ぼくだけの名前はないが、カイヌシはぼくのことをもちぱぺと呼んでいる。
今日のぼくはカイヌシを見送って家で留守番だ。この家にはたくさんのぱぺがいるが、カイヌシは気分で外に連れ歩くぱぺを変えている。今日はしゃちょぱぺがカイヌシと外に行ったようだった。まあきっとおみやげにおかしを買ってくるだろうから、それまでてきとうにすごすことにした。カイヌシのかくしたおかしを見つけたから、これを開けようと思う。カイヌシのものはぱぺのもの、ぱぺのものはぱぺのものである。
ふくろをどうにかして開けて、つやっとしたチョコレートを食べているとカイヌシが帰ってきた。おっとまずい、たべているところを見つかるとおこられるのだ。べつにおこられても怖くはないが、めんどうではある。さっとにげていつもぼくがおかれているところに座っていると、開けられたチョコレートの袋を見てカイヌシが何かわめいているのがきこえた。そんなにおこって、たんきだなあと思っていると、かばんからぬけでてきたしゃちょぱぺが、いつもおかれているぼくのとなりまでやってきた。
ふと、そとのにおいとはべつの、いいにおいがしゃちょぱぺからする。とてもおいしそうな、かぎなれたにおいの。
「~~~~~~~~~~~!!」
「うわどうしたもちぱぺ」
「×〇△□~~~~!」
「え? だからなに」
ゆるせん。ここでいちばんの先輩はぼくだ。ということはたいへんえらいぱぺであるのもぼくのはずである。なのにカイヌシはしゃちょぱぺとラーメンをたべにいったのである。この! いちばん! えらいぱぺであるぼくを! さしおいてである! ぼくだってラーメンをたべたいというのに!!
あまりものぼうきょだ。たいへんぼくはかなしい。いかんだ。腹がたったので、ぼくのおんじょうで残しておいてやっていたチョコレートはカイヌシの目の前でぜんぶたべてやった。もちろんおこられたが、そんなことは知ったこっちゃない。ぼくにラーメンをたべさせなかったカイヌシがわるいのだ。もうせいすべきはカイヌシのほうである。