薬指にくちづけ あ、運命だ。
三途春千夜は直感的にそう思った。
人が運命を感じる時、何よりもまず相手に対しての好意が先行するはずだ。けれど、三途が花垣武道に対して抱いていた感情は、恐ろしいほど深い嫌悪や憎悪だった。
自分の邪魔ばかりしてくるただただ憎いだけの相手。世の中のことを何一つ理解していない馬鹿な子供。そんなふうにさえ思っていた。
なのに、同じ境遇にいるにも関わらず、それでも全てを諦めることなく友人を助けようとする姿に光を見たのだ。
自分とは真反対の人間。
だからこそ、自分自身を救うために現れた運命の相手に思えた。
知らぬ間に溢れた涙が、凍てついた心臓に春を芽吹かせた。
「この人こんなキャラだったんだ……」
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